りょうさかさんと

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【レビュー】映画「劇場」逃げ続けた2人の話


どうも、りょうさかさんです。

先日、AmazonPrimeで映画「劇場」を見ました。

山﨑賢人さんと松岡茉優さんの演技は控えめに言って、天才でした。

映画のレビューは書いてこなかったのですが、あまりに心を揺さぶられたので感情をまとめておこうと思います。

ネタバレ全開で書くので、知りたくない人は映画を見てから再び会いましょう。

映画「劇場」とは

映画「劇場」は、原作は又吉直樹さんの同名の作品。

監督は行定勲さん。

主人公の永田(山﨑賢人)は売れない劇団脚本家、それを支える沙希(松岡茉優)の物語。

Yahoo!映画の紹介では「劇作家を目指す青年と、彼を支える恋人の日々を描く。」と書かれています。

(上太字の引用)劇場 - 作品 - Yahoo!映画

物語は永田の「いつまでもつだろうか」というモノローグとともに始まります。

(ちょっと次からは文体をかえるぞい)

「劇場」の感想

恋愛映画の終わりは、ハッピーエンドか破局しかない。

言ってみれば主人公、永田は最低な男だ。

沙希に甘えて家に転がりこんで、働きもせずに創作を理由に昼夜逆転の生活をする。

沙希を主演に舞台が成功すれば、嫉妬して二度と沙希を役者としては使わない。

自分の舞台がちょっと上手くいくとスタッフの女性とそのまま夜の町に消える。

それが後ろめたくて道端のブロックを持って帰ってきて、沙希を笑わして自分と相手の感情を誤魔化すのだ。

玄関にはいくつものブロックが積み上がっている光景がうつり、それが何度も行われていることだと観客に知らしめる。

そんな永田を沙希は徹底的に甘やかすのだ。

「ここが一番安全な場所だよ」

2人の関係は、心理学でいえば「共依存」だと言えるのだろう。

共依存者は、相手から依存されることに無意識のうちに自己の存在価値を見出し、そして相手をコントロールし自分の望む行動を取らせることで、自身の心の平穏を保とうとする

(引用)共依存 - Wikipedia

永田は「才能がないという自分」と「生きていくのにはお金が必要だという現実」に目を背けて、創作に逃げ込む。

「才能がない」ことを沙希にだけは知られたくない永田は、勝手に新居を借りて、そちらで一人で暮らし始め、夜になると沙希の家のベッドに潜り込んで、ただ横で眠ることで甘える。

永田は、彼女である沙希に「恋人」と「母親」の両方を求めているのだが、沙希と向き合うことからは逃げるのだ。

沙希は、隣にいる永田に「人形じゃないよ」と返す。

一方、沙希は「東京にいる」という理由作りのために永田の面倒を見るという手段を選んでいた。

沙希のもつ「東京にいれば何かがあるかも」という希望は、一見古臭く感じるが地方の閉そく感を表しているのだろう。

しかし、この「人形じゃないよ」という言葉と前後して、沙希は酒に逃げ、バイト先の店長の部屋に行って帰ってこない夜が増えてくる。

しかし、永田は怒らない。

怒る資格すらないと自分を諦めているようで、ただ沙希の身体だけを心配する。

永田も沙希も自分や相手を傷つけながら現実と向き合わないように逃げ続けるのだ。

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そんな沙希が「東京だめかもしれない」と永田に別れを告げるシーンがある。

沙希が永田の口調を真似ておどけ、永田はテーブルにある男性アイドルグループのDVDを見付ける。

「何これ? 一緒に見ようか」

そう言って二人でDVDを見ながら沙希はお母さんが帰ってこいと言ってくれていると伝えるのだ。

ラストシーンが一番好きだけれど、わたしはこのシーンが大好きだ。

このシーンは永田が2つのことに気付かされるシーンだからだ。

1つ目は、沙希が永田の真似をすることで、沙希からは自分がこう見えていると気付かされる点。

2つ目は、こんなに一緒にいるのに沙希の好きなアイドルすら知らない、知ろうとしていない自分に気付かされる点。

つまり永田は自分のことも、沙希のこともわかっていないと気付かされるのだ。

そして、ラストシーン。

永田は、自分と沙希と演劇について現実と向き合って言葉を紡ぐ。

この映画は痛々しい。

最低に思える永田も沙希もどこか他人事ではなく、自分自身の未熟な部分、自意識を射抜くからだ。

ちなみにラストの演出は映画オリジナルらしい。

どこから劇かについては諸説あるらしく、私は沙希の家のブザー音が舞台の開演の音になった瞬間説が一番妥当だと思いました。

正直前半はフラストレーションが溜まる展開ばかりだけれどラスト30分の山﨑賢人さんと松岡茉優さんの演技は圧巻で何度も見直しました。

気になった方はぜひ、見てみて下さい。

それでは、また。

執筆時点ならAmazonPrimeでも見ることができますよ。

原作本はこちら。