どうも、りょうさかさんです。
今回は久しぶりに「小学校英語」についてです。
わたしは仕事上、小学校・中学校・高校の先生から大学教授までお話しを聞く機会があります。
そこで見えてくるものは、指導要領の目標に沿った授業をしている先生もいれば、反対に過去の指導法を変えない先生や受験を意識した指導を優先する先生がいることです。
また指導要領の目標が、浸透しきっていないことも感じます。
研究職ママさんの下記ブログを読んで共感したんですが、今回の記事では改めて「指導要領だとこうなっているよ」という部分とわたしが考えたことを書きたいと思います。
selfmanagementforkids.hatenablog.com
小学校英語の「書く」について
研究職ママさんの記事では、
『中学校になると小学校で習った単語は「読めて・書けて・使える」ものとして出てくる』
『中学校になればアルファベットから学び直せるのは勘違い』
という趣旨の言葉があります。
この2点については学校間、教員間でも差がある部分だと思うので鋭い指摘です。
では、「書く」について指導要領でどうなっているのかというと…
ア 大文字,小文字を活字体で書くことができるようにする。また,語順を意識しながら音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を書き写すことができるようにする。
イ 自分のことや身近で簡単な事柄について,例文を参考に,音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を用いて書くことができるようにする。
(引用)小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 外国語活動・外国語編 平成29年7月
2年前に記事にしていますので詳しく知りたい方はこちらをどうぞ⇒
以前の記事では「書く」のポイントを以下の4点にまとめました。
その内容とは…
- アルファベットの大文字、小文字を書けるようにする
- 語順によって意味が変わることを知る
- 音声で十分に慣れ親しんでから簡単な語句を書き写すことができるようにする。
- 音声で十分に慣れ親しんでから例文を参考に書くことができるようにする。
つまり「書く」のは「書き写し」「例文を参考」がキーワードなわけです。
実際、国立教育政策研究所が先生向けに作成した小学校英語の評価例の中でも「書く」も以下のような形になっています。
どの教科が好きかな。教科とその理由を一つずつ選び、例文を参考に書いてみましょう。
(図・文の引用)「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料-小学校外国語・外国語活動-国立教育政策研究所
ちゃんと「書き写し」レベルの「書く」になっていますよね。
研究職ママさんのブログで紹介されている中学校の教科書紙面が「なぞり書き」からスタートしているのも小学校英語指導要領の「書き写し」の系譜を継承しているからだと想像できます。
じゃあ、研究職ママさんの指摘がオカシイかというとそうではありません。
その理由は中学校の先生が、小学校段階の「書く」が「なぞり書き」「書き写し」で良いと理解していない可能性があるからです。
「小学校で勉強をしている」と誤解してしまえば、その部分の指導は『既出』扱いですから「書く」部分への指導の比重に影響を与えてしまいます。
ただ、あくまでわたしが仕事上で得た"感覚"なので、これ以上深くは掘り下げません。
小学校英語の「アルファベット」について
アルファベットについて残念な情報を追加するとすれば、アルファベットを中学校でキッチリ学び直すことはないでしょう。
というのも、指導要領上では小学校3年生・5年生・6年生で学んだ内容だからです。
アルファベットを最初に習うのは小学校3年生の国語の「ローマ字」です。
ウ 漢字と仮名を用いた表記,送り仮名の付け方,改行の仕方を理解して文や文章の中で使うとともに,句読点を適切に打つこと。また,第3学年においては,日常使われている簡単な単語について,ローマ字で表記されたものを読み,ローマ字で書くこと。(太字引用者による)
(引用)【国語編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説-文部科学省
そして、前述の通り小学校5・6年の「英語」でも「大文字,小文字を活字体で書くことができるようにする」という目標のもとアルファベットを学習しています。
こういう状況で、小3「国語」、小5・6「英語」で習っているはずのアルファベットを全くできないという前提で中学校で指導すること期待するのは、ちょっとどうかな? という感じがします。
例えば、中学校の社会で、都道府県の名称から教えて欲しいと期待するのと同じような感じじゃないでしょうか?
中学入学時の実力テストの意味
もちろん「分数の計算ができない大学生」がいるように全ての児童が既出の内容を身につけて中学校に上がっているわけではありません。
そこで中学校の先生は「小学校で習っている」ことを知りつつ、中学校1年生の最初の方の授業でレディネスチェック(実力テスト)の中でクラスの生徒がどの程度、小学校で学び、身に着けてきているのか確認しています。
これは子どもだけではなく、小学校毎の取り組みの差があるからです。
英語は、公立であっても小学1年生からスタートする場合もあれば、指導要領通り小学3年生の外国語活動からスタートする学校もあるからです。
結局、どうすれば良いのさ?
指導要領的には、小学校の外国語の授業をマジメに受けていれば良いのですが、不安な方もいると思います。
「じゃあ、結局どうすれば良いのか」というと「家庭で補う」というのが現実的な方法になってしまいます。
最低限「アルファベット」は書けるようにし、簡単な単語を見ないで書ければベストという感じですね。
小学校1年で「ひらがな」を習うとはいえ、入学前に勉強する家庭が多いのと同じような感じでしょうか。
ちなみに小学校入学前の「読み書き力」がその後の学力に影響しているという研究結果があります。
小学校入学時点の「読み書き」力は小学校4年生時点の算数と理科の学力と強く関連している。早期に観察された能力差ですべてが決まるわけではないが、「あまりできなかった」層から偏差値60以上となる割合は4%だ。一方、入学時点で「とてもよくできた」層は100人のうち26人が4年後に偏差値60(全体で上位の16人)になっている。
(引用)教育格差(松岡亮二/筑摩書房)p.120より
詳しくはこちらの記事をどうぞ⇒
今後は、「小学校入学時点の読み書き」と同じように「英語の家庭教育」の有無で、中学生以降の「英語力」「学力」に大きな差が出てくるかもしれません。
ただ無理矢理押し付けて「英語嫌い」を前倒ししてしまっては逆効果ですから、お子さんの様子などをよく観察しながら学習してくださいね。
それでは、また。
小学校英語や英語教育についてはこちらもどうぞ⇒
学習法についてはこちらをどうぞ⇒
「教育格差」についてもっと詳しく知りたい方は、ぜひ「教育格差」(松岡亮二/筑摩書房)を読んでみてください。オススメですよ!⇒