どうも、りょうさかさんです。
今回は文科省が発表した「令和2年度 青少年の体験活動の推進に関する調査研究」についてです。
これを読んで考えたこと、感じたことを書いてみたいと思います。
「令和2年度 青少年の体験活動の推進に関する調査研究」とは
「令和2年度 青少年の体験活動の推進に関する調査研究」とは、平成13年に出生した子供とその保護者(サンプル数2万以上)を18年間追跡した調査をもととした「文部科学省として初めて」の調査です。
調査方法は以下の通り。
(1)「21世紀出生児縦断調査(平成13年度出生児)」における、以下に関する調査データを活用して「体験」と「意識等」との関係性(影響・効果)を分析(クロス集計、回帰分析等)しました。
・子供が0歳から5歳の時期に保護者が回答した「家庭による背景・環境、属性等」(世帯類型、父母の収入、親子のかかわり・しつけ等)に関する回答データ
・子供が6歳から12歳の時期に保護者が回答した子供の「体験」(体験活動、遊び、読書、お手伝い)に関する回答データ
・子供が12歳から18歳の時期に子供本人が回答した現在の「意識等」(自尊感情、向学校的な意識、外向性、精神的回復力、心の健康)に関する回答データ
子どもの頃に以下の体験をしていると成長に良い影響が見られたという内容になっています。
- 自然体験(キャンプ、登山など)は「自尊過剰、外向性」に良い影響。
- 社会体験(農業体験、ボランティアなど)は「勉強・授業が楽しい」に良い影響。
- 文化的体験(動物植物園、博物館、音楽、スポーツ観戦)は「全ての意識」に良い影響。
- 読書は「新しいことに興味をもつ」「将来に前向き」に良い影響。
- 遊び相手は「異年齢・家族外の大人」が多いと「自尊感情、外向性」に良い影響。
- お手伝いは「自尊感情、外向性、精神的な回復力」などに良い影響。
詳しくはこちらをどうぞ⇒
令和2年度青少年の体験活動に関する調査研究結果報告 ~21世紀出生児縦断調査を活用した体験活動の効果等分析結果について~:文部科学省
批判的な意見
この「令和2年度 青少年の体験活動の推進に関する調査研究」については批判的な意見もあります。
わたしがこの報告書に気づいたのは中室牧子先生のツイートによるものです。
最近、教育業界で話題の文科省の報告書。特にマズいのは、因果関係を明らかにするようなデザインの分析ではないにもかかわらず、「体験が子どもたちの成長を確かなものにする」などという誇大広告ともいえるようなまとめ方をしてしまっているところだ。https://t.co/v5jYWShq8v
— 中室牧子 (@makiko_nakamuro) October 8, 2021
簡単にいえば今回の研究結果は、あくまで相関関係を示したに過ぎず、因果関係は明らかではないという点です。
わたしも過去に学力テストの報道を扱った際の記事で同様の指摘をしています。
相関関係とは「片方が変われば、もう片方も変わる関係」のことを言い、因果関係とは「原因と結果の関係」のことを言います。
よくある例だと『アイスが売れた日は、水死が増える』が有名です。
気温に関係した相関関係(暑い日はアイスがよく売れるし、海水浴客も増える⇒水難事故も増える)ですが、これを因果関係だと間違うと「海水浴場でアイスの販売を禁止する」という間違った案が採用されてしまいます。
このケースなら誤ることはありませんが、世の中には因果関係に見える相関関係が多く存在します。
つまり今回の調査も単純に「体験活動が背景なのかわからない」という指摘です。
一方で、「サンプル数2万以上を18年間も追跡調査」は文部科学省として「初めて」ですから、その部分を評価すべきだという意見もあります。
今後の研究によってさらに踏み込んだ内容が判明することを願っています。
家庭環境による差
ちなみにこの研究では、家庭の経済状況について考慮した研究をしています。
その結果、経済状況に関わらず体験活動が良い影響を与えていることがわかったと述べています。
そこで、世帯収入の水準別に分けて体験と意識との関係を分析したところ(右図参照)、収入の水準が相対的に低い家庭にある子どもであっても、例えば、自然体験の機会に恵まれていると、家庭の経済状況などに左右されることなく、その後の成長に良い影響が見られることが分かりました。
(引用)令和2年度青少年の体験活動に関する調査研究結果報告 ~21世紀出生児縦断調査を活用した体験活動の効果等分析結果について~:文部科学省
確かに経済状況に関わらず、体験活動の効果があるようです。
もちろんこういった調査があったとしても、今回の研究は前述のように相関関係に過ぎません。
ただ、仮に今回の研究に因果関係があったとしても家庭によって取り組みやすいこととそうでないことがあると思います。
例えば、自然体験のキャンプ、などは機材や車が必須です。(もちろん車も機材もレンタルという選択肢はありますが気楽に年に何回もできるものではありません)
また居住地域によっては気軽に行ける場合もあれば、遠方まで行かなければならない場合もあるでしょう。
音楽・演劇鑑賞なども同様です。
一方で読書体験などは図書館など公共施設の力を借りることで比較的取り組みやすい部類に入ると思います。
おそらくご家庭によってこれは取り組みにくい、これは簡単に取り組めそうという現状が違うと思います。
この研究をご家庭で参考にされるとしたら「既にしていることを続ける」「出来ていないことを意識的にしてみる」という感じで良いと思います。
自然体験が不足していれば「1年に一回は登山するように心がける」、読書体験が不足していれば「図書館に行ってみる」、家族で博物館や美術館などに行ってみるのもいいかもしれません。
そんな感じで参考にしてみてください。
りょうさかさん家は、文化体験・読書体験に偏っているので自然体験を意識的に取り入れたいなーと考えましたよ。
それでは、また。