陵坂と考察と

教育関係会社員が教育を中心に考えたこと、思ったことを書きます。

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AO入試が増加するワケ

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Photo by Nathan Dumlao on Unsplash

今回は大学受験について。

AO入試での合格者を30%に増やす方向性が国立大学協会から出されています。

「ははーん、少子化で学生も減ってるし受験生確保のためでしょ」と思われた方もいるかもしれません。確かに「受験」と「学生確保」は密接なつながりがあります。どんな学力の学生でも良いから人を集めたい。大学によってはそういうところもあるかもしれません。

しかし、本当の狙いは少し違います。

どうしてAO入試が増えるのか。それによって受験生は何を求められ、どういう努力をすべきなのか。

結論を言うと「優秀な学生が欲しいからAO入試を増やす」とうわけなんです。

AO入試の現在の状況

まずは大学を取り巻く背景を見ていきましょう。

最初は、冒頭に紹介したように国立大学協会の方針としてAO入試を増やすという事実から確認しておきましょう。f:id:ryosaka:20180611232900j:plain

(引用)平成32年度以降の国立大学の入学者選抜制度 -国立大学協会の基本方針-」

このようにしっかり30%にしていくと書かれています。つまり約3分の1はAO入試にしたいわけです。

次に平成30年度のAO入試の導入状況です。パーセントについては文科省のWEBサイトで紹介されています。

1 アドミッション・オフィス(AO)入試(注1)実施大学・学部数

国公立全体  85大学〔50.3%〕 240学部〔40.5%〕(79大学〔47.0%〕 213学部〔36.8%〕)

   国立  56大学〔68.3%〕 192学部〔48.1%〕(53大学〔64.6%〕 177学部〔44.6%〕)

   公立  29大学〔33.3%〕  48学部〔24.9%〕(26大学〔30.2%〕  36学部〔19.8%〕)

(引用)平成30年度国公立大学入学者選抜について:文部科学省

こちらの資料では入学者数はわかりません。参考までに前年の29年度のAO入試の入学者数を調べると9.1%だったということが旺文社さんの資料からわかります。f:id:ryosaka:20180611233142j:plain

(引用)29年度「推薦・AO」入学者、 過去最高の“44.3%”!

これは私大も含んだ数字です。国立大だけならAO入試、推薦入試の合計が15.5%。公立大だけなら合計26.8%となっています。

現在は私立大学がかなりAO入試、推薦入試をしていることがわかりますが、国公立大学もその水準を目指すことになります。

そもそもなぜAO入試を増やす必要があるのでしょうか?

大学の立場から考える

AO入試の拡大は国公立大学に限らず、私立大学も積極的です。早稲田大学・慶応義塾大学も同様です。

では、今度は大学の立場から考えてみましょう。

実は今、大学界隈で悩みとなっているのが「論文」です。

「論文」は大学の大きな役割の一つである「研究」の結果そのものです。そして、大学の評価にも「論文」は使われます。

今、放映されているTBSテレビのドラマ「ブラック・ペアン」でも「論文のインパクトファクター」なんて言葉が出てきますよね。

それ以外にも新聞、ニュースで聞いたことがあると思いますが、「世界大学ランキング」みたいな奴のことです。 

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(引用)インパクトの高い論文数分析による日本の研究機関ランキング 2018年版を発表 クラリベイト・アナリティクス2018年4月19日 - クラリベイト・アナリティクス

このランキングでは論文の被引用数が要素となっています。

優れた論文ほどより多くの引用をされるはず。そう考えると作成した論文が他の論文に数多く引用されていればその大学は凄いよねって理屈でランキングにしているわけです。

(もちろんこの評価の仕方が適切かどうかについては意見がわかれます。ただここの本題はそこではないので割愛します。)

色々例示をしましたが、とにかくここでは「論文」が大事だということをわかってもらえればOKです。

そして、わたしが言いたいことは「インパクトファクターだろうが、被引用数だろうが、そもそも論文が作成されなければお話しにならない」ってことです。

日本の論文の推移

そもそも論文が作成されなければ、良し悪しも被引用数も関係ないわけですが、じゃあ、論文数がどのように推移しているかというとこちら。 

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(引用)日本の科学研究力の現状と課題 - 文部科学省

どちらの資料を見ても青いグラフの大学が横ばいなのがわかると思います。

この資料は国内だけの数字ですが、他国と比較したものを見ると主要な国の中で日本だけ現状維持ないし減少傾向だということが読み取ることができます。

これを大学側はなんとかしたい。

つまり「論文」を書ける、書きたい学生が欲しいというのが大学側の実情なわけです。

じゃあ、どうやって論文を書ける学生を集めるのか? その為にはそういう入試にする必要があります。しかし、大規模な入試改革は大学組織としても、また受験生・保護者のことを考えても現実的ではありません。

そうなると既にあるAO入試の試験内容から「論文」を書けるのか、研究者としての資質があるのかを見抜き、そういう学生を入学させる方が大学にとっても学生にとっても合理的なわけです。

AO入試・推薦入試がどう変わりつつあるかはこちらをどうぞ。 

www.ryosaka.com

以前の記事から簡単に紹介すると

・一部の学校ではAO入試の内容が変わっている

・かなり難度の高い論文試験や高校時代の研究成果が求められる

・課題研究など高校時代から蓄積した経験の有無が有利不利に大きく分かれる

という点が挙げられます。

蛇足…AO入試合格者の実力って?

AO入試が出来た頃はバカな学生の救済措置のように受け取られることが多かったと思いますし、そのイメージをお持ちの方も多いと思います。実際、以前の記事でも紹介したように過去、AO入試で入学した学生の傾向として、通常の入試で合格した学生よりも劣る傾向がありました。

ただAO入試の試験内容の変化もあり、少しずつ風向きが変わりつつあります。これは数字ベースではなく、コメントレベルですがこのような情報もあります。

早稲田大学広報課によると、各入試での入学者数や学部による違いはあるものの、「入試形態別で入学者のGPAを調査すると、本学の学部全体で最も成績が良い層はAO型入試・指定校推薦入試で入学した学生である」という。同大学におけるAO・推薦入試入学者が、一定の学力を持っていることを示す一例といえる。

「京都大学の山極壽一総長は、京大は研究者を養成するのがミッションだと言っています。研究者に必要な志を見るために、高校時代の学業活動報告書や大学入学後の学びの設計書を提出させ、面接をしているのです」(小林氏)

(引用)早慶生の4割強が「AO・推薦」となるワケ | プレジデントオンライン

AO入試なんかしているから学生が劣化しているんだ、なんてことは言えない時代になりつつあるのかもしれませんね。

 まとめ

1.大学は「論文」数が減っていることを課題に感じている

2.大学は「論文」を書ける学生が欲しい

3.その為、「論文」や「研究」の能力を問う入試に変化させたい

4.AO入試の質を変えて、「論文」「研究能力」を問うものに変えよう

5.その結果:論文を書ける学生を増やす⇒AO入試による入学者を30%に引き上げ目標となった

当然、これは大きな枠組みの流れであって、冒頭にも書いたようにただただ学生確保のAO入試もあると思います。ただトップクラスの国公立大学、私立大学がAO入試で確保したい学生像は「論文を書ける学生」「研究のできる学生」です。

受験生やその親としては昔のままのAO入試のイメージを引きずると勿体無いってことを押さえてもらって、志望校の大学がどう考えているのか、簡単にできる範囲からお調べすることをおススメします。じゃあ、また。 

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