どうも、りょうさかさんです。
今回は「コロナ後の教育へ オックスフォードからの提唱」(苅谷剛彦/中央公論新社)です。
国家戦略とゲームのルールについて考えました。
もしかすると次のゲームのルールは「AI倫理」かもしれません。
「コロナ後の教育へ」とは
「コロナ後の教育へ」は、オックスフォード大学教授である苅谷剛彦先生が日本の教育に長年続く問題点を指摘する内容となっています。
基本的には過去の執筆物や連載をまとめたものなので、タイトルの「コロナ後の教育へ」に繋がる内容は終章(約40ページ)くらいしかありません。
執筆物の寄せ集めであるため、章ごとの繋がりやあるテーマに対しての著者のスタンスが違うのが気になりました。
わたしは心の中でツッコんだり、これってアレと繋がるのかな、と思考が発展する書籍も良書の一つだと考えています。
そういう意味で、本書は色々な発見と思考の出発となったので読んで良かったと思いました。
というわけで、わたしが本書を読んで考えたことなどをまとめていきたいと思います。
大学を通じた国家戦略
日本の大学を批判する際によく使われるのが、「大学の世界ランキング」についてです。
本書ではこの「大学の世界ランキング」の背景として、イギリスの外貨獲得のための産業政策があると1999年のブレア首相(当時)の政策提言を引用しています。
具体的な政策目標としては、05年までに「世界の高等教育留学生市場の25%のシェア」を獲得することを掲げた。学生数としては留学生を当時より7万5000人増やす目標設定である。それを実現するために、ブリティッシュ・カウンシルなどを通じてイギリスの高等教育の海外でのブランド力を高めること、留学生の入国審査を緩和・簡略化すること、留学生のための奨学金の機会をさらに1000件分追加することなどの政策をとると宣言した。
(引用)「コロナ後の教育へ オックスフォードからの提唱」(苅谷剛彦/中央公論新社)p.121
こういったイギリスの外貨獲得政策が前提にあり、政策提言の5年後である04年からイギリスのTHE紙が大学ランキングを発表し始めたと続きます。
言ってみればイギリスによるイギリスの大学のための「大学の世界ランキング」なわけです。
そういった経緯で生まれた「大学の世界ランキング」の順位に影響を受けて、日本でもスーパーグローバル大学創成支援事業が始まります。
わたしはこれを読んだときに落合陽一氏の「2030年の世界地図帳」という書籍を思い出しました。
「2030年の世界地図帳」では、ヨーロッパの戦略として「ルールの支配」という言葉が出てきます。
例えば「SDGs」も「ゲームのルール」自体がヨーロッパに有利なものです。
なぜなら、元々ヨーロッパの各国が社会保障、環境保護が先んじて取り組んできたというアドバンテージがあるからです。
「大学の世界ランキング」も「SDGs」も他国が自分たちに有利なゲームを作って、その戦いに巻き込まれて比較されているという点では共通しています。
新たなゲームのルール「AI倫理」
そして、2019年6月にオックスフォード大学が発表した声明にわたしは注目しました。
その内容は「アメリカのステファン・シュワルツマン氏から同大学の人文学へ200億円の寄付があり、氏の名前を冠した研究センターの設立に合意した」(p.166より)というものです。
このシュワルツマン人文学研究センターの目玉の一つが「AI倫理」です。
本書ではこのように書かれています。
「テクノロジーの発達が際立つ時代に、人文学がその中核を担うべき位置にある」ことを認めた決定である。日本ではほとんど紹介されることはなかったが、イギリスのメディアはこのニュースを大きく伝えた。
(引用)「コロナ後の教育へ オックスフォードからの提唱」(苅谷剛彦/中央公論新社)p.167-68
もしかするとSDGsなどと同様に「AI倫理」という形で、今後のAIに関する「ゲームのルール」をイギリスが主導することになるのではないか。
そんな思考の連鎖がわたしの中で、生まれました。
誤解してほしくないのですが、わたしはヨーロッパやイギリスを非難するつもりはなく、ただただ「うまいなあ」と感心しているんです。
興味のある方は落合陽一さんの「2030年の世界地図帳」も読んでみてくださいね。
それでは、また。
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