りょうさかさんと

教育業界にいる陵坂さんが教育・子育て・DWEなどについて書くブログ

りょうさかさんと

少人数学習に効果はあるのか?


f:id:ryosaka:20210111074613j:plain

どうも、りょうさかさんです。

以前の記事で取り上げましたが、35人学級への変更が報道されました。

35人学級の効果の一つとして期待されているのが「少人数学習による学力向上」です。 

これって本当に効果があるのでしょうか?

確かに先生の目が一人一人に届けば、生徒の学力が向上しそうです。

過去の研究と現在の1クラス当たりの人数を見てみましょう。

少人数学習の効果

「少人数学習による学力向上」の効果について「学力の経済学」(中室牧子/ディスカヴァー・トゥエンティワン)ではこのように書かれています。

1980年代にコロラド大学のグラス教授とスミス教授が、1学級あたりの生徒数と学力の間には負の相関関係があり、とくに1学級あたりの生徒数は20人以下となるのが望ましいという研究を発表しました(図21)。そして、1980年代以降、米国では、1学級あたりの生徒数は20人以下というのが「少人数学級」の目安になりました。

f:id:ryosaka:20210110072720j:image

(引用)学力の経済学(中室牧子/ディスカヴァー・トゥエンティワン)NO.1017-1027より

また「スタープロジェクト」では、公立幼稚園・小学校に在籍する生徒6500人を1学級あたりの生徒数が13~17人の学級と22~25人の学級で比較しました。

結果、生徒数が13~17人の学級の方が、偏差値は、0.1~0.25ほど上昇しました。

また慶応義塾大学の赤林教授らの研究では、少人数学級の因果効果は、小学校国語では学級規模が1人小さくなると偏差値が0.1上昇する効果が確認されたが、国語以外、中学生には効果がみられなかった、と書かれています。

(引用・参考) 学力の経済学(中室牧子/ディスカヴァー・トゥエンティワン)NO.1027-1109より

詳しくは本書をご覧ください。 

ここまでをまとめておくと海外の研究でも、日本国内の研究でも生徒数は少ない方が、偏差値が上がるということがわかりました。

35人学級導入の場合

では、現状の40人学級時点の一学級あたりの児童数はどうなんでしょうか?

令和元年度学校基本調査(文部科学省)によると…

  • 小学校(公立)は、19,432校。
  • 単式学級は、222,509学級。

単純に割り算をすると1校あたり11.4学級だということです。

つまり全学年に2クラス編成されている計算になります。

一方で一学級当たりの児童数を見てみると、23.3人となっています。

どういうことかというと、35人学級導入前の現時点において、都会から地方まで平均するとほとんどの小学校で35人学級以下になっているということです。

35人学級に制度が変わってもクラスの人数が変わる学校がかなり少数派であることがわかります。

つまり40人学級から35人学級に変わることによる「少人数学習の効果」の恩恵は、すでに得ているとということなんですね。

ちなみに中学校の一学級当たりの生徒数は、27.2人となっています。

中学校もほとんど同じような状況だと考えていいでしょう。

ただ更に少子化が進むことを考慮すると少し状況は変わるかもしれません。

以前の記事でも紹介したように、35人学級になると1学年の児童・生徒数が36人の場合、18人と18人のクラスに再編することが可能になります。

つまり現状40人学級の一学級当たりの児童数23.3人より35人学級になることでさらに一学級当たりの人数が少なることが考えられます

そうなると20人以下を下回る学級数が更に増え、学習効果が上がるかもしれません。

少人数学習の効果はあるのか?のまとめ

最後にまとめておきましょう。

  • 少人数学習は、20人以下が望ましいとされる。
  • 22~25人と13~17人の場合、13~17人の方が偏差値が0.1~0.25上がる。
  • 21人と20人の場合、20人の方が小学校国語の偏差値が0.1上がる。
  • 現時点で小学校の一学級当たりの平均人数は、23.3人。
  • 35人学級になってもすぐにクラスの人数は変わる学校はそれほど多くない。
  • 少子化と35人学級により一学級当たりの平均人数はさらに下がると考えれる。

少人数学習以外に「習熟度別学習」といった方法を取っている地域、学校もあります。

今回は少人数学習に焦点をおいてまとめてみました。

それでは、また。

以前の記事はこちら⇒