これからの英語教育は4技能5領域だと言われています。この4技能5領域って知っていますか?
今回はその5領域について「小学校英語の目標」をもとに解説していきます。
おそらく2019年4月以降は色々な会社が「これからは5領域だから、大変だぞー」と不安を煽って消費を促そうとしてくるはず。
どうか冷静に判断してくださいね。
4技能5領域とは
4技能5領域のうち、4技能とは「聞く」「読む」「話す」「書く」です。
この「話す」をさらに「話すこと(やりとり)」「話すこと(発表)」の2つに分けたので4技能5領域と言います。
文科省の小学校指導要領の解説には、以下のように書かれています。
中学年の外国語活動では,伝え合う力の素地を「外国語で聞いたり話したりして」と,「聞くこと」,「話すこと[やり取り]」及び「話すこと[発表]」の三つの領域を通して養うこととしている。一方,高学年の外国語科では,「聞くこと」,「読むこと」,「話すこと[やり取り]」,「話すこと[発表]」,「書くこと」の五つの領域を通して養うこととしている。
(引用)小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 外国語活動・外国語編 平成29年7月
つまり以下のように学年に応じて取り組む内容が変わってくるわけです。
- 小学校3~4年生…「聞く」「話す(やり取り)」「話す(発表)」
- 小学校5~6年生…「聞く」「読む」「話す(やり取り)」「話す(発表)」「書く」
この中で、「聞く」「読む」についてはご自身も学校教育で経験があり、イメージしやすいと思います。
そこで「話す(やり取り)」「話す(発表)」「書く」について解説をしていきましょう。
その後で「聞く」「読む」についても解説したいと思います。
まず「話す」における「やり取り」と「発表」についてです。
「やり取り」と「発表」の違い
まず 「やり取り」と「発表」の違いから説明しましょう。
シンプルに言うと「やり取り」は「会話」、「発表」はそのまま「発表」になります。
では本質的な違いが何かというと「即興性の有無」です。
文科省の資料から以下に「やり取り」「発表」を引用してみてみましょう。
「やり取り」については…
ア 基本的な表現を用いて指示,依頼をしたり,それらに応じたりすることができるようにする。
イ 日常生活に関する身近で簡単な事柄について,自分の考えや気持ちなどを,簡単な語句や基本的な表現を用いて伝え合うことができるようにする。
ウ 自分や相手のこと及び身の回りの物に関する事柄について,簡単な語句や基本的な表現を用いてその場で質問をしたり質問に答えたりして,伝え合うことができるようにする。
「発表」について
ア 日常生活に関する身近で簡単な事柄について,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする。
イ 自分のことについて,伝えようとする内容を整理した上で,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする。
ウ 身近で簡単な事柄について,伝えようとする内容を整理した上で,自分の考えや気持ちなどを,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする。
(どちらも引用)小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 外国語活動・外国語編 平成29年7月
そして、この引用箇所の後にこのような文言が「やり取り」において言及されています。
「質問に対してその場で答えたり」,「質問をその場でしたり」する即興的な活動に取り組むことを示している。
「やり取り」の場合、話す側は、何を話そうか考え、文字で書き、覚えて、言う、といいうプロセスを踏みますよね。
これだけだと、実は「発表」と変わりません。
変わるとすれば1~2人に話すのかクラス全員の前で話すかの違いです。
「やり取り」の大きなポイントは質問の場面があることです。
例えば、自己紹介の場合。
名前を言って、サッカーが好きだと伝える。
途中、話し手の児童が「Do you like soccer? 」と質問したり、聞き手の児童が「Why?」と質問したりします。
この質問に対しての 返答って即興になりますよね。
相手がどんな質問をしてくるかわからないし、その質問に対しての返答もまた即興になります。
この即興性の有無が「やり取り」と「発表」の大きな違いになります。
現実的には子ども達の語彙は限られていますし、緊張して質問が思い浮かばないこともあるので事前に「何を質問しようかな?」と考えます。
ですから、実際の授業では、質問項目・解答を含めた丸暗記になってしまいがちです。
ただこの「即興性」の部分が違うということを覚えておけば大丈夫です。
「書く」とはどの程度?
「書く」ことについて指導要領の「目標」ではこのように書かれています。
ア 大文字,小文字を活字体で書くことができるようにする。また,語順を意識しながら音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を書き写すことができるようにする。
イ 自分のことや身近で簡単な事柄について,例文を参考に,音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を用いて書くことができるようにする。
(引用)小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 外国語活動・外国語編 平成29年7月
この目標のポイントをまとめると以下の4点になります。
- アルファベットの大文字、小文字を書けるようにする
- 語順によって意味が変わることを知る
- 音声で十分に慣れ親しんでから簡単な語句を書き写すことができるようにする。
- 音声で十分に慣れ親しんでから例文を参考に書くことができるようにする。
ポイントは、3番目と4番目です。
まとめて説明しますね。
まず4番目の「例文を参考に書く」について。
これだけ読むと結局書かせるんじゃないかー! と思う方もいるかもしれません。
安心してください。
コレ、そんなに沢山書かせるような内容ではありません。
例えば教科書に「I like soccer.」という文章があったとしましょう。
授業では、先生から「soccer」の部分を「自分の好きなもの(スポーツや食べ物)」に変えて書いてみて、と言われるんです。
これが例文を参考にして書くということです。
次にそう言われた児童が「soccer」の部分に「baseball」を書こうとしました。
この時、綴りを覚えなきゃいけないのか、というとそうではありません。
教科書や教材などから「baseball」を探してきて、書き写せば良い。
これが3番目の「簡単な語句を書き写す」ということなんです。
「聞く」とはどの程度
「聞く」という能力自体はイメージしやすいと思うのですが、小学校でどの程度の力が目標とされているのでしょうか。
文部科学省の資料から引用するとこのように書かれています。
ア ゆっくりはっきりと話されれば,自分のことや身近で簡単な事柄について簡単な語句や基本的な表現を聞き取ることができるようにする。
イ ゆっくりはっきりと話されれば,日常生活に関する身近で簡単な事柄について,具体的な情報を聞き取ることができるようにする。
ウ ゆっくりはっきりと話されれば,日常生活に関する身近で簡単な事柄について,短い話の概要を捉えることができるようにする。
(引用)小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 外国語活動・外国語編 平成29年7月
これは小学校5~6年生の目標です。
ポイントは「ゆっくりはっきりと話されれば」の部分です。
ちなみに中学校外国語科の「聞くこと」の目標は「はっきり話されれば」となっています。
つまり小学校高学年ではあくまで、ゆっくりと話された音声がわかれば良いわけです。
学校教育や家庭教育(自宅教材や塾)で英語の歌や音声を聞かせる場面があると思います。
そういう時に子どもがわかってないなー、ついてきてないなーと思ったら音声の速度を落としましょう。
もちろん「ゆっくり」とした音声を聞き取る為のトレーニングとして、「早い音声」を聞かせて慣れさせるという方法は一般的です。
ただし、早い音声にこだわり過ぎてしまうと目的と手段がゴチャゴチャになってしまいますからね。
読むとはどの程度か
最後に「読む」についても指導要領ではどの程度の目標を掲げているのでしょうか。
ア 活字体で書かれた文字を識別し,その読み方を発音することができるようにする。
イ 音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現の意味が分かるようにする。
(引用)小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 外国語活動・外国語編 平成29年7月
これだけ見ると、なんかそこそこ読めるような感じがしますが、そこまでの目標ではありません。
上引用文の「ア」について。
これは例えば、「a」という文字が単体だと「エー」と読むけれど、「cat」という単語になれば「ア」と読みますよね。この違いがわかるようになるということです。
「イ」についても一見難しいように思えてしまいますが、あくまで「十分慣れ親しんだ」という表現を見落とさないようにしてください。
指導要領の解説でも「中学校で発音と綴りとを関連付けて指導することに留意し,小学校では音声と文字とを関連付ける指導に留めることに留意する必要がある」と書かれています。
あくまで音声と文字が関連付けられたら良いというわけです。
英語の絵本をスラスラ読めることを求めているわけではないことを抑えておいてくださいね。
「英語の4技能5領域」のまとめ
最後に小学校の4技能5領域についてポイントをまとめておきましょう。
- 「聞くこと」…ゆっくり話されたことがわかる
- 「読むこと」…音声と文字が関連付けられたら良い
- 「話すこと[やり取り]」…質問の場面があり、即興で返答を行う
- 「話すこと[発表]」…伝えようとする内容を整理した上で発表する
- 「書くこと」…書き写したり、例文を参考して書く
良かったら、こちらの記事もどうぞ。
それでは、また。