りょうさかさんと

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【探求活動】課題研究とポートフォリオはボーダーラインの生徒に適用される?


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新指導要領の前倒しで「総合的な探求の時間」が2019年の高校1年生からスタートしています。「課題研究」「探求活動」と名前の違いはあれど、やること自体は同じです。

この「課題研究」「探求活動」の意義自体は以前も書きました。これについて保護者、教員の方も大学受験にどれだけ有効なのか懐疑的だと思います。

今回は学習面の効果は一旦置いておいて入試にどの程度使われるのかという点に焦点を当ててみましょう。

結論を先に書くと、わたしは「課題研究」「探求活動」はボーダーライン上の生徒の判別に使われると予想しています。それでは、続きをどうぞ。

大学入学定員数の厳格化 

その前に前提となる情報をシェアしておきたいと思います。それは2019年入試で問題となった大学入学定員数の厳格化です。

(参考)平成31年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱について(通知)‐文部科学省(平成30年9月11日)

詳細はリンク先を見て頂きたいのですが、簡単にいうと「超過入学者数があると補助金減らすかどうか、この3年間の様子を見させてもらうぜ」という文科省からのメッセージです。

このような大学入学定員数の厳格化という背景があり、2019年の入試では模試判定なら合格圏内の生徒も不合格が相次ぐという厳しい状況になってしました。(この件については別の記事で書くつもりです)

この流れは来年度以降も変わらないと見る方が良いでしょう。

ポートフォリオの導入

さて、大学入試改革においてポートフォリオ(Japan e-Portfolio等)の導入が一部の大学で取り組まれています。

またポートフォリオを導入しない学校でも高校から調査書を提出したり、大学によって規定の用紙に色々記入しなければいけません。その中に「探求活動」について何をしたのかを書く欄がある場合があります。 

現在、「Japan e-Portfolio」の利用を決めている大学は10校程度です。それ以外の大学にはポートフォリオも探求活動も関係ないのでしょうか? 

調査書が見直される

大学側がポートフォリオを導入しなくても、高校の調査書に「課題研究」「探求活動」について記入する欄が新設される可能性が高い状況です。

というのも、実は高校から提出する調査書の見直しが行われるからです。

文部科学省の「平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告の改正について」という資料の中から関係する部分だけ引用していきましょう。

(1)調査書の見直し(中略)

○ 調査書等の活用に当たり、総合型選抜及び学校推薦型選抜を中心に、各高等学校が定める学校運営の方針及び学校設定教科・科目等の内容や目標等に関する情報を、各大学が必要に応じ提供を求めることができる旨、実施要項に明記する。(中略)

(3)志願者本人の記載する資料等
○ 実施要項に、以下の内容を盛り込む。
① 活動報告書を活用する際には、高等学校までの学習や活動の履歴が把握できるようにするため、例えば、以下のような内容の記載を求めるとともに、様式のイメージを例示する。※別表2参照
・「総合的な学習の時間」等において取り組んだ課題研究等
・ 学校の内外で意欲的に取り組んだ活動(生徒会活動、部活動、ボランティア活動、専門高校の校長会や民間事業者等が実施する資格・検定等、その他生徒が自ら関わってきた諸活動、各種大会・コンクール等、留学・海外経験等、特色ある教育課程を実施する学校における学習活動等)

(引用)平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告の改正について(通知)平成30年10月22日‐文部科学省

しっかりと活動報告書の中に「課題研究」について書くと明記されています。

同資料では、活動報告書の記入欄の<イメージ例>を見ることができます。

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こちらにも「課題研究」の文字があります。あとはこの調査書がどの程度使われるのかというのが問題ですよね。

ボーダーラインに使われるのでは?

ここで思い出してもらいたいのは、そもそも「課題研究」「探求活動」がどうして新指導要領で行われることになったのか。ポートフォリオが生まれたり、調査書などの改正の動きが始まったのでしょうか?

それは「学力の3要素」を測る入試にしようという大学入試改革が発端となります。

学力の3要素とは「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協調性」のことです。 

この3要素をどうやって大学入試で測るのか。

「知識・技能」はこれまでのペーパーテストで測ることができます。センター試験に変わる新入試に記述式をいれようとしているのは「思考力・判断力・表現力」を測るためです。

そして「主体性・多様性・協調性」を測るために「課題研究」「探求活動」の導入やポートフォリオや調査書の改正が取り組まれています。

(参考)高大接続改革の動向について(文部科学省 高大接続改革PT)平成29年1月31日

 一方で、問題もあります。

それは、大学側が「主体性・多様性・協調性」を客観的に判断できるのか? という点です。

出来るだけ公正公平になるように「課題研究」「探求活動」「ポートフォリオ」「調査書」など生徒の情報を大学側が入手し、判断できるような状況になります。しかし、 これをどうやって入試選抜に反映させることが適切なのでしょうか。

まず思いつく方法に「点数化」があります。

資料を元に受験生それぞれに点数を加点していく方法です。しかし、これにも問題があります。点数化の基準が人それぞれでバラバラになりやすいこと。また入学者全員のポートフォリオや調査書を点数化する時間と労力は相当なものになります。

そこで、わたしが予想するのが、ボーダーライン上の生徒のみを対象として「課題研究」「探求活動」「ポートフォリオ」「調査書」を合否判定に利用する方法です。

この方法であれば、時間と労力を抑えつつ点数では測ることが難しい「主体性・多様性・協調性」を合否に取り入れて入学者選抜を行うことができます。

まとめ

先ほどの引用資料のタイトルにあるように平成33年度(2021年度)入学者選抜から調査書などが変わる方向性が示されています

そうなると対象となるのは2019年時点の高校1年生から。おそらく各大学で順次導入される可能性が高いでしょう。

さて、冒頭に紹介した「大学入学定員数の厳格化」を思い出してもらいたいと思います。模試では合格圏内の受験生が苦しむ結果となりました。

文部科学省がもう一度、補助金の判断を入学定員数で行うとなれば、超トップ層以外、誰がボーダーライン上になってもおかしくありません。

それでも勉強さえをしっかりしていれば「課題研究」「探求活動」「ポートフォリオ」などは無縁と言い切れるでしょうか。

「ボーダーライン上の合否判定に使われる」というのはあくまでわたしの予想に過ぎません。あなたもぜひ考えてみてください。それでは、また。 

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