どうも、りょうさかさんです。
独立行政法人大学入試センターから2021年3月24日に令和7年度(2025年)の共通テストについて発表がありました。
その内容は盛り沢山です。
- 出題教科・科目が発表
- 数学は、従来に加えて「数学C」
- 新設の「地理総合」「歴史総合」「公共」「情報」のサンプル問題が公開
- CBTについては導入見送り
詳しい内容は、以下をご参照ください。
平成 30 年告示高等学校学習指導要領に対応した令和7年度大学入学共通テストからの出題教科・科目について
大規模入学者選抜におけるCBT 活用の可能性について(報告)
さて、今回は、その中から導入が見送りとなったCBTについての資料を見てみましょう。
この資料、PDFで125枚もあって大学入試センターの気合たっぷりなんですが、読む時間がない人のためにわたしが気になったところをまとめておきますね。
大規模入学者選抜におけるCBT 活用の可能性について
「CBT」とは「Computer-based Testing」の略で、言葉の通り「パソコンでテストするよ」ということです。
近年、共通テストのCBT化が検討されていたわけですが、今回導入見送りとなったわけです。
なお、文部科学省では小・中学生に行われる全国学力・学習状況調査のCBT化も検討されています。
詳しくはこちらの記事をどうぞ⇒
さて、大規模入学者選抜におけるCBT 活用の可能性について(報告)という資料の目次を見てみるとザックリこんなことが書かれていることがわかります。
- 紙で行われる現行共通テストの課題
- CBTで共通テストを行う意義や経費
- PC・ネットワークを活用した共通テスト
- IRTで共通テストを行う可能性
- まとめ
では、この資料ではどのような理由でCBTの導入見送りが決まったのでしょうか?
まず本資料で述べられるCBTのメリットを見てみましょう。
CBTのメリット
共通テストをCBTで行うメリットは以下のようになります。
- 電子データにより試験問題・解答を配信・回収できる
- パソコン上で出題・解答することで,多様なニーズに対応できる
- 受験者数の増減への柔軟な対応
- 問題訂正等への迅速な対応
- より効率的な採点の実現
- 試験問題を複数バージョン用意して複数回実施ができる
- 試験日時の複数設定が可能
- 一人の受験者による複数回受験
- 受験者の能力の経時的な変化の把握
運営側から受験者まで様々なメリットがあることがわかります。
特に試験日時・回数は、今回のコロナ禍のような状況や体調を崩した受験者にとっても機会が与えられるというメリットがありますね。
「パソコン上で出題・解答することで,多様なニーズに対応できる」がわかりにくいと思うのですが、資料ではこのように書かれています。
例えば,総合型選抜でタブレット型パソコンによる学力検査を実施している佐賀大学では,理科の試験において,実験の動画を視聴した上で実験過程について考えたことを解答させる問題や,英語のスピーキング試験において,自らの悩みについて語るネイティブ・スピーカーの動画を視聴した上で,そのネイティブ・スピーカーへのアドバイスを英語で話して解答させる問題が出題されている
(引用)大規模入学者選抜におけるCBT 活用の可能性について(報告)
佐賀大学の例を元に「動画を視聴を前提とした問題」も視野に入れているというわけです。
では、逆にCBTの課題とはどんなものがあるのでしょうか?
CBTの課題
共通テストをCBTで行う際の課題は以下のようになります。
- 試験場をどうするか?
- 民間のテストセンターはあるが、都市部に集中している(離島・へき地など地方が不利)
- 民間のテストセンターごとのPCの仕様、サイズ、会場環境が統一されていない。
- 現行のテストセンターでは会場が足りない。
- 現行のように大学施設などを試験会場にする場合、大学側の整備、保守、トラブル対応などの負担が大きい。(財源、パソコン保管場所など)
- 本人確認・不正防止、障害などがある受験者への配慮
- 以上を踏まえた、整備・開発などの経費
- 新しい試験への受験者・社会の理解が必要
すごいザックリ言えば「①場所がない ②金がない ③理解がない」ということです。
試験会場の問題は、英語民間試験導入の際にも大きく横たわった課題でした。
CBTの場合、ただ場所があってもダメで、試験を行うだけのパソコンなどの機材が50万台も必要になります。(センター試験受験者数は約50万人)
しかも、試験の時しか使わないパソコンです。
さらにいえば、パソコンは数年で入れ替えになりますし、少子化の流れもあって受験者数も減るでしょうから毎年使われないパソコンが何万台単位で出てくることが容易に予想できます。
受験者のパソコンを利用するという方法の場合は、不正防止の仕組みを考えたり、システムを構築する予算が必要になります。
そして、こんな道筋不透明な状況で受験生と社会の理解を得られるのか? という大きな問題が壁のようにそびえたつわけです。
これが共通テストのCBT化見送りの理由のほとんどだと思います。
大学共通テストCBT化は見送りの3つの理由
最後にもう一度、共通テストCBT化見送りの理由をまとめておきましょう。
- 場所がない
- 金がない
- 理解がない
当分は現行のスタイルで行くのではないかと思います。
ちなみに大規模入学者選抜におけるCBT 活用の可能性について(報告)では、「IRT(Item Response Theory,項目反応理論)」の可能性についても触れられています。
IRT とは,各受験者の試験問題に対する正答・誤答に基づいて,試験問題の特性と受験者の能力を分けて推定する統計理論の一つである。
(引用)大規模入学者選抜におけるCBT 活用の可能性について(報告)
IRTのメリットとは、以下のようなものです。
- 異なる試験問題に解答した受験者同士の能力が比較できる
- 試験の複数回実施が可能
- 一人の受験者の複数回受験が可能
- 統計的品質が管理された試験問題を出題できる
ただし、こちらにも課題があって「IRTをするためには大量の問題作成が必要」「問題の漏えいなどを踏まえて、頻繁な入れ替えが必要」というものです。
10年後くらいにはCBTとIRTを組み合わせた新たな案が出てくるかもしれませんね。
それでは、また。