どうも、りょうさかさんです。
今回の書評は「科学的に考える子育て-エビデンスに基づく10の真実」(和久田学)をご紹介です。
役立つ部分とわたしが感じた違和感の両方をまとめたいと思います。
- 「科学的に考える子育て-エビデンスに基づく10の真実」の構成
- 「科学的に考える子育て」から学ぶ「叱らない」関わり方
- わたしが実践したくなった子どもへの関わり方
- 「科学的に考える子育て-エビデンスに基づく10の真実」への違和感
- 「科学的に考える子育て-エビデンスに基づく10の真実」のまとめ
「科学的に考える子育て-エビデンスに基づく10の真実」の構成
本書「科学的に考える子育て-エビデンスに基づく10の真実」の内容や特徴は、章タイトルを見てもらうとわかりやすいです。
- 真実1 勉強は子どもを幸せにすることもあるが、不幸せにすることもある
- 真実2 結局、「叱る」は大人の負け
- 真実3 ほめるのはタダだが、技術が必要
- 真実4 「学校は社会の縮図」ではない
- 真実5 経験則は使っていい時とそうでないときがある
- 真実6 「子どものやる気が問題だとする考え」が問題
- 真実7 思春期はリスクがあるが、おもしろい
- 真実8 成功のカギは「実行機能」にあり
- 真実9 「感覚」は、使えるけれど見えにくい
- 真実10 子育ては楽しめる状況をつくる
- +α 発達障がいは「理解」が大切
「科学的」「エビデンス」とタイトルで言いながら「真実7」で「おもしろい」という非常に主観的な言葉を使っていることからもわかるように、著者の和久田先生の人柄が窺えるような暖かい目線から文章が綴られています。
内容としては「教育経済学」「応用行動分析学」を基にこれからの子ども達が求められる「21世紀型スキル」の視点から書かれています。
こういったことを1冊でさっと理解したい方は、読んでみても良いと思います。
本書を読後、さらに興味があれば「学力の経済学」「発達障がいの子どもを伸ばす魔法の言葉かけ」「私たちは子どもに何ができるのか」などを読んでみてください。
まず1冊という場合は「私たちは子どもに何ができるのか」がオススメです。
「科学的に考える子育て」から学ぶ「叱らない」関わり方
「真実2 結局、「叱る」は大人の負け」では、「叱らない」ことについて言及しています。
そもそも、人はどうして叱るのでしょうか?
「叱る」ことによって「ある行動をさせたくないから」ですよね。
「叱る」ことによって一定達成できたような気がする時もありますよね。
本書では「本当に減っているのか?」「あなたがいないところでは減っていないのでは?」そして、実は全体としての「教育効果はむしろマイナス」だと指摘します。(本書p.35)
本書で紹介される「叱る副作用」は3つあります。
- 弁別の法則(p.36-37)
- 派生の法則(p.39-40)
- 反発の法則(p.41-42)
「弁別の法則」とは「先行条件により行動が変化する」という法則のことです。
例えば、「母親と一緒の時は友だちを叩かないけれど、いなくなると叩く」といったことです。
「派生の法則」とは「ある対象の影響を受けて他のモノの評価が変わる」という法則です。
例えば、「英語の先生を嫌いになれば、英語まで勉強するのが嫌になる」といったことです。
これは逆にも作用して「大好きな先生が専門の教科の勉強も頑張る」みたいなこともあります。
「反発の法則」とは「怒られると人は反発する。その対象は怒った相手とは限らない」という法則です。
例えば、「親に怒られても反発しないが、八つ当たりで弟に厳しく接する」みないなことです。
実際の子育てでは思わず叱ってしまうこともありますよね。
情けない話ですが、わたしもそうです。
多くの育児書で語られる「叱ってはいけない」という言葉ですが、心理的・教育的背景を理解し、グッと堪えて子どもと一緒に親として成長していきたいと思います。
わたしが実践したくなった子どもへの関わり方
前段では自戒を込めて「叱ってはいけない」を取り上げましたが、次は実践したくなった子どもへの関わり方です。
- 「適切な行動」を評価する(p.65)
- 「挑戦する行動そのもの」を評価する(結果は評価しない)(p.126)
- 「計画する・実行する・振り返る」を日々行う(p.164-169)
詳しく知りたい方はぜひ、本書をご覧ください。
特に「「計画する・実行する・振り返る」を日々行う」は、「実行機能」を高めるために効果的だと紹介されています。
これって小学校理科の授業で良く取り入れられている手法ですよね。
実験計画を立てて、実験を行い、実験結果を振り返る。
こういったプロセスを幼少期から続けていくことによって「物事をやりぬく力」が育成されていくのでしょう。
まずは「何して遊ぼうか?」「何をして遊んだっけ?」そんな言葉かけから始めていきたいと思います。
「科学的に考える子育て-エビデンスに基づく10の真実」への違和感
参考になることも沢山書かれていますが、違和感というかツッコミどころもあります。
例えば、p.145で紹介されている「マシュマロテスト」です。
「マシュマロテスト」は、スタンフォード大学のウォルター・ミシェルという心理学者の有名な実験です。
この実験結果は「マシュマロを我慢出来た子どもの方が、将来学業成績が良かった」というもので、その後教育界では重視されてきました。
本書でもそのスタンスでこの実験が紹介されています。
しかし、2018年の再現実験で「効果は限定的であり、被験者の経済的背景の方が相関が高い」ということがわかっています。(参考 マシュマロ実験 - Wikipedia)
「エビデンスに基づく」というタイトルをしているにも関わらず、この点に触れていないのは残念でした。
他にもスマホ育児に警鐘を鳴らす内容もあるのですが「インターネットによってリアルネットワークを手放したのかもしれない(p.197)」とノーエビデンスで主観的な文章が後半になると目立ち始めます。
一応、海外の子育てと比較研究(p.208)も出てきますが、平成16年の報告書を参考にしており、14~15年前のデータです。
iPhoneの発売って平成19年ということを考慮すると…
14~15年前ってほとんどスマホがない時代の研究ですよ。
著者もそうですが、編集者の方は気付かなったのでしょうか?
エビデンスをアピールしながら巻末の参考文献もたった6冊&3サイト。
こんな感じで論理展開的にもエビデンス的にも「アレ?」と思う箇所があります。
「科学的に考える子育て-エビデンスに基づく10の真実」のまとめ
最後に「科学的に考える子育て」の感想についてまとめておきましょう。
- 「教育経済学」「応用行動分析学」を基に「21世紀型スキル」の視点から書かれている
- すぐ取り入れることができる手法が書かれている
- 一部エビデンスに疑問がある
褒めたり、貶したりドッチなんだと思われるかもしれませんが「この本には良い部分もあるし、ツッコミどころもあるという」それだけの話です。
個人的には、あまりオススメできる本ではありません。
ただ入門書的に読み始める1冊としては「幼少期・思春期・発達障がい」と広い範囲について言及されているので勉強になるかもしれません。
それでは、また
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