RYOSAKASANTO

教育業界にいる陵坂さんが教育・子育て・DWEなどについて書くブログ

ベネッセの学校向け戦略3点から見る大学入試改革


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株式会社ベネッセホールディングス2019年3月期決算説明会(2019年5月10日)の資料を見ました。ベネッセの学校向け戦略は、文科省の大学入試改革と密接に繋がった流れになっていて、今後の教育界の動向を把握するのにとても便利です。

当たり前のことですが、ベネッセは利益を追求する民間企業です。民間企業ですから、それは悪いことではなく、むしろ善です。

その辺の頭の片隅に入れて、読んでいきましょう。今回は、そこから感じたことについて書きたいと思います。

*実際の資料はこちら。

IR資料:https://pdf.irpocket.com/C9783/FMlK/wnJ4/rjyU.pdf

また決算説明会の内容や発言についてはこちらのサイトを拝見いたしました。合わせてご参照ください。

ベネッセ、対前年では増収増益 成長に向けた改革と投資を着実に実行 | LIMO | くらしとお金の経済メディア

ベネッセの戦略

ベネッセは、学校向けに限らず「こどもちゃれんじ」「進研ゼミ」などの通信教育も行っています。今回は学校向けサービスに限って見ていきましょう。

学校向けサービスについて大きく分けて3つの分野があります。それは<グローバル><デジタル><アセスメント>の3つです。

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代表的な「GTEC」「Classi」「進研模試」と言った方がイメージしやすいかもしれません。

この3本柱は、非常に文科省の方向性に沿った内容になっています。

GTECと大学入学共通テスト

まず最初に<グローバル>の部分について言及していきましょう。この中で特筆すべき事業はやはり「GTEC」です。

GTECは、ご存知の通り「大学入学共通テスト」に認定された英語民間試験の一つです。受検者数は126万人。日本国内の英語民間試験としては「英検」と並ぶツートップです。

これまで英語の民間試験は、すべての受験生が受けるようなものではありませんでした。それが、この大学入学共通テストの活用でほぼマストの形に変更となります。つまり今まで受験しなかった高校生も受験するということ。

しかも、英語民間試験の活用は、制度上2回の受験が可能となっています。さらに考えるとぶっつけ本番で受験する受験生がどれほどいるのでしょうか。

本番の2回プラス練習で1回や2回受けることになれば、一人の生徒が3~4回は受験する計算になります。

この辺については以前にも記事にしました⇒

少子化で厳しい教育業界ですが、文科省の英語民間試験の導入のお陰で子どもの数は増えないけれど、お客さんの量は一気に増えるわけです。羨ましいwww

Classiの肝はJAPAN e-Portfolio

Classiとは、ICTによる教育支援サービスです。校内のアンケート集約や動画授業、Webテストなどを使うことができます。

このClassiを高校で導入する理由でよく聞くのは、高大接続改革の一つとして検討されているポートフォリオの機能があるからというものです。

Classi ポートフォリオは、今後の大学入試で必要となる学習記録データの蓄積が可能です。蓄積したデータは高大接続ポータルサイト「JAPAN e-Portfolio」にデータ連携ができます。

(引用)Classi ポートフォリオ | Classi

「JAPAN e-Portfolio」の開発は、関西学院大学なんですが製作協力はベネッセです。もちろんベネッセのClassiには「JAPAN e-Portfolio」の連携機能があります。

「JAPAN e-Portfolio」の是非については以前記事にしたのでこちらをどうぞ⇒ 

大学入試に必要なので、そのツールとしてClassiが導入されていくという流れがあるわけです。

デジタルで支援するClassiの採用校は2,475校です。高校全体で5,000校前後といわれていますので、半分はClassiをご採用いただいています。

(引用) ベネッセ、対前年では増収増益 成長に向けた改革と投資を着実に実行 | LIMO | くらしとお金の経済メディア

すでに国内の半分の高校で採用されているんだから驚きですよね。羨ましいwww

探求ナビという新指導要領の「探求」への対応

高校の新指導要領の実施は2022年度からですが、2019年入学の高校1年生から選考実施されています。その中で選考実施されているのが「総合的な探求の時間」です。

1 総則
高等学校等における移行期間中の教育課程の編成・実施に当たっては,新高等学校学習指導要領第1章の規定のうち,特例告示において移行期間中に適用すべきものとしている事項を踏まえ,その趣旨の実現を図ること。
2 各教科等ごとの特例の概要等
(1)従来の「総合的な学習の時間」を「総合的な探究の時間」に改め,新高等学校学習指導要領によることとしたこと。

(引用)高等学校学習指導要領の改訂に伴う移行措置並びに移行期間中における学習指導等について(通知)‐文部科学省平成30年8月31日

また2022年度から実施される教科のタイトルにも「探求」という文言が加わるものがあります。列挙する以下の6つの科目です。

古典探求、地理探求、日本史探求、世界史探求、理数探求基礎、理数探求。

古典、社会、理数で探求をすることになります。つまり文系・理系問わないということです。

一方で、この探求活動を指導してきた経験のある先生は少ないです。その上、先生自身が探求活動をした経験も少ないというのが現状です。

理系の先生は大学時代に論文を書いた経験もあるでしょうが、文系の先生に至っては大学時代に論文すら書いていないことだってあります。していないことを教えるというのはなかなかハードですよね。

それに対して、ベネッセはしっかり「探求ナビ」というサービスを用意しています。しかも探求活動でアンケートをする際にはClassiのアンケート機能が活用できるという合わせ技も用意されています。

まとめ

わたしは別にベネッセの回し者ではありませんし、ベネッセを称賛するつもりもありません。羨ましいですがwww

実際、ベネッセと文科省を批判する記事も過去に書いています⇒

また今回紹介したベネッセのGTEC、Classi、探求ナビはベネッセ一社しかないサービスではなく、競合他社が存在します。ベネッセ以外にも選択肢が存在しているわけです。

冒頭にも述べましたが、ベネッセのように大手の民間企業の戦略から今後の教育界の動向、重視すべきポイントを読み取ることが出来ます。

 

いち保護者、いち学生、いち教員としてはどういう方向に進みつつあるのか押さえておくことは、様々な選択の場面で有利に働くはずです。そういうわけで今回、ご紹介いたしました。

個別の案件についてはまた記事にしていきたいと思います。それでは、また。