りょうさかさんと

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【絵本】「てがみをください」心理の死角をつく面白さ


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どうも、りょうさかさんです。

今回は絵本「てがみをください」(山下明生/文研出版)の面白さについて書こうと思います。

この絵本、心理の死角をつく面白さがあるんです。

ネタバレ全開なのはご容赦ください。

「てがみをください」のストーリー

「てがみをください」のストーリーについてまずご紹介です。

男の子の日課は、ポストに手紙を取りにいくことです。

ある日、カエルがポストの中に引っ越してきました。

カエルはポストに届いた手紙を勝手に読んでいて、男の子は怒ります。

カエルが「自分も手紙がほしい」と言うので男の子はこう伝えます。

「そりゃ、じぶんからも てがみを かけばいいのさ。てがみをくださいって」

それからカエルはせっせと手紙を書きます。

その日以降、カエルはポストの外へ出て手紙が来るのを待ちますが、なかなか手紙は届きません。

ある日、カエルは引っ越していってしまいます。

男の子がポストの中を掃除しているとカエルから自分宛の手紙を見つけます。

男の子はカエルに手紙を出しますが、返事はありません。

男の子は、「読者」に「だれか、あの かえるの じゅうしょをしっていたら、ぼくにてがみをください。おねがい!」と投げ掛けて絵本は終わります。

とても切ないストーリーです。

カエルが手紙を書いた後に部屋(ポスト)にいないのは、男の子に自分の手紙を気付いてほしいからなんです。

カエルが意地をはらずに手紙のことを口にしていれば、男の子がポストの中をよく見ていれば、こんなすれ違いは起きなかったんですよね。

そして、「カエル」「男の子」と手紙を出しましたが、最後に手紙を出すのは読者に委ねられるんですよね。

つまりカメラのフォーカスがぐいっと読者の方に向けられて終わるんです。

心理の死角をつく視点変更

わたしはこういう視点の変更にドキッとさせられるのが好きなんですよね。

例えば、パッと思いつくのだと以下の3つです。

  • 「ゲスの極み乙女」の「私以外私じゃないの」
  • アニメ「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」
  • アニメ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」

「ゲスの極み乙女」の「私以外私じゃないの」の歌詞にも視点変更があります。

ずっと「私」という内側に目線を向けてきた歌詞が後半「私以外私じゃないの どうやらあなたもそう」と外側(他人)に目線を向けることで、大きな転換を迎えるんですよね。

「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」というアニメ映画では、物語終盤、映画館の客席(実写)の映像が流れる場面があります。

セルアニメの映像が流れていたのに、劇場の様子が実写で映ることで、映画への没入感に水をかけられたような衝撃がありました。

「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」というアニメでは、終盤、あるキャラクターの顔が主人公に変化するシーンがあります。

これは主人公を通して物語に没入していた視聴者に対して、急に「鏡」を向けられるような驚きがあるんですよね。

どれも共通するのは、心理の死角をつかれているからなんです。

今回紹介した絵本「てがみをください」では、読者に最後のパスが投げられるんですよ。

この絵本のおかげで、子どもとお出かけをしていてカエルを見付けた時の意味合いが変わります。

それまではただ「カエルだね」で終わっていたのが「あっ! 引っ越ししちゃったカエルかな?」みたいな会話に変わるんですよ。

気になった方はぜひ、読んでみて下さい。

それでは、また。