どうも、りょうさかさんです。
今回は「自律する子の育て方」(工藤勇一・青砥瑞人/SBクリエイティブ)についてです。
私立が参考にする千代田区立麹町中学校の元校長・工藤勇一先生と脳神経科学の専門家である青砥瑞人氏の共著。
麹町中での取り組みの「柱」がわかる書籍になっています。
「自律する子の育て方」とは
「自律する子の育て方」は、千代田区立麹町中学校で取り組まれた「3つの言葉がけ」について紹介した本です。
脳科学をベースとした理論の部分は、専門家である青砥さんが執筆、学校現場での「実践」の部分を元校長である工藤先生が執筆されています。
千代田区立麹町中学校の「実践」と聞くと、生徒も保護者も元々上位層だから出来たんだろうと思われる方もいると思います。
確かに地価からもわかるように富裕層しか住めないような立地ですから、そう思うのは自然です。
しかし、よく考えてみて下さい。
そんな富裕層が公立中学校に進んで入れるでしょうか?
本書にも書かれていますが、当時の麹町中のほとんど生徒は、中学受験に失敗して挫折して入学してくる生徒だったそうです。
そういった子どもたちは自己肯定感が低く、主体性も低かったようです。
本書では、彼らの自己肯定感を高めるために以下の「3つの言葉がけ」を中心とした取り組みが掲載されています。
- 「どうしたの?」
- 「君はどうしたいの?」
- 「何を支援してほしいの?」
(引用)「自律する子の育て方」(工藤勇一・青砥瑞人/SBクリエイティブ)p.91より
この詳しい中身や脳神経学的な背景が知りたい方は、ぜひ本書をご覧ください。
麹町中で使われたこの手法は、子どもや家庭の環境に関係なく参考になると思いますよ。
大人にできないことを押し付けない
わたしが本書を読んで好きだと感じたのは、「綺麗ごと」ではなく「手触り」のある言葉選びをしていて、それが教育観にも反映されているところです。
例えば、工藤先生のパートの文章に「子どもたちを心理的危険に追い込むストレス要因」が箇条書きにされています。
その中には「校則」「体罰」と一緒に「仲良く」が並んでいるんです。
すごくないですか?
教育系の本で「子どもたちを心理的危険に追い込むストレス要因」の一つに「仲良く」を入れることはとても勇気のいることだと思ったからです。
だって多くの人達は「子どもたちは仲良くいるべきだ」って無条件に信じていると思うんですよ。
わたし自身、自分の子どもが他の子どもと遊んでいる時、ちょっとしたことでケンカになると「仲良くしようか」と言ったことがあります。
でも、言いながらすごくモヤモヤしていたんですよね。
なぜなら、自分だって誰とでも仲良くできるわけではない、世の大人の多くができているわけじゃないと知っているからです。
そんな大人でも出来ないことを当たり前のように子どもに「やれ!」って言うのはかなり理不尽ですよね。
わたしはこの部分を読んで「よくぞ書いてくれた」と思いました。
大人ですら、出来ることは良くも悪くも「適切な距離を取るようにすること」だけです。
だから本当は「他人とは適切な距離を取なさい」とか「自分だけが正しいとか、自分の考えを押し付けるようなことは慎みなさい」って教えてあげたいけれど、子どもの発達段階を考えれば、言って聞かせる時期を考えなければなりません。
(もちろん「仲良くしよう」は「思いやり」という側面もある言葉なので、ある程度の発達段階までは有効な言葉だとも思います)
本書では、わたしたち大人も出来ていないことを子どもに「絶対善」のように押し付けるのではなく、子どもを否定しない環境を作る方が大切だと提案しています。
このように本書「自律する子の育て方」では、「綺麗ごと」ではなく「そもそも子どもにどんな大人になってほしいのか」という最上位の目標から逆算するという思考が背骨のようにしっかり入っています。
その背骨の部分を楽しむのも本書の醍醐味の一つだと思いますよ。
もちろん脳科学をベースとした「心理的安全性」「メタ認知」の話は、大人が社会でも役立つ内容になっています。
部下が「指示待ち人間」で不満のあなた。
もしかするとあなたの管理の仕方が「心理的安全性」を奪って、自主性を損なわせているのかもしれませんよ。
それでは、また。