どうも陵坂です。あなたは本を読みますか? わたしは月2~4冊というペース。学生時代はもっと読んでいましたが、仕事の繁忙期と子育てが重なる時期はほとんど読めていません。
さて、どうやら大学生の53.1%が本を読まないらしい。全国大学生協連が行っている調査で一日の読書時間が「ゼロ」と答えた学生が上記の数字です。
ちなみに原因はスマホではなく、高校生時代から読書の習慣がないことらしい。
(参考)第53回学生生活実態調査の概要報告|全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)
本をおススメするのはとても難しいことです。
なぜかというとジャンルが多岐にわたり、その上、オススメする人の趣味嗜好によっても読んで良かった思う本が違うからです。
柄谷行人の「意味という病」なんて薦めても読書に興味すらない人は、表紙を見ただけで逃げ出すと思うし、シェイクスピアの「ハムレット」を薦めても「古くさ」と思うだけだよね。
読書をしない人でも、もしかすると漫画や映画なら見ているかもしれません。そこであの漫画、あの映画が好きならこういう本を読んでみては? という切り口で本を紹介してみたいと思います。
というわけで、目次から自分が好きなジャンルを選んでみてください。
- ミステリー漫画・映画が好きな人にオススメする小説
- 格闘漫画・映画が好きな人にオススメする小説
- ハードボイルド漫画・映画が好きな人にオススメする小説
- 恋愛漫画・映画が好きな人にオススメする小説
- スポーツ漫画・映画が好きな人にオススメする小説
- ファンタジー漫画・映画が好きな人にオススメする小説
- ギャグ漫画・コメディ映画が好きな人にオススメする小説
- 歴史漫画・映画が好きな人にオススメする小説
- 軍事漫画・映画が好きな人にオススメする小説
- ホラー漫画・映画が好きな人にオススメする小説
- タイムパラドックス系の漫画・映画が好きな人にオススメする小説
- 落ち込む系の漫画・映画が好きな人にオススメする小説
- 輪廻転生系の漫画・映画が好きな人にオススメする小説
- さいごに
ミステリー漫画・映画が好きな人にオススメする小説
例えば「名探偵コナン」「金田一少年の事件簿」が好きなあなたにオススメするのはこちらの小説。
「Xの悲劇」(エラリー・クイーン)
本格ミステリーの名作と呼ばれるこちら。元俳優のレーンが探偵役を務めて謎解きをするシリーズの第一作です。このシリーズは「Xの悲劇」から始まり、「Yの悲劇」「Zの悲劇」「レーン最後の事件」の4巻で終わります。
もちろんこの1冊だけでもミステリーとして内容は完結しているので、まず最初に1冊だけという読み方もできます。
ただ一気に4冊読むと、人に話せずにはおられない衝撃的な読書体験ができます。なので可能ならシリーズを通して読みましょう。
さて、この「Xの悲劇」ですが、なぜ「X」なのか。この部分の仕掛けにわたしは感動しました。冒頭のある1シーンで「X」の呼称をすることになるのですが、その理由がミステリー的に素晴らしい。
これに興味を持ってもらえればエラリー・クイーンの「国名シリーズ」やカー、アガサ・クリスティらの作品、コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」など、国内なら綾辻行人の「館シリーズ」、有栖川有栖の「江神二郎シリーズ」などのミステリー小説を読んでみてはいかがでしょうか。
とりあえず1冊だけミステリー小説を読んでみようという方にこの「Xの悲劇」は胸を張ってオススメできる小説です。
絶対後悔させないよ。
格闘漫画・映画が好きな人にオススメする小説
例えば「グラップラー刃牙」「修羅の門」が好きなあなたにオススメするのはコチラの小説。
「獅子の門」(夢枕獏)全8巻
太極拳、空手、柔道、ブラジリアン柔術と幅広い格闘家が登場する本書。
バトルシーンも多く、頭の中で動きを描きながら楽しむことができます。個性的なメインの少年たちの誰か一人に男なら必ず、自分を重ね合わせて共鳴できるはず。
格闘漫画好きの人にとっては小説よりも漫画の方が迫力があるはずと否定的な方もいるかもしれません。もちろん行動の描写によるバトルシーンもあるのですが、見どころはそこだけではありません。
心象風景と格闘を組み合わせた表現があり、まさに小説でしか味わえない格闘描写がここにはあります。ぜひ自分で読んでご確認ください。
新装版の挿絵をグラップラー刃牙の板垣恵介さんが担当していることもあり、上記漫画が好きな方には親しみやすい本です。夢枕獏さんの独特の語り口もあり、読みやすい小説ですよ。
長編でも良ければ「餓狼伝」シリーズ(夢枕獏)もオススメです。
ハードボイルド漫画・映画が好きな人にオススメする小説
例えば「007シリーズ」「ブラックラグーン」が好きなあなたにオススメするのはこちらの小説。
「ゴーストマン 時限紙幣」(ロジャー・ホッブス)
1巻完結の本書。続編に「ゴーストマン 消滅遊戯」がありますが、それ以上の続きはありません。
なぜなら著者はもうこの世にはいないから。
著者ロジャー・ホッブスはこの「時限紙幣」でデビューし、当時25歳でありながら英米のミステリー賞を総なめにしました。
訳者のあとがきによると「時限紙幣」は発刊前から高額で映画化権が売れたと書かれています。(残念ながらわたしの知る限りまだ映画化はされていません。)
映画化自体が流れることは出版界では日常茶飯事なので珍しいことではないですが、本書をハリウッドの一流のアクション表現によって映像化されないのは悲劇と言って良いと思います。
さて、前書きが長くなりましたが、本書はクライムノベルとして圧倒的に面白い!
カジノのホテルに運び込まれそうになった大金が強盗にあう。犯罪の始末人である主人公は、強盗犯を負い、金を奪還する仕事を命じられる。
制限時間は48時間。犯罪の痕跡を消し、犯人を消し、自分自身を消す主人公の能力。これがまたとっても魅力的なのである。
この小説はぜひ読んで欲しい。
恋愛漫画・映画が好きな人にオススメする小説
「プリズム」(百田尚樹)
説明不要の人気作家百田尚樹の恋愛小説。ある女性が多重人格の青年と不倫するストーリー。
「多重人格」と「不倫」というキーワードだけでも単なる恋愛モノではなく、葛藤と苦悩を抱えながらそれでも自分の気持ちを抑えきれない人間の姿が思い浮かぶかと思います。
ラストシーンがハッピーになるわけないってわかりながら、どんどん読んでしまう文章とストーリー構成。結末はぜひ、読んで頂いて自分の目でご確認ください。
ライトノベルでカワイイ女性キャラクターが表紙だけど文学的なアプローチのある「やはり俺の青春ラブコメは間違っている」シリーズ(渡航)もオススメです。
スポーツ漫画・映画が好きな人にオススメする小説
例えば「スラムダンク」「キャプテン翼」が好きなあなたにオススメするのはこちらの小説。
「龍時」(野沢尚)全3巻
「日本初の本格サッカー小説」と銘打たれた本作は、その通り主人公リュウジがU-16の代表候補に選ばれ、スペインリーグへと渡っていくストーリー。
舞台はもう15年以上前だが、今、読んでも色あせることのないサッカー描写と日本と世界の壁が描かれています。
2018年ワールドカップの日本対ベルギー戦で感じた世界との壁。じゃあ、その壁って具体的になんなのか。そういうことのヒントが読み取れると思います。
こちらも作者が亡くなられた為、未完となっていますが1冊ずつで話は完結しているので安心で読んでください。
ファンタジー漫画・映画が好きな人にオススメする小説
例えば「ベルセルク」が好きなあなたにオススメするのはこちらの小説。
「上弦の月を喰べる獅子」(夢枕獏)全2巻
螺旋に魅入られた二人の男性が、螺旋階段を上る。目が覚めると男は海岸に居た。男は突き動かされるように山を登っていく。
仏教的観念を元に進化、宇宙、人とは何かについて描いていく。
宮沢賢治、仏とは何かを問う螺旋問答。様々な仕掛けを用いながら「野に咲く花は問うであろうか」という言葉が胸に響く。
こう書くとなんとも哲学的な雰囲気が出てしまいますが、そのストーリーは愛憎の渦巻く人間的なものになっています。
嫉妬の青い炎が燃え盛るさまがわたしの夢枕作品の好きな要素の一つに間違いないのだと改めて感じさせてくれる1冊。ぜひ読んでみて下さい。
ギャグ漫画・コメディ映画が好きな人にオススメする小説
「三島由紀夫レター教室」(三島由紀夫)
レター教室というタイトルですが、手紙の書き方を手取り足取り教えてくれる本ではありません。
5人の登場人物たちがかわるがわる手紙を出すことで物語が転がっていく小説です。文章は手紙文だけ。その中で彼ら5人は恋をしたり、借金を申し込んだり、憎み合ったり。
くすりと頬を緩めながら読める1冊です。
三島由紀夫の文章は、固い、ハードルが高いと思われがちですが。この小説では手紙文しかありませんからとても読みやすい文章になっています。
最後の「作者から読者への手紙」がオチになっていますから忘れず、そちらまでどうぞ。
歴史漫画・映画が好きな人にオススメする小説
例えば「龍師の翼」「墨攻」が好きなあなたにオススメするのはこちらの小説。
「燃えよ剣」(司馬遼太郎)全2巻
いわずとしれた幕末の志士、新選組の副長土方歳三を描いた小説。
司馬史観とも言われる歴史描写や新選組をはじめとする登場人物も面白い要素ですが、個人的にはやはり土方歳三という男の圧倒的な魅力でしょう。
冒頭の「脛切り」のアクションシーンも文章から躍動感がありますし、そのことを喜々として語るシーンは読者をワクワクさせてくれます。
司馬遼太郎をまず読むならこの1冊からどうぞ。
軍事漫画・映画が好きな人にオススメする小説
例えば「沈黙の戦艦」「ジパング」が好きなあなたにオススメするのはこちらの小説。
「ジェノサイド」(高野和明)全2巻
主人公は2人。
特殊部隊出身の傭兵のイエーガーに与えられた任務はコンゴのジャングル地帯に潜入することだった。
大学院生の古賀研人は急死した父の葬儀から研究室に戻ると一本のメールが届く。それは死後5日も経ってから送られた父からメールだった。
二人の主人公のストーリーが同時進行で進んでいきます。先が気になってページを捲る手が止まらない面白さです。
「人類の脅威となる未知なる生物」という想像すら難しいものを描いた小説。
SFってぽい部分もありますが、ベースはしっかりとした軍事・政治を押さえたものなのでご安心を!
ホラー漫画・映画が好きな人にオススメする小説
「殺戮にいたる病」(我孫子武丸)
猟奇殺人を繰り返すサイコキラー、その犯人の名は蒲生稔。冒頭は犯人である稔が逮捕されるところからスタート。物語はそこから時間軸を遡って、最初の殺人をするところから描かれます。
宣伝文句にもあるように凌辱と殺戮がグロテスクに描かれ、目を背けながらもドンドン読み進めてしまいます。
ミステリー好きには有名な本書。冒頭で犯人がわかっているのにどうしてミステリーなのか? そこが気になった方はぜひ自分の目で読んでご確認ください。
タイムパラドックス系の漫画・映画が好きな人にオススメする小説
例えば「バック・トゥ・ザ・フューチャー」などが好きなあなたにオススメするのはこちらの小説。
「涼宮ハルヒの憂鬱」シリーズ(谷川流)既刊11巻
「東中出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上。」というヒロイン涼宮ハルヒの台詞を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。
一時代をつくった作品ですから、アニメのキャラクターくらいは興味のない人でも見たことがあると思います。可愛らしいキャラクターに目が生きがちですが、本書はガチのタイムパラドックス系小説です。
いわゆるラノベ(ライトノベル)というジャンルで興味のない人はスルーしがちかもしれませんが、キッチリとタイムパラドックスものとして成立しています。もちろん文体も読みやすいので、読書が苦手な人も読みやすいと思いますよ。
小説とは関係ないけれどアニメなら「シュタインズ・ゲート」もオススメです。
落ち込む系の漫画・映画が好きな人にオススメする小説
例えば「ヤサシイワタシ」(ひぐちアサ)のような読後感に影が落ちるような、心の奥を深くえぐって消えない傷を残すような、でも最後にほんの少しだけ光が差すような、そんな作品が好きな方にオススメする小説。
「ストレンジ・デイズ」(村上龍)全1巻
自分に自信を失った反町は天才的な演技力をもつ女性ジュンコに出会う。物語は最初、右へ左へふらつきながら徐々にスピードをあげていく。
終盤、反町はジュンコを女優にするためにある決断をする。その決断は、圧倒的憂鬱と圧倒的無力感を反町に、そして読者に投げかける。
凹んでもう無理、何もする気がおきない。そんな時にダメ押しとして読んでほしい1冊。この本で地の底まで落ちてしまえば、あとは微かな光だって希望に見えてくるはず。
あと毛色が違うものを上げると「狂人日記」(色川武大)全1巻もオススメです。こちらも読後、虚無感に襲われるでしょう。 但し
、希望があるかは保証しません。
輪廻転生系の漫画・映画が好きな人にオススメする小説
例えば「僕の地球を守って」などが好きなあなたにオススメするのはこちらの小説。
「豊穣の海」シリーズ(三島由紀夫)全4巻
ジャンルでおわかりの通りこの物語は輪廻転生のお話です。
一巻「春の雪」では主人公、松枝清顕と綾倉聡子の結ばれることのない恋の話。松枝は親友である本多繁邦に「又、会うぜ。きっと会う。滝の下で」そう言い残して20歳で死んでしまう。
二巻「奔馬」では、松枝の生まれ変わりである飯沼勲に本多は滝の下で出会う。飯沼は腐敗した政治・社会を改革しようとテロを企てる。彼も20歳で死んでしまう。
三巻「暁の寺」では、日本人の生まれ変わりと訴えるジン・ジャンというタイの姫に本多は出会う。彼女もまた20歳で死んでしまう。
四巻「天人五衰」では、本多はジン・ジャンの生まれ変わりと思われる安永透に出会い、彼を養子に迎え入れる。
このように1巻では18歳だった松枝の親友本多が、松枝の生まれ変わりと出会い死別し、最終巻の4巻では76歳になっています。これは生まれ変わる松枝の物語であり、本多の物語でもあります。
松枝自身・松枝の生まれ変わり達の生きざま。そして、生まれ変わりに気付き、いずれも20歳で亡くなる事実に接しなければならない本多の心情に読者は触れます。最終巻、聡子から告げられる言葉に本多と共にあなたは絶句することになるでしょう。
色々な解釈もある本書。作者三島由紀夫は最終巻の入稿日に市ヶ谷駐屯地で割腹自殺して亡くなっています。
蛇足ですが、わたしは読書する時に気になったページに付箋を貼るんですが、この4冊には数えきれないくらい付箋を貼っています。ふとした時に読み返し、ペラペラと本を捲っては当時、どういう心境・理由で付箋を貼ったのか思い返します。
きっと今後も読み返し続ける作品になるでしょう。
さいごに
ジャンルから考えた個人的なオススメです。そもそもこの小説はこのジャンルじゃないだろーと思われる方もいるかも。
でも、小説の面白さをどう感じるかって人それぞれ。
探偵小説でよくあるホームズ(探偵役)とワトソン(助手)だって、ある人にとってはキャラクター小説のような楽しみ方だってあるはずでしょ。
逆にいえば、ジャンル分けはわたしが感じた面白いポイントでもあるわけです。わたし感じた小説の魅力があなたにとって少しでも参考になれば幸いです。
あと、読書をあまりしない人向けに漫画や映画からオススメの小説を挙げましたが、文章量・文体が読みやすいかどうかは考慮していません。
読書が苦手な人でも自分の好きな話や興味を持ったものなら結構読めるもんだとわたしは思っていますし、読むのが辛かったら途中でやめちゃって良いと思います。
挫折したとしても自己嫌悪に陥る必要はありません。
読書に「合う」・「合わない」は絶対あります。
合わない本を読み切ったところでメリットは堂々と悪口が言える、くらいですから無理に読み切らず、そんな時間があったら次の本を読みはじめるか、漫画や映画を鑑賞しましょう。
そこから自分なりに感じることがあったり、考えられることが得られれば、実は触れる媒体なんてなんでも良いんですよ。
小説を薦めるのは文字だから、そういうのに向いている作品が多くて効率的なだけですから。じゃあ、また。