今回は教科書の話。先日の2018年5月25日に参院本会議で改正学校教育法が全会一致で可決しました。こちらのニュースについて私見を述べたいと思います。
結論から言えば、タイトル通り「下がるんじゃね?」というものです。
まずニュースの確認!
どこの新聞記事でも良いのですが日本経済新聞さんの記事から引用します。
利用できる「デジタル教科書」を正式な教科書と同様に使えるよう認める改正学校教育法が25日、参院本会議で全会一致で可決、成立した。(中略)デジタル版は紙の教科書と同じ内容だが、音声や動画も扱えるため、特に英語や理科での理解促進につながるとの見方がある。また、文字の拡大や読み上げ機能を利用すれば、障害がある児童生徒の学習にも効果が期待できる。(中略)
小中学校の紙の教科書は無償だが、デジタル版は無償としないため、自治体の方針によっては、保護者の費用負担が生じる可能性もある。
(引用)デジタル教科書を認定 改正学校教育法が成立 :日本経済新聞
非常にコンパクトに要点がまとめられています。
ちなみに文部科学省の資料ではこのような<趣旨>が述べられています。
平成32年度から実施される新学習指導要領を踏まえた「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善や、障害等により教科書を使用して学習することが困難な児童生徒の学習上の支援のため、必要に応じて「デジタル教科書」を通常の紙の教科書に代えて使用することができる(併用制※ ) よう、所要の措置を講ずる。
デジタル教科書の価格
紙の教科書は税金によって無償となっていますが、デジタル教科書はそうなりません。実際、どれくらいの価格で現在は販売されているのでしょうか。参考に教科書会社さんの中でシェアトップ、多くの教科書を発刊されている東京書籍さんの国語について調べてみました。
小学校 国語
小学校 デジタル教科書 新編 新しい国語 全学年セット 指導者用+学習者用セット 本体 470,000円(税別)
小学校デジタル教科書 新編 新しい国語 1年 指導者用 Web配信 1年間 本体 20,000円(税別)
小学校デジタル教科書 新編 新しい国語 1年 指導者+学習者 Web配信 1年間 本体 40,000円(税別)
算数についても基本的に値段の構成は同じようです。理科・社会など3~6年生の4年間の教科については当然その冊数に応じてお安くなっています。具体的な理科(社会も同額)の価格は下記の通り。
デジタル教科書 新編 新しい理科 学校フリーライセンス 全学年セット本体 250,000円(税別)
デジタル教科書 新編 新しい理科 指導者+学習者 学校フリーライセンス 全学年セット 本体 320,000円(税別)
(参考)https://www.tokyo-shoseki.co.jp/
もし導入したらどれくらいの費用なのか
今回の改正は基本的に「学習者用」についての範囲なので東京書籍の場合のお値段は「指導者+学習者セット」が参考になると思います。つまり47万円です。
(補足)国語では校内ライセンスフリーの文字がありませんでしたが、他教科ではあったのでおそらく「指導者+学習者セット」の全学年版を1つ購入するれば大丈夫ということでしょう。(詳しくは東京書籍さんにお問い合わせください)
指導者用(先生用)のみの販売が37万円なので学習者用(生徒用)は実質10万円ということになります。
国・算・社・理の主要4教科に導入するとすれば学習者用の負担は34万円となります。(国・算各10万円、社・理各7万円の負担)
デジタル教科書は無償ではないため、各学校のある自治体によっては保護者負担の有無がかわります。仮に保護者負担となればこの34万円を使用する児童数で割った金額が保護者の負担となります。
各学年80人の学校だとすると国語は10万円÷480人=208.3円。算数も同額となります。
社会は7万円÷320人=218.8円。理科も同額となります。
合計すると854.2円です。
この約855円を小学校6年間に一度だけ払えば良い計算になります。
いかがでしょうか。想像より安い価格だったんじゃないでしょうか。
ちなみにこれは東京書籍さんが校内ライセンスフリーという方式にしてくれているからです。そうじゃない会社だと一人につき、お値段がかかります。
例えば国語の雄、光村図書さんだと国語のデジタル教科書のお値段は「各学年 1,500円/端末(1年間)」。
算数の雄、啓林館さんだと算数のデジタル教科書は「価格 各学年 【1~9本の一括購入の場合】1本あたり 3,500円(税別) 【同一商品を10本以上の一括購入の場合】1本あたり 2,500円(税別)」となっています。
理科の雄、大日本図書さんに至っては理科のデジタル教科書を販売していませんでした。
価格については大きな差がありますよね。仮に国語・算数が光村図書、啓林館だった場合は小学校6年間で毎年4000円の費用が保護者負担になるかもしれないわけです。
ただデジタル教科書は映像、アニメーション、シミュレーションなどの付加価値があり、各社が工夫をしている部分でもあるはず。単純に安ければ良い、高いのは不当だというわけでもないはずです。
(参考)商品情報 | 学習者用デジタル教科書 平成27年度版小学校国語 | 小学校デジタル教科書 | デジタル教材 | 光村図書出版
今後の予想
法改正がされたことでデジタル教科書の導入は更に進むはずです。そのことの善悪はともかく自治体・保護者の負担はこれまで見てきたような金額になります。
そこで焦点となるのが次に新学習指導要領が全面実施される際の教科書採択です。自治体としては出来るだけ費用を抑えたデジタル教科書を用意している会社の教科書の方が良いですよね。
自治体負担にせよ保護者負担にするにせよ、安価に済む方が良いはず。教科書内容で優劣がはっきりしない場合は、このデジタル教科書の価格と内容で教科書を選ぶ場面が出てくるかもしれません。
おそらく教科書会社各社もこのことは痛いほどわかっているはずだから、全体的に今より下げる方向になるじゃないかな、と予想します。
そもそも今、学習者用のデジタル教科書がない会社は作るところから検討しているんでしょうね。じゃあ、また。