どうも、教育関係会社員のりょうさかさんです。
久しぶりに書評記事です。
今回ご紹介するのは「ぼくたちの洗脳社会」(岡田斗司夫/朝日新聞社)です。
著者が全文を無料で紹介していますが、わたしは中古本を購入して読みました。
(紙の書籍の方が読みやすい旧世代なんですよね…)
「ぼくたちの洗脳社会」とは
「ぼくたちの洗脳社会」は、過去の歴史と技術の発達を振り返り、人の生活や思考にどう影響を与えたのか、将来がどのような社会になるのか考察した書籍です。
奥付の発行年月日は1995年12月5日。
2022年の現在から計算すると27年前の書籍です。
この本を現在読むということは、言ってみれば書籍と現実を答え合わせをするようなものです。
その結果はというと、近年取り上げられている「評価経済社会」といった概念を「洗脳社会」という言葉で表現されています。
驚くべきことですが、「予測を当てた事」よりもその思考の材料や流れを追体験できるのが本書の醍醐味です。
人の価値観の変化
本書を通して気付かされるのは「人の価値観の変化」と「テクノロジーへの向き合い方」です。
人の価値観は、技術の進歩によって変わります。
中世は「宗教が幸せにしてくれる」、その次は「科学技術が幸せにしてくれる」とテクノロジーの変化によって「人の価値観」は変化していきます。
そして、科学技術に期待できなくなった時代の人々の消費行動は、思想的な消費に向かうと指摘します。
「思想的な消費」とは、例えば「好きな企業だから購入する」といったものから「環境に配慮している会社を応援する」「推しの活動を応援するためにTシャツを購入する」といったものです。
10年以上前は、いわゆる「ブランドもの」という消費の方向性が強かったと思いますが、ここ数年で上記のような価値観が並列しているように当たり前になっているように感じます。
カバンはブランドものだけど、Tシャツは推しのグッズで、スマホはApple好きだからiPhoneみたいなことです。
情報発信時代の予見
本書の後半の内容は、1995年時点でSNS隆盛を予見しています。
その際に前述のように「洗脳社会」というキツイワードが出てきますが、その理由は以下のようなものです。
- 情報発信とは「意味の伝達」ではなく、そもそも「意図の強制」である(例・親の「危ない」は、「するな」という強制)
- (マスコミの)情報発信とは、(マスコミ側が)取り上げる取り上げないの判断をしている時点で、バイアスがかかっている
- いわばそれは、「意味の伝達」の形をした「洗脳」である
- インターネットによって誰もが発信できるということは、誰もが洗脳しあう「自由洗脳競争社会」である
実際、SNSを覗けば様々な事件に対しての多くの人たちの「感想・解釈・主張」を見ることができますよね。
そして、さらに多くの人たちは自分の「感想・解釈・主張」を考えたり述べるのではなく、タイムラインに多数流れてくる中から「自分が気に入った」モノを採用していきます。
本書ではこのような文章で述べられます。
近代が経済行為が自由になった社会であるのに対して、現在、新しく変化しつつある私たちの社会とは「洗脳行為が自由になり、個人に開放されつつある社会」なのだと。
(引用)「ぼくたちの洗脳社会」(岡田斗司夫/朝日新聞社)P.147
さらに本書では上段の「価値観の変化」とこの「自由競争洗脳社会」が組み合わさることで、現行社会生活の決まり事(家族、就職、規則正しい生活)などが失われていくと指摘します。
振る舞いが変わり価値観が変わる
わたしがこの本を読んで面白いと思ったことは、科学技術の進歩によって人間の振る舞いが変わり、価値観が変わることです。
「振る舞いが変わる」とは、「ケータイからスマホに変わって生活が変わった」というレベルのもあれば、AmazonのAlexaに話しかける時は「機械が理解しやすそうに人間側が気を使って喋るようになる」ようなことも含みます。
そうやって人間の振る舞いが変われば、価値観が変わるのは自然な流れだと思います。
そこに時代の流れ、出来事が人間の思考や価値観に影響を与えます。
例えば、2006年に流行語大賞にノミネイトされた「勝ち組・負け組」といったフレーズはいつしか使われなくなり、仮想通貨流行期には「億り人」という言葉が良く使われました。
この15年くらいで「勝ち・負け」を直接対比する言葉は聞かれなくなったということです。
対照的に「億り人」は「個人的な成功」を指す言葉です。
「億り人」を「勝ち組」とは表現しないのは「何かに所属」したことによって「勝者の側」になる時代ではないことを表しているようです。
「億り人」」という言葉が生まれるキッカケとなった「仮想通貨」もテクノロジーの進歩によって生まれたものです。
テクノロジーの進歩が価値観の変化を生み、それが「言葉」へと表れていくんです。
きっとこれからも「新たな言葉」が生まれてくるでしょう。
その背景にはテクノロジーの進歩、それに伴う生活と価値観の変化があるはずです。
そういうものを意識して観察していくのも楽しいと思いますよ。
そんな風なことを本書を読んで、わたしは考えました。
興味のある方は無料でも読めるのでぜひ、読んでみてください。
それでは、また。