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JAPAN e-Portfolioの問題点 不利になる生徒とは?


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実証事業中の「JAPAN e-Portfolio」の問題について書いていきます。

以前、紹介したように「JAPAN e-Portfolio」は学びの足跡を残してくれるものです。 

www.ryosaka.com

ポートフォリオを使うことで、教員は子どもを見る際のツールとなり、学生自身は自分の学びを振り返るツールとなります。

一見良さそうな「JAPAN e-Portfolio」にも問題点があります。

結論からいうと、入力時間と病気、いじめ、不登校などの事情で学校に通えなかった子どもが不利になる点です。

(Photo by Olav Ahrens Røtne on Unsplash

作成の負担が大きい

「作成の負担」と一言でいっても様々な面の負担が考えらます。

まず生徒の負担です。

「JAPAN e-Portfolio」(以下JeP)は、8分野100項目、つまり合計800の入力欄があると言われています。

もちろん全てを入力するわけではないでしょう。しかし、「学びの過程」とするためには出来るだけ入力して、生徒、先生で振り返りをする必要があります。

その為には、どれだけの項目を入力するのでしょうか? その入力する時間はどの程度かかるのでしょうか?

仮に800の入力欄のうち、10分の1にあたる80項目を入力するとしましょう。

単純に入力に1項目につき平均3分かかるとします。それでも80項目全て入力し終わるのに、240分=4時間もかかってしまいます。高校の授業は通常50分ですから、5回分の授業時数は潰れてしまいますよね。

しかし、これはあくまで仮定の話。そもそも1項目につき3分程度で終わるでしょうか?

まず1つ1つの項目を入力するのに事実を調べなおしたり、確認する作業が発生します。

具体的にJePの画面を見てみましょう。公式に公開されている画像です。

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部活であれば、選んだ理由、目標、各種成績を記入する欄があります。

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大会になると開催場所、後援、規模、試合のコンディション、振り返り、入賞などの成績表があれば実績をPDFで添付する場面があります。
(引用・参考)JAPAN e-Portfolio|STEP2「学びのデータ」の登録・承認依頼

同様に、文化祭や音楽祭、演劇鑑賞など学校行事であれば、日時、会場、内容など「その時の資料」を探し、入力する必要があります。

課題研究・探求課題に関しては、テーマをはじめ、研究の内容や参考文献、インタビューの内容を入力し、論文自体を添付します。

「調べれば簡単に書けること」から「考えて書くこと」の2種類の存在に気付かれたと思います。

でも少し考えれば、まずどうやって入力するか、という部分にハードルを感じてしまう生徒が多いと思います。大人だってそうでしょ?

そして「調べれば簡単に書けること」でも、書き方の見本やフォーマットの有無によっては時間がかかりそうです。また生徒によってはプリントや大会要覧を無くすケースだってあるはず。

それに加えて「考えて書くこと」はテストなどの記述式の回答率を見ても明らかで、苦手な生徒は多いですよね。

とてもわたしが想定した平均3分では記入できなさそう。800項目の10分の1の80項目で、どの程度の時間がかかるのか想像がつきません。

この入力作業を授業ですれば、授業時数を圧迫することは明白。生徒に委ねると、自宅学習の時間を削りますし、ちゃんと入力してくれるかわからず親も先生もヤキモキすることでしょう。

じゃあ、放課後の時間を削るのか、というと部活や補講の時間とバッティングしてしまいます。

文科省って、やることだけ増やして減らすことはしない。「時間」に関しては、とってもブラック企業マインドですね!

JAPAN e-Portfolioによって不利になる生徒がいる

もう一つ、生徒にとって不利になる側面があります。

それは、この「JAPAN e-Portfolio」は学校に通っていることが前提になっていることです。

え? と思われたかもしれません。そりゃ高校生は学校に通うだろうと。でも、様々な事情で高校に通えない生徒がいますよね。

病気、いじめ、不登校…。ドロップアウトした生徒もいると思います。

彼らが大学入試を受けようと思った時に、書けないんです。ポートフォリオに書く経験を学校でしていないから。

これって不利ですよね。

100歩ゆずって「不良」と呼ばれる子ども達が再チャレンジをするのに「不利」になるのは、自業自得というか、まさにそれが歩んできた「学びの過程」なわけで、それを乗り越えてくださいね、というのも一つの考えかもしれません。

一方で、病気、いじめ、不登校などの事情で学校に通えなかった子どもが不利になってしまうのはわたしはどうなのかな、と心配になります。

彼らでもペーパーテストオンリーの大学入試であれば、学力さえあれば平等に、そして、公平にリベンジのチャンスがありました

もし今後、大学入試に大きくJePなどのポートフォリオが使われることになると、病気等で学校に通えなくなった子どもの再チャレンジが難しくなる可能性が出てきます。

大学入試改革によってどう変わるのか

わたしは再チャレンジがしやすい社会が良いと考えています。階層が固定されると治安などに影響が出てくると考えられるからです。

JePに代表されるポートフォリオが活用されることで子ども達の「学びの過程」が評価されることには賛成なんですが、再チャレンジがしにくい入試形態になってしまうことに危惧を覚えます。

理想としては、ポートフォリオ型入試とペーパーテスト型入試の両方を併存させることです。

またペーパーテストの内容をオックスフォード大学のように論文にするような方法でしょうか。オックスフォード大学の入試問題はこんな感じです。

質問:何をもって小説もしくは戯曲を政治的と判断するか?(現代言語学科)

質問:イギリスでの癌による死亡は4人に1人であるが、フィリピンでは10人に1人である。何がこの差を生じさせているのであろうか。(医学科)

質問:ハシゴが壁に立てかけてある。ハシゴの段はそれぞれ違う色に塗り分けられていて、横から見ることができる。このハシゴが地面に倒れた時、それぞれの段はどういった軌跡を描くか?(数学科)

(引用)オックスフォード大学の入試問題5例、あなたは解ける? 日本の大学の比にならない難度に驚愕!

これなら知識・技能だけでなく、様々な力を問うことができます。ただし、採点などの人員・時間は相当かかるでしょう。

もう一つのケースは大学入試は簡単になり、その代わり、卒業を難しくするという方法が考えられるでしょう。 

少子化の進み具合を考えると、大学側としては後者の方が選びやすそうな気がします。

ちょっと話は反れてしまいましたが、少し考えただけでもこのような問題点があります。

今後の動向を見守っていきたいと思います。では、また。 

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