どうも、りょうさかさんです。
先日報道された「早生まれが不利」論文の解説です。
3行にまとめると…
- 早生まれは、高校入試~所得面で不利
- 早生まれは、遅生まれより教育投資が多い
- しかし、 芸術、音楽、スポーツの時間が少なく、それが影響している
- 「早生まれが不利」論文の内容
- 12月生まれも厳しい
- そもそも1年間のくくりが良いのか
- 親の経験が通じない落とし穴
- わたしたちが出来るのは非認知スキルへ投資
- 「「早生まれが不利」論文 親の経験が通じない落とし穴」のまとめ
「早生まれが不利」論文の内容
「早生まれが不利」という論文が記事として掲載されたのは「NEWSポストセブン」のこちらです。
東大院教授「早生まれの不利は大人まで続く」研究結果発表(NEWS ポストセブン) - Yahoo!ニュース
実際の論文ページがこちら⇒
研究は山口真太郎先生(東京大学)、いとうひろたけ先生(慶応義塾大学)、中室牧子先生(慶応義塾大学)の3名によるものです。
NEWSポストセブンの記事から引用すると…
「早生まれの不利は、高校入試にもあらわれています。3月生まれと4月生まれで入学した高校の偏差値を比べると4.5も違います。大学の進学率も早生まれのほうが低く、これは日本に限らず、アメリカやカナダでも同じ傾向があります。さらに早生まれの不利は大人になっても消えず、早生まれの人は30~34歳の所得が4%低くなるという研究報告が出ています」(中略)
「早生まれの不利を跳ね返すために、親御さんは家で勉強や読書をさせたり、塾に通わせたりしますが、その分、子供同士で遊んだり、スポーツをしたりする時間が減り、非認知能力が育ちにくくなっている可能性があります」(山口教授)
(引用)東大院教授「早生まれの不利は大人まで続く」研究結果発表(NEWS ポストセブン) - Yahoo!ニュース
厳しい…。
早生まれで、偏差値4.5、所得は4%減る統計結果が出ています。
しかも、早生まれの不利を跳ね返そうと親がしてきたことが裏目に出ているという指摘は、やるせないですね。
12月生まれも厳しい
ちなみに「早生まれ」とは「1月、2月、3月生まれ」のことですが、下のグラフを見てください。
これは生まれ月による「高校の質」の差を示したものです。
「早生まれ」である1~3月生まれより、さらに低い12月生まれ。。。
また「4月~9月生まれ」と「10月~3月生まれ」でガクッと差が出ていることがわかります。
もちろん、この数値差をそもそも大きいと見るか? という議論もあると思いますが…
そもそも1年間のくくりが良いのか
この論文では締めくくりとして、以下のように書かれています。
Our findings also have implications for the current policy debate regarding whether to change the school starting date in Japan from April to September. Due to the COVID-19 pandemic, the Japanese government closed schools from March to May 2020. Some politicians argue for deferring the school starting date from April to September commencing in 2021 to make up for the lost school days. One of the possible consequences is an increase in cohort size, because children born between April 2014 and August 2015 would start school together. This would increase the maximum age gap from 11 to 17 months and exacerbate the disadvantages of younger students in the cohort. If they change the school starting date, the government should minimize the growth of cohort size and provide necessary assistance to younger students.
この内容は、コロナ禍における「9月入学論議」において2014年4月から2015年8月生まれの子ども達を一つの学年にすることは相応しくないという趣旨です。
わたしも以前の「9月入学論議」の記事にいただいたコメントへの返信としてこのように書きました。
「何月生まれまでを新入生扱いにするのか」の議論がどうなるのかによって大きく変わります。
わたしが記事に書かなかった課題はまさにご指摘の「足並みをそろえる」という点です。
そもそも現状の「最大11ヵ月差」もOKなのか正直わたしは疑問がありますし、足並みをそろえて進学、就職すべきとも思いません。
入試も複数回あって入学時期も2~3回あるような世の中の方が子ども達が様々なことにチャレンジしやすいと思うんです。
(引用)【9月入学】7つのメリットと7つのデメリット - りょうさかさんと
先ほど紹介したグラフと総合して考えても、6ヵ月刻みで入学時期を保護者の任意で変更できるくらいの方が子どもにとって良い制度だと思います。
ただそれが大人にとって都合の良い制度なのか、社会全体としてメリットの良い制度なのかは評価は分かれるでしょう。
なぜなら社会システムに与えるコスト面、大人たちの旧来の価値観の両面から受け入れがたいからです。
社会システムの変化に生じるコストは計り知れません。
価値観については「卒業大学の名前より大学で何を学び身に着けたか」を就職活動、社会生活で重視されることが当たり前にならない限り難しいでしょう。
親の経験が通じない落とし穴
ちょっと話が逸れてしまいましたが、早生まれが不利になる要因の一つとして「早生まれのテコ入れとして親がさせる塾や読書」があります。
この塾や読書といった行動は、子どもの認知スキル(ペーパーテストで測れる能力)を上げる行動です。
一方、人生を俯瞰して長い目で見た時になるスキルとして非認知スキル(やり抜く力、忍耐力、創造性)や対人関係が重要になります。
非認知スキルについてはこちらの記事⇒
つまり、早生まれの子どもの親ほど認知スキルを伸ばす投資をしてしまい、反面、非認知スキルを伸ばす投資(スポーツ、音楽などの経験)が減少してしまっているわけです。 (論文の内容的には以下の部分をどうぞ)
Although month-of-birth effects on cognitive skills may disappear because of maturation and compensatory skill investment, less sports and music experience,as well as poorer interpersonal relationships with teachers and peers, may harm the long-term development of noncognitive skills, which might account for the lower earnings seen in adulthood. Although we do not observe noncognitive skills after grade nine in our data, this hypothesis is consistent with findings by Chetty et al.(2011), Heckman et al. (2013), and Baker et al. (2019), who find that interventions during childhood affect noncognitive skills in adulthood.
わたしは、親の教育への投資行動について、2つの点で同情します。
まず1つ目に早生まれの子どもは、遅生まれの子どもと比べて6ヵ月以上入学までの時間が少ないという要因があります。
それも成人になってからの6ヵ月ではなく、子ども時代の6ヵ月なんですよ。
習いごとでも旅行でもスポーツでも単純に6ヵ月分の経験が同級生より少ないんです。
時間的に少ないのってどうしようもないじゃん。
2つ目に「非認知スキル」という考え方が近年のものだという点です。
常に情報収集をしていない限り子育ては、自分の経験や周りの意見を参考にして行われます。
わたしのように仕事柄、教育情報に接する人間ならともかく、一般のお父さんお母さんの多くは「非認知スキル」という言葉も知らないのではないでしょうか。
また、知っていたとしてもそこへ重点的な投資をするかというと疑問があります。
ご自分の経験から学力テスト重視の投資をすることは、至極当然だと思うんです。
わたしたちが出来るのは非認知スキルへ投資
さて、早生まれに限らずわたしたち親がこれから出来ることは、認知スキルへの投資だけではなく、非認知スキルへの投資も行うことです。
ここである疑問が出てくると思うんです。
塾に加えて、野球、サッカーやプールなどのスポーツ分野、ピアノ、絵画、バレエなどの芸術分野への投資をしようとすると、どれだけのお金がかかるんだ!
富裕層とそれ以外でますます格差が広がるじゃないか!!
ご指摘の通りだと思います。
そして、こういった論文が作られる意味は、まさにそこにあります。
「格差」と「格差の固定化」をなくすために、地方自治体や国がエビデンスに基づいた施策ができるようになるからです。
例えば、渋谷区の「スタディクーポン」、大阪市の「塾代バウチャー」、千葉市の「こども未来応援クーポン」のように塾や習い事費用に助成をする制度があります。
即効性のある手立てを打ちながら、長期的に学校教育の中で非認知スキルを高めるような教育活動に変化させていく、ということができるようになるんです。
とはいえ、待っていてはいつになるかわからないので、結局、家庭で出来る範囲で取り組んでいくしかないと思います。
「「早生まれが不利」論文 親の経験が通じない落とし穴」のまとめ
最後にこの記事の趣旨を3行でまとめておきますね。
- 「早生まれ」は認知スキルへの投資が行われている。
- 学力、社会人になってからの収入には非認知スキルが大きく影響する。
- 認知スキルだけではなく、非認知スキルへの投資も加えよう。
論文の解説というか、感想になってしまった部分も多々ありますがご容赦ください。
わたしもこの論文を読んで改めて、親の経験や親の価値観がどれだけ通じるかわからないと感じさせらました。
本当に子育てって難しいですね。
非認知スキルを伸ばす方法に興味がある方は、こちらの書籍が参考になります⇒
書評も書いているので参考にしてください。
それでは、また。