どうも、りょうさかさんです。
令和2年度(2020年)から「キャリア・パスポート」というものが小・中・高で始まりました。
今回はこの「キャリア・パスポート」についてまとめておこうと思います。
キャリア・パスポートとは
キャリア・パスポートをザックリ表現すると「キャリア教育を目的とした活動を記録し蓄積する教材(ポートフォリオ)」のことです。
キャリア・パスポートの文科省の定義は、以下のようになっています。
「キャリア・パスポート」とは,児童生徒が,小学校から高等学校までのキャリア教育に関わる諸活動について,特別活動の学級活動及びホームルーム活動を中心として,各教科等と往還し,自らの学習状況やキャリア形成を見通したり振り返ったりしながら,自身の変容や成長を自己評価できるよう工夫されたポートフォリオのことである。
なお,その記述や自己評価の指導にあたっては,教師が対話的に関わり,児童生徒一人一人の目標修正などの改善を支援し,個性を伸ばす指導へとつなげながら,学校,家庭及び地域における学びを自己のキャリア形成に生かそうとする態度を養うよう努めなければならない。
(引用)「キャリア・パスポート」の様式例と指導上の留意事項(文部科学省)令和3年2月19日
キャリア・パスポートのポイントは以下の3つです。
- キャリア教育の一環
- 小・中・高で活用する
- 自分の成長を自己評価する
これだけ聞いても、なんとなくわかるけれどイメージできませんよね。
実物はどんなものなのでしょうか。
様式は地域によって違う
実は、キャリア・パスポートの様式は決まっていません。
文科省のWEBページでは、このように書かれています。
なお、教材については、小学校から高等学校まで、その後の進路も含め、学校段階を越えて活用できるようなものとなるよう、各地域の実情や各学校及び学級における創意工夫を生かした形で活用されるものと考えていますので、各設置者におかれては、2020年4月までの実施に向け、本例示資料等を参考としつつ、各地域・学校の実情に応じた教材の作成等の準備に着手し、円滑な実施に御配慮くださるようお願いします。(太字引用者による)
(引用)「キャリア・パスポート」例示資料等について:文部科学省
太字部分を読んでいただくと「各設置者が(キャリア・パスポートの)準備に着手する」と書かれています。
ここでの「各設置者」とは、公立の場合「教育委員会」だと考えてもらって概ね間違いありません。(後程、補足あり+私立は当然、学校独自に作成)
ただ文科省の文言だと「教育委員会が準備に着手」とは書いてありますが、「作成」とは書いていないんですね。
なので、現時点では「キャリア・パスポート」については大きく分けて以下の3パターンが考えられます。
- 教育委員会が作成している。
- 教育委員会が雛形を作って、各学校でアレンジしている。
- 教育委員会が方向性を示した上で、各学校で作成している。
というわけで、「キャリア・パスポートとはコレです!!」というものはないのですが、一応、文科省がサンプルを例示してくれています。
それがこちら(小学校向け)
(引用)「キャリア・パスポート」例示資料等について:文部科学省
こういう資料を小・中・高と積み重ねて、自分の成長や変化を子ども自身が見直せるようにしているわけです。
*以下、「設置者について」詳しく知りたい方むけ(興味のない方は読み飛ばし推奨)
学校教育法第一章総則第二条では、「設置者」についてこのように書かれています。
第二条 学校は、国(国立大学法人法(平成十五年法律第百十二号)第二条第一項に規定する国立大学法人及び独立行政法人国立高等専門学校機構を含む。以下同じ。)、地方公共団体(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第六十八条第一項に規定する公立大学法人(以下「公立大学法人」という。)を含む。次項及び第百二十七条において同じ。)及び私立学校法(昭和二十四年法律第二百七十号)第三条に規定する学校法人(以下「学校法人」という。)のみが、これを設置することができる。
とても短くすると「学校は、国、地方公共団体、私立の学校法人のみが、これを設置することができる」ということです。
つまり公立学校であれば、正確には「地方公共団体」が設置者となるわけです。
東京都なら、千代田区の区立小・中学校は「千代田区」、都立高校なら「東京都」になるんですね。
なので、最終的なトップは、その地方公共団体の長になるわけです。
話はそれますが、コロナ禍で知事や市長・区長などの判断で休校が実施されたのもこの考えによります。
ただ通常の実務などを知事や市長・区長がイチイチ指示をしていたら業務が停滞しちゃういますよね。
そういうわけでわたしたち保護者の立場としては、文科省が「設置者」と書いていれば「教育委員会のことなんだな」と理解する方がわかりやすいと思います。
受け渡しは先生同士と子ども本人
さて、前述のようにキャリア・パスポートは、小学校・中学校・高校と長く積み重ねて使っていくものです。
その受け渡しはこのように決まっています。
「キャリア・パスポート」の学年間の引き継ぎは、原則、教師間で行うこととしており、また、校種間の引き継ぎは、原則、児童生徒を通じて行うこととしているので留意すること。
(引用)「キャリア・パスポート」の学年・校種間の引き継ぎについて(文部科学省)令和3年2月19日
- 学年間の引き継ぎは、教師が行う。
- 小学校⇒中学校、中学校⇒高校の引き継ぎは、児童生徒本人が行う。
保護者としては、以下の2点を気を付けたいですね。
- 小学校・中学校卒業時にしっかりキャリア・パスポートを学校から持って帰ってきているかどうか
- 中学校・高校入学時にキャリア・パスポートを提出できるように捨てないで保管しておくこと
タイミングとしては卒業・入学時にお子さんと確認してくださいね。
紛失した場合は?
さて、気になるのがキャリア・パスポートを紛失した場合です。
文科省の資料では、このように書かれています。
問7 「キャリア・パスポート」を紛失した場合の取扱いはどのように考えればよいでしょうか。
(答)
1.「キャリア・パスポート」を含めた各学校における文書等の取扱いは、各学校やその設置者の定めるところによりますので一概には申し上げられませんが、一般的には、可能な範囲で情報を集め、再度作成することが重要と考えます。
(引用)「キャリア・パスポート」に関するQ&Aについて(令和3年2月改訂) 文部科学省令和3年2月
「可能な範囲で、再度作成」となっているので、大変ですが作成し直しとなります。
心配な方は卒業時に一旦、家庭に持って帰ってきた時に写メしておいたり、コピーを取って置くと良いかもしれませんね。
引っ越しした場合は?
キャリア・パスポートは、地域・学校によって様式が違うと述べました。
では、引っ越した場合はどうすれば良いのでしょうか?
文科省の資料ではこのように書かれています。
問9 児童生徒が転出入する場合、転入先の学校は、自校の様式に沿って作り直す必要があるのでしょうか。
(答)
1.「キャリア・パスポート」を含めた各学校における文書等の取扱いは、各学校やその設置者の定めるところによりますので一概には申し上げられませんが、一般的には、これまでに作成した「キャリア・パスポート」を転学先の学校に持っていき、そのまま活用していただければよく、転学先の学校の様式で作り直す必要はないと考えます(なお指導上の理由等により、転学先の学校の様式で作り直すことを否定するものではありません)。
(引用)「キャリア・パスポート」に関するQ&Aについて(令和3年2月改訂) 文部科学省令和3年2月
「各学校の判断によるが文科省としては作り直す必要はない」 と書かれています。
キャリア・パスポートの主旨を考えれば当然ですよね。
子ども自身が振り返るためのものを学校が変わったからといって作り直す必要は、本来ないはずです。
もし引っ越した際に「 過去のキャリア・パスポートを新しい様式に転記してほしい」なんて言われたらこの部分を先生と一緒に読んで話し合ってみてください。
入試・就職には使用されない
現状、キャリア・パスポートを高校入試、大学入試、就職で使用することはありません。
文科省の資料ではこのように書かれています。
問8 「キャリア・パスポート」を高校・大学入試や就職試験に使用してはいけないのでしょうか。
(答)
1. 「キャリア・パスポート」を入試や就職試験等でそのまま活用することは、
① 高等学校や大学の入学者選抜等で使用するいわゆる「調査書」は各学校において作成するものである一方、「キャリア・パスポート」は児童生徒自らが記入するものであること、
② 入試や就職試験等での活用を前提に作成されたものではないことから適切ではなく、「キャリア・パスポート」の趣旨・目的からも考えられません。
2.他方、例えば、児童生徒自らが入学者選抜や就職試験で面接を受けたり自己申告書に記入したりする際の情報の一つとして「キャリア・パスポート」を参考とすることは考えられます。
(引用)「キャリア・パスポート」に関するQ&Aについて(令和3年2月改訂) 文部科学省令和3年2月
というわけで、保護者の方には安心してもらって、子ども自身が自分の成長を記録できるように見守ってあげてください。
そもそも自分は何が好きで、何を喜びと感じてきたのか。
蓄積された「キャリア・パスポート 」が、ある時、子ども自身が進路や志望理由などで迷った際のヒントになると良いですね。
それでは、また。
ちなみに「キャリア・パスポート」に似たようなものとして「JAPAN e-Portfolio」というものがありました。
これは、文科省が2020年8月7日、運営団体である一般社団法人教育情報管理機構の運営許可を取り消した為、とん挫しました。
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