少し前のニュースですが、2018年6月4日、政府の「骨太の方針」の原案において高等教育(大学)の負担を軽減する内容が公表されました。財源は2019年9月に予定されている消費税増税分などで賄うようです。2020年度からの実施となります。
平成30年第8回経済財政諮問会議の資料
「骨太の方針」の原案となる資料が公開されたのはこの第8回経済財政諮問会議です。議事録で8ページ、公開された資料は73ページとなかなか膨大な量となっております。
リンクはこちら。
第8回会議資料 平成30年 会議結果- 経済財政諮問会議 - 内閣府
読む気おきねー、って感じですが斜め読みで眺めるだけでもどういうことを国が大事だと考えているか掴めるので時間のある方にはオススメ。
議事録だけもSDGs、STEM人材、インバウンド4000万人時代などなどキーワードが出てくる内容になっています。
高校生の課題研究のテーマ探しや論文対策の一つとしてこういう資料を読むのも1つの手です。
テーマ探しとしてはまさに「国の課題」が並んでいるわけですからネタの宝庫ともいえるわけです。
また「わからない・知らない言葉」を調べ、興味をもつことで知識の裾野が広がります。大人でもこれらの単語をしっかり説明できるかというと自信がある人は少数派でしょうからね。
新聞報道を見てみよう
では、高等教育無償化についてはどう書かれているのか。
朝日新聞の記事がコンパクトにまとまっていたのでこちらから引用します。
主な支援対象は年収270万円未満の住民税非課税世帯。国立大に通う場合、授業料(年約54万円)を全額免除し、私立大の場合は一定額を上乗せし、70万円ほどを減額する。給付型奨学金には通学費や課外活動費、自宅外生の住宅費などが含まれ、私大に通う自宅外生なら総額年100万円規模になると想定される。
(引用)低所得層の学生、国立大の授業料を全額免除へ 政府方針
低所得層の学生、国立大の授業料を全額免除へ 政府方針:朝日新聞デジタル
「通学費」「自宅外生の住宅費」なども含まれているのは大切です。
以前の記事でも書きましたが、例えば文系で良い大学がある地域は非常に限られているわけです。だから「住宅費」という下宿代の補助ってかなり重要なんですよね。www.ryosaka.com
課題は何か
まず考えられる課題は何か? 大きな課題は以下の2点でしょう。
- 財源
- 学力
財源について
財源については新聞報道から消費税増税分からと書かれています。おそらく財務省の方便でしょうね。財務省の消費税増税が悲願なのはご承知の通り。また安倍総理が消費税増税に慎重なのもまたご承知の通りだと思います。
消費税増税の是非は、専門家でも意見がわかれるところ。財務省としては「教育のため」という「反対されにくい使い道」を用意して世論や総理を説得したいのでしょうか。
本当に消費税増税がなされるのか。なされなかった場合の財源はどうするのか。そういう意味で課題といえるでしょう。
また無償化の支援対象がこの年収層で適切なのかという部分も課題です。繰り返しになりますが、勉強熱心な学生ほど下宿となる可能性が高まるのが現状です。
下宿を想定した時に年収500万円の家庭でも、地方から東京に一人暮らしの子ども生活費、授業料に加えて、当然ご家族の生活費もあるわけでこれらの出費が耐えられるとは思いません。
30代の貯蓄の中央値は130万円、貯蓄のない世帯は34.2%に及びます。晩婚化を考えればこの世代が結婚し、50代になる頃に子どもが大学進学となるわけです。
学資保険や毎月の貯蓄をしていない自己責任だと言えばそれまでですが、教育の機会平等を考えれば、もう少し検討の余地はあるのかなと感じます。
(参考)みんないくら貯めている?平均貯蓄額は? [預金・貯金] All About
学力について
「教育のため」と言われて税金を投入するわけですから「大学で遊ぶだけ」になられたら意味がありません。もちろん大学時代をどう過ごすかは個人の自由です。
有名大学であっても合格したら「そこでおしまい、4年間テキトーに講義に出て単位を取って遊べばいい」みたいな考え方の学生と貴重な4年間のモラトリアムを様々なチャレンジに使う学生では大きな差が出ます。
そういった背景もあり、無償化対象の学生については「成績上位層であること」などを求める意見もあります。
これに対してわたしの考えは少し違います。
無償化など関係なく「一律して卒業を難しくする」ことで対応すれば良いという考えです。社会的課題として「大学を卒業したとしても知識・能力に担保がない」ということがあります。
例えば、経済学部を卒業したのにマクロ経済、ミクロ経済がわからない学生が多い、というようなことです。こういったことは経済学部に限らず、他学部でも多いと思います。
わたしは別に成績上位層であることは求めませんが、在学中に身に付けるべきものはしっかり身に付けてねという考えです。
そして、それを無償化対象の学生にだけ課すのも変な話なので、全員一律して課してしまえば良いんでではないでしょうか。
まとめ
・骨太の方針が発表
・無償化の財源は、消費税増税分
・課題は、財源と学力
ご自分のお子さんの年齢や住む場所によっても捉え方の違う問題だと思います。
勉強したい学生には、環境に関わらず勉強をさせてあげたいです。じゃあ、また。