先日、新聞を読んでいておかしなグラフがあったのでご紹介。
しかもそのグラフは「国際学習到達度調査(PISA)の日本の読解力順位の推移」についてでした。
こういう「統計トリック」に気を付けましょうという意味で取り上げたいと思います。
おかしなグラフのあった記事とは
おかしなグラフが掲載されていたのは産経新聞のこちらの記事。
【解読】共通テスト、いっそなくせば… AI社会生き抜く入試改革を 社会部編集委員・川瀬弘至 - 産経ニュース
ちなみに記事の内容自体は、特段おかしな記事ではないことをしっかり書いておきます。
では、問題のグラフがこちら⇒
(引用)【解読】共通テスト、いっそなくせば… AI社会生き抜く入試改革を 社会部編集委員・川瀬弘至 - 産経ニュース(2019.12.21)
左のグラフがおかしいんですが、どこがおかしいかわかりますか?
グラフの表記がオカシイ
実はグラフの左側の数字がオカシイんです。
このグラフだけしか情報がなければ、日本の読解力が最下位(15位)になったような印象を受けます。
しかし、PISA2018は合計77の国・地域で行われています。
つまり縦軸の一番下の数字は77じゃないとオカシイんです。
産経新聞さんの代わりにグラフを作り直してあげるとこんな感じになります。
全然印象かわるでしょ?
(エクセルでは、下限設定を77にしても71で出ています)
そもそも調査規模が違う
修正したグラフですら、実はオカシイ部分が隠れているんです。
そもそもPISAの調査規模はこのように増えています。
- 2000年 31の国・地域
- 2003年 40の国・地域
- 2006年 57の国・地域
- 2009年 65の国・地域
- 2012年 65の国・地域
- 2015年 70の国・地域
2000年から2018年にかけて「31⇒40⇒57⇒65⇒65⇒70⇒77」と推移していて、調査母数が2000年から倍以上!
30~40の国・地域の時の順位と70以上の時の順位を単純に同じグラフで比較するのが適切でしょうか?
調査対象の国・地域の数を知っているのは教育関係者くらいでしょ。
一般の読者に誤った印象を与えてしまうグラフだと言えます。
(参考)OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント
PISA2018についてはこちらもどうぞ⇒
統計トリックは日常に潜んでいる
今回、産経新聞のグラフを取り上げましたが、別にこれは産経新聞だけの話ではありません。
他の新聞、メディアなどの媒体でも良く見かける手法ですし、広告なんかでも使われる手法です。
エビデンスと叫ばれる昨今ですが、数字やグラフの信ぴょう性について一歩立ち止まる勇気がますます求められているのかもしれませんね。
それでは、また。
今回のグラフトリックは、こちらの書籍に詳しく書かれています。
数式が出てこないから読みやすいですよ。
書評はこちら⇒