どうも、りょうさかさんです。
正月休みを利用して2021年12月24日に閣議決定されたデジタル庁の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を読んでみました。
デジタル庁が、2021年末時点でどういったことを教育分野について考えているのか確認しておきましょう。
「デジタル社会の実現に向けた重点計画」のポイント
デジタル庁の資料はこちらで見ることができます。
この中の「教育」に関することのポイントを挙げると以下の8点です。
- 教職員への端末配置
- 端末の持ち帰りも含め、安全・安心に端末を取り扱う方法等に関するガイドラインの策定・公表
- 高校への1人1台端末の配置(地方創成臨時交付金)
- 教育ビッグデータの利活用
- 全国学力調査をCBT化(パソコン上の試験)
- データ相互運用のためのフォーマットを標準化を推進する
- 児童生徒のIDについてマイナンバーカードの活用を含めた検討
- 2021年度~2022年度にかけて児童生徒の情報活用能力の定量的測定のための調査
では、詳しく見ていきましょう。
GIGAスクール構想の基盤整備
GIGAスクール構想の基盤整備について重点的に書かれています。
例えば、以下の3点です。
- 教職員への端末配置
- 端末の持ち帰りも含め、安全・安心に端末を取り扱う方法等に関するガイドラインの策定・公表
- 高校への1人1台端末の配置
「高校への1人1台端末への配置」についてはこのように書かれています。
高等学段階の1人1台端末については、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の活用も含め、各都道府県における整備状況を国としてフォローアップし、必要な取組を促す。また、児童生徒の1人1台端末の将来の在り方について令和4年度(2022度)末までに関係府省庁で検討し、令和5年度(2023年度)以降、端末の利活用等の実態や現場の声も踏まえ、必要な措置を講ずる。
(引用)「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和3年(2021年)12月24日)
このデジタル庁の閣議決定を受けて、文部科学省も「GIGA スクール構想における高等学校の学習者用コンピュータ端末の整備の促進について(通知)」という通知を出しています。
その中では具体的に以下のように書かれています。
令和3年12月27日付け内閣府地方創生推進室事務連絡において、各地方公共団体宛てに周知されており、1人1台端末が整備途上の場合、公費で端末を調達する場合に限らず、保護者への負担軽減策を講じる場合等においても同交付金の活用が可能となっているので、活用する場合は、実施計画の提出期限を厳守するなど事務手続きに遺漏なきよう留意すること。 (太字引用者による)
(引用)「GIGA スクール構想における高等学校の学習者用コンピュータ端末の整備の促進について(通知)」(令和3年(2021年)12月24日)
今までGIGAスクール構想は義務教育の範囲まででした。
いくら高校にも1人1台端末をいれろと言っても保護者負担が大きかったんですよね。
この通知によると「保護者負担で購入する場合でも、地方創成臨時交付金を使ってもよい」ということを明言しているんです。
つまり小・中学校の義務教育と同様に高校においても1人1台端末を使った授業が当たり前になるわけです。
教育ビッグデータの利活用
「個別最適な学び」と「協同的な学び」を充実させていくために教育ビッグデータの利活用を掲げています。
② 教育
教育のデジタル化のミッションとして「誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学べる社会」を目指し、ストレスのない ICT 環境とともに、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実とその評価を行う上で必要なデータの①スコープ(範囲)、②品質、③組合せ、を拡大・充実させていくことにより、学習者主体の教育への転換や教職員が臨機応変に外部協力者の支援を得ながらこども達と向き合える環境の整備を図ることが必要である。このため、教育再生実行会議の提言も踏まえ、教育現場における ICT 利活用環境の強化を着実に図りつつ、学習者や教育者の日々の学習や実践の改善に資する教育データの利活用と、教育政策の立案・実行の改善に資する教育ビッグデータの利活用を、「データ駆動型の教育」の車の両輪として推進することが必要である。
(引用)「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和3年(2021年)12月24日)
「教育ビッグデータの利活用」とは文部科学省の補正予算案に「公教育データ・プラットフォームの構築」として書かれていた内容と同様の趣旨でしょう。
全国学力調査をCBT化(パソコン上の試験)にし、そのデータをもとに子どもたちの実態把握や今後の教育施策に生かそうというものです。
文部科学省の補正予算案についてはこちらをどうぞ⇒
そして、そのための「ロードマップ」を早急に策定し、「データ相互運用のためのフォーマットを標準化を推進する」すると書かれています。
特に、教育ビッグデータのデータ収集のために行われる教育現場を対象とした調査・手続の原則オンライン化やデータの相互運用性の確保を推進するとともに、全国の学校で共通に利活用が必要な教育データについて、比較検証可能な測定方法など国際的な標準を参考にしつつ、更なる標準化を推進する。また、教育分野のプラットフォームに関連する施策である「学習 e ポータル」、「学外デジタル教育プラットフォーム」、「教育デジタルコンテンツ利活用環境の整備」、「STEAM ライブラリー」、「公教育データ・プラットフォーム(仮称)」について、学習者、保護者、教職員、学校設置者、研究機関、民間企業といった利用者に対する新たな価値を明確化しながら取組を推進するとともに、全体アーキテクチャを踏まえ、必要に応じて各施策の見直しを行う。(太字引用者による)
(引用)「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和3年(2021年)12月24日)
「標準化」とは、システム上の文脈の場合、「規格の統一」を意味します。
例えば、コンセントの形がメーカーが違っても国内で統一されているのは、この「標準化」がなされているからなんですね。
デジタル庁らしい方針としては、児童生徒のIDについて「マイナンバーカードの活用を含めた検討をする」と書かれていることです。
さらに、児童生徒一人ひとりの ID については、マイナンバーカードの活用を含め、ユニバーサル ID や認証基盤の在り方を検討する。特に、学習者の ID とマイナンバーカ ードとの紐付け等、転校時等の教育データの持ち運び等の方策を令和4年度(2022 年度)までに検討し、令和5年度(2023 年度)以降希望する家庭・学校における活用を実現できるように取り組む。加えて、ガバメントクラウドを全国の学校や教育委員会等が活用できるよう、校務支援システムを含めた教育分野の情報システムの在り方について具体的な対応方策や課題等を整理する。まずは、就学事務システム(学齢簿編製等)について、ガバメントクラウドを活用する方向で関係府省庁において検討する。
(引用)「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和3年(2021年)12月24日)
わたしは、教育データを取得しどんどん活用していくことには賛成の立場です。
なぜなら、今後の教育政策をエビデンスベースの教育施策に変えることができるからです。
詳しくは書籍「教育格差」(松岡亮二)やその書評記事を読んでください。
研究に際して個人が特定できない状態で、児童生徒の学力を何年にもわたって追跡できることはとても価値があると思います。
一方でその情報の管理には慎重になるべきです。
例えば、e-Portfolioのように学習履歴を「評価の道具」として使うこととは分けて考える必要があります。
この辺りの説明をきちんとしないとなかなか広がらないのではないかと危惧します。
e-Portfolioについて知りたい方はこちらをどうぞ⇒
(ちなみに2020年にe-Portfolioは頓挫しました)
児童生徒の情報活用能力の調査
教育項目としては上記の内容になるのですが、「6.デジタル社会のライフスタイル・人材」には「児童生徒の情報活用能力の調査」が書かれています。
① デジタルリテラシーの向上
全ての国民がデジタルリテラシーを向上させることができるよう、「情報活用能力」を「学習の基盤となる資質・能力」として位置付け、令和3年度(2021 年度)に研修用教材、実践事例集等の周知を行った上で、小学校におけるプログラミング教育の必修化、中学校におけるプログラミング教育の内容の充実、高等学校における情報科の共通必履修科目「情報Ⅰ」の新設を盛り込んだ新学習指導要領に基づく取組を着実に実施する。その際、必要に応じ地域密着型の人材育成に貢献する高等専門学校等、専門的な知識・技術を有する人材の活用を図る。また、令和3年度(2021年度)から令和4年度(2022年度)にかけて児童生徒の情報活用能力の定量的測定のための調査を実施し、結果を公表するとともに、情報モラル教育の充実に向けた取組を推進する。 (太字引用者による)
(引用)「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和3年(2021年)12月24日)
「デジタルリテラシーの向上」というタイトルですが、そもそも「デジタルリテラシー」とは何でしょうか?
Wikipediaでは日本語版に用語がありませんでした。
英語版の方にはあったので自動翻訳したものを見てみましょう。
デジタルリテラシーとは、さまざまなデジタルプラットフォームでタイピングやその他のメディアを通じて情報を見つけ、評価し、明確に伝達する個人の能力を指します。
(引用)Digital literacy - Wikipedia
「デジタルリテラシー」は、「情報リテラシー」という言葉とほとんど同じ意味だと捉えて良さそうです。
ちなみに「情報リテラシー」とは、以下の3点のような能力のことを言います。
- コンピュータやアプリを活用して情報収集ができること
- 収集した情報から取捨選択ができること
- 収集した情報を分析したり発信できること
両者に共通するのは「情報を評価し発信(伝達)する能力」だということです。
そして、この「情報を評価し発信(伝達)する能力」について「2021年度から2022年度にかけて児童生徒の調査」が行われるようです。
「情報活用能力」を図るわけですからCBT調査で「情報リテラシー」で掲げた3点を問うようなテストが行われるのかもしれませんね。
デジタル庁の重点計画の中から「教育分野」のまとめ
最後にもう一度8点のポイントをまとめてみましょう。
- 教職員への端末配置
- 端末の持ち帰りも含め、安全・安心に端末を取り扱う方法等に関するガイドラインの策定・公表
- 高校への1人1台端末の配置(地方創成臨時交付金)
- 教育ビッグデータの利活用
- 全国学力調査をCBT化(パソコン上の試験)
- データ相互運用のためのフォーマットを標準化を推進する
- 児童生徒のIDについてマイナンバーカードの活用を含めた検討
- 2021年度~2022年度にかけて児童生徒の情報活用能力の定量的測定のための調査
子どものデジタルにまつわる言説では相反する情報が混在しています。
例えば「将来デジタル人材が今後必要になる?」といった前向きな情報もあれば、「デジタルで学力が下がる?」といったネガティブな情報を聞いたことがあると思います。
個別の事案の判断は別として、国としてどういった方向に進もうとしているのかを知ることは、わたしやあなたの人生に価値があると同時に子育てにも役立つはずです。
今回紹介したポイントを踏まえて、ご家庭でのPCやタブレットの扱いを親子で話し合ってみてはいかがでしょうか。
それでは、また。