りょうさかさんと

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小学校英語の単語をどの程度書けるようにすべきなのか?


 

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どうも、りょうさかさんです。

以前の記事について研究職ママ(id:selfmanagementforkids)さんより

「小学校では「書き写す」だけで良いのなら、小学校で習う600〜700語の綴りを覚えるのは本来はどのタイミングなのでしょうか?」

という質問を頂きました。

鋭い質問です…

今回は、綴りを覚えるのはどの程度の単語でどのタイミングなのか? について書いてみたいと思います。

小学校で習う600~700語について

新指導要領の小学校英語で習う単語は600~700語となっています。

この600~700語は、小3から始まる外国語活動を含めた小3~小6で取り扱う語として設定されています。

2学年間に指導する語は,今回の改訂で第3学年及び第4学年において第4章外国語活動を履修する際に取り扱った語を含む 600 ~ 700 語程度の語とした。

(引用)【外国語活動・外国語編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説-文部科学省

そして、この600~700語は教科書によって微妙に違います

川又正之先生(敬和学園大学教授)の論文で以下のように書かれています。

中学、高校では、いったいどのくらいの数の語彙を指導したらよいのか、また、どのような語彙を実際に指導すべきかが、常に大きな問題として存在しているように思われる。基本的には、指導要領を踏まえて編集されている、検定済教科書に掲載されている語彙を中心に指導することになるわけであるが、指導要領ではおおまかな数のみが示されているのみであるので、実質的にはどの出版社のどの教科書を使用するかによって、生徒たちが遭遇する語彙が大きく異なっている、ということは前節においても指摘した。(太字引用者による)

(引用)学習指導要領における語彙の取扱いについての考察―新学習指導要領を中心として(川又正之2012)

この論文自体は2012年と10年程前ですし、小学生レベルの易しい語彙が中心なので中学、高校の教科書ほど大きな違いはないと思いますが、実態は変わっていません。

そして、この600~700語全てを覚えなければならないという趣旨ではないということが指導要領解説に書かれています。

なお,この 600 ~ 700 語というのは後述する発信語彙と受容語彙の両方を含めた語彙サイズであり,これらの全てを覚えて使いこなさなければならない,ということではない。

(引用)【外国語活動・外国語編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説-文部科学省

とはいえ「全て覚える必要はない」という言葉は言い換えれば、「ある程度は覚えてね」という意味にも受け取ることができますよね。

一旦整理すると…

  • 小学校で習う単語が教科書によって微妙に違う
  • 600~700語を全てを覚えなければならないという趣旨ではない

こういう状況なので、わたしとしては無責任に「小学校英語の教科書内の単語をいつまで書けるようにしておこう!」ということは言えません。

冒頭で「鋭い質問です」とお伝えしたのも同じ理由なんですよね。

ただ、そうは言っても小学校高学年をお持ちの保護者の方は、心配だと思います。

そこでわたしなりに「この辺りは抑えてみては?」という案を出してみたいと思います。

ヒントになるのは、指導要領解説に登場した「発信語彙」と「受容語彙」というフレーズです。

「発信語彙」と「受容語彙」

「発信語彙」「受容語彙」について文部科学省の定義は以下のようになっています。

  • 発信語彙…話したり書いたりして表現できるように指導すべき語彙
  • 受容語彙…聞いたり読んだりすることを通して意味が理解できるように指導すべき語彙

(参考)【外国語活動・外国語編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説-文部科学省

「発信語彙」はわかりやすいと思うのですが、「受容語彙」は少しわかりにくいですよね。

簡単な例を出して紹介しますね。

英語の教科書が出来る前に文科省が作った「We Can!2」のUnit8「What do you want to be」では「将来の夢」についてスピーチをする場面があります。

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(引用)新学習指導要領に対応した小学校外国語教育新教材について:文部科学省

例文1行目の"I want to be an astronaut."(宇宙飛行士になりたい)の"astronaut"が受容語彙に当たります。

"astronaut"を発表する児童は、先生から読み方と綴りを教われば良いわけです。(発表を聞く児童は、先生がフォローを入れたりします)

では、この場面の「発信語彙」はなんでしょうか?

わたしはUnitタイトルでもある"What do you want to be"だと思います。

その理由は、この授業の「めあて」(キーフレーズ)だからです。

「めあて」とはその授業を通して、身につけて欲しい「目標」のことです。

「めあて」は、ほとんどの教科書でUnitやLessonのタイトルになっていたり、明らかに紙面内の登場頻度が多くなっているので英語が苦手な保護者の方も簡単に見付けることができます。

ご家庭でフォローをするのなら「めあて」のフレーズと保護者の方から見て簡単そうな単語を書けるようにするくらいから取り組んでみて下さい。

タイミングとしては授業が終わったタイミングで復習として取り組むとお子さんのストレスも少なそうですね。

(*ちなみに"I want to"は、小5のUnit5「I want to go to Italy」で既習フレーズです)

小学校英語の単語をどの程度書けるようにすべきなのか?

では、最後にまとめておきましょう。

  • 小学校で習う単語が教科書によって微妙に違う
  • 600~700語を全てを覚えなければならないという趣旨ではない
  • 可能なら授業の「めあて」(キーフレーズ)と簡単な語句を書けるようにしておこう

これくらいならご家庭でも出来そうですよね。

ただ保護者にとってはそれでも不安だと思います。

以前の記事でも書きましたが、中学校現場に小学校英語の指導要領が浸透しているかわからないからです。

余談ですが、私立中学入試を考えている方は、もっと早くから英語をしていた方が無難です。

というのも私立中学入試で英語入試が増加傾向にあるからです。

現状、筆記試験ではなくインタビューやグループワークが中心のようなので1~2年で筆記が入るとは思いませんがアンテナを張っておきましょう。

(参考)【中学受験】英語入試が増加、2021年度は首都圏143校導入 | リセマム

それでは、また。

小学校英語の教材は色々発売されているので、お子さんの好みにあったものを選んでみてくださいね。

名探偵コナン、すみっこぐらし、うんこ…。