どうも、教育関係会社員のりょうさかさんです。
現在大人の方で小学生時代に「自由研究」に熱心に取り組んだ方がどれだけいるでしょうか。
わたしはいつも夏休み終了直前に駆け込みで終わらせていました。
2022年度の高校のカリキュラムから「総合的な探究の時間」が開始されました。
「総合的な探究の時間」では「探究活動」「課題研究」といった取り組みが行われます。
「自由研究」はこの「総合的な探究の時間」に繋がる大事な取り組みなんです。
課題研究とは
「課題研究」については「高等学校学習指導要領 平成21年3月」において一部教科の目標として以下のような文章が掲げられています。
課題を設定し,その課題の解決を図る学習を通して,専門的な知識と技術の深化,総合化を図るとともに,問題解決の能力や自発的,創造的な学習態度を育てる。
しかし、親御さん、生徒さんの立場で言えばそもそも課題研究って何なのか? 何をすれば良いの? という部分で引っ掛かるのではないでしょうか。
私なりには「自分で課題を設定し、それを先行の研究と自身の思考・発想で解決し、社会貢献を目指すもの」とこの記事では定義してみたいと思います。
「課題研究」はそれこそ1年以上かけて製作することも多く、目標としても課題解決を目指すものなのでハードルは高いです。
また「課題研究」の一つ手前の「自由研究」を出来ないことにはその先に進むことができません。
しかし、案外「自由研究」を書くのも難しかったりしますよね。
そこで今回のターゲットは「課題研究」の手前となる「自由研究」について「どう取り組んでみたら良いのかわからない」を通りこして「なんでも良いからサンプルを見てみたい」という状況の生徒さんが少しでも為になればと思い書いてみましたよ。
自由研究の例
今回は自由研究の例として「2040年の高校野球地方予選の最小試合数は何試合か」というタイトルで書いてみました。
レベルとしては中学生レベルですが、あくまで私なりにこういう手順の踏み方はどうですか、という実践記録のようなものになります。
この書式や文体をこのまま提出したらクソミソに叩かれてしまうので注意してくださいね(笑)
では、はじまりはじまり~。
自由研究「2040年の高校野球地方予選の最小試合数は何試合か」
河合雅司氏の「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」を読みました。
これがメチャクチャ面白い本です。
人口推計は非常に正確だと言われています。
そんな人口推計をもとに未来に起こるであろう出来事を解き明かしていく本書。
その中でこんな一節がありました。
地方予選は「一回戦が、いきなり決勝戦」というのも笑い話で済まなくなるかもしれない。
いずれあるかもしれない未来、それがいつ来てしまうのか、気になってしまいました。
そこで、現在公開されているデータを元に「2040年の高校野球地方予選で一番少ない予選試合数」がどこの都道府県で何試合なのか考えてみました。
ちなみに、なぜ2040年なのかというと公開されている人口推計が2040年までだからです。
では、仮説を立ててみたいと思います。
仮説:地方予選一回戦即決勝は、一番人口の少ない県ならありえるのではないか。
2つの前提を設定したいと思います。
前提1・野球人気が極端に増えたり減ったりしない。
これを設定しておかないと人口が減っても「子どもが全員野球部に入れば解決!」みたいなことになります。
逆に10年後の競技人口が今の半分になっていると仮定することもしません。
公益財団法人日本高等学校野球連盟(高野連)の資料を見ても、平成16年~平成29年までの競技人口は16万人以上をキープしていて、減少傾向にあるものの極端に数字が落ち込んでいるようには見えません。
前提2・連合チームは考えません。
複雑になるので考えません、ごめんなさい!
まずは手始めに今現在の予選試合数が少ない県を探さなければなりません。
そこでまず人口の少ない県から調べていきましょう。(以下、2017年のデータを参考)
こちらのサイトを見ると福井県、徳島県、高知県、島根県、鳥取県が下位5県ということがわかりました。
では次にその5県の予選参加高校数を調べたいと思います。
(参考)日程・結果 - 高校野球地方大会2017 : 日刊スポーツ
- 福井県 30校
- 徳島県 31校
- 高知県 28校
- 島根県 39校
- 鳥取県 25校
一番少ない鳥取県において最小試合問題が起きそうだと想定できますよね。
では、この鳥取県の25校って県内の高校全体に占める割合はどれくらいなんでしょうか? こちらのサイトで高校数を調べます。
すると県内の高校は公立24校、私立8校、合計32校となります。
32校中25校 野球部がある状態です。
つまり全体の78%の学校に野球部があることがわかりました。
現実にはこういう割合で野球部が存在すると決まっているわけではありませんが、この比率で残り続けると仮定したいと思います。
次に考えなければならないのは、学校数と人口の関係です。
学校が人口に合わせてどのように減っていくのか考えてみましょう。
「都道府県データランキング」を参考にデータを見てみると、最下位の島根県でも一校当たりの高校生は392人いることがわかります。
そこで一校当たり400人を下回ると高校が統廃合や廃校になって減ると仮定します。
つまり1学年当たり133.3人を切ると学校が1校減るってことですね。
「鳥取県将来推計人口の試算」という資料によると……
0歳児人口の推計はありませんが年少人口の推計が掲載されています。(年少人口とは0歳~14歳の人口のことです。)
鳥取県の資料は「A」と「B」とあります。
「B」の方の推計はだいぶ甘めに作っているので国立社会保障・人口問題研究所のやり方を踏襲している「A」の方の数値を採用したいと思います。
(Bの方は、合計特殊出生率が上昇した場合として2030年:2.07[国目標より10年前倒し]と設定しています。こんな楽観的な予想を参考にしてもリアリティがないよね)
一先ずこれを参考にすると年少人口は、2040年に約46,000~47,000人となります。
これを15で割れば0~14歳の各年齢の子どもの平均人口がわかります。
その数字を高校生1年生の人口の近似値だと想定します(大雑把)。
計算すると3,066~3,133人になったので、おおよそ3,100人としましょう。
高校32校では1学年あたり100名を下回ります。
そこで前提に則り、統廃合が行われるとします。
3,100を133.3で割ると「23.25」となりました。
小数点以下を切り捨てた23校が現実的な数字でしょうか。
今現在と同様の比率で野球部が残っていれば17.94校
つまり野球部は17~18校が残ることになります。
この学校数であれば少なくとも4回戦のトーナメントが組めるということがわかりました。
20年程度ではまだまだ一回戦即決勝戦にはならなさそうです。
結論:2040年に地方予選試合数が最も少ない都道府県は鳥取県で4回戦トーナメント。
自由研究、終わり…。
と、まあ、かなりおおざっぱな数字が出ました。
実際は、もっと早い段階でキツイ状況になりそうです。
それは子どもの数が減るよりも早く経営難で私立高校が破産したり、公立高校の統廃合が行われたりすると想像できるからです。
また野球に意欲的な中学生と子どもをプロにしたい親は、そういう地域を選択せずにもう少し野球人口のある場所の高校を選ぶでしょう。
選手の技術を上げるためには切磋琢磨出来る仲間が大事ですし、プロを目指すのなら形だけの甲子園出場には何の意味も持たないでしょう。
さて、これが課題研究であれば文章の精査はもちろん、それ以前にこのテーマ設定では不適切です。
「人口減少によるスポーツ人口の減少と改善案」くらいでないとダメだと思います。
ただ客観的事実と分析・想定でレポートが書ける、というサンプルになったと思います。(内容の質が高いかは別として…)
今回の自由研究は、2017年の数字をもとに行っています。
もしあなたが自由研究のネタに困っている生徒さん、保護者さんなら最新の数字で検証してみるのも悪くないと思いますよ。
考えの流れ
流れとしては…「課題を自分で設定します」コレ一番重要。
次に「仮説」を設定します。そして、研究方法ですね。
今回のケースでは既存の情報を元に整理していきます。
具体的には 全体の人口数の比較⇒鳥取県⇒学校数と野球部の関係を仮定⇒高校の統廃合を仮定⇒鳥取県のデータ⇒仮定に基づく計算 という流れで構成しています。
根拠としてデータ・引用を明示し、わからないことは仮定すると明言することも大事ですね。
「課題設定後」の「考える時間」がとても重要です。
実際私もこの程度の文章量にも関わらず、考える筋道とデータの収集にほとんどの時間が費やされました。
このように自分で考え、自分なりの答えを出す力が今後の大学受験で求められるようになります。
それはなぜか?
「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」(河合雅司)によると2018年に国立大学が倒産の危機へ陥ります。
それ以降、大学の淘汰が進むでしょう。そうなると大学側は学生集めに奔走し、大学のレベルによって入試の難易も二極化するでしょう。
今以上に「ただ単に大学を卒業したこと」の価値と信頼感は失われます。
経済学部を卒業したのに、マクロ経済もミクロ経済も説明できない。
そんな大学生、社会人は今も沢山いて、そもそも誰も期待すらしていない。
今は「卒業した大学名が大事」という名残を引きずっています。
しかし、今後は、どの大学で「どんな学問を修めたのか」という至極全うなことが求められるはずです。
でも、東大・京大なら入っただけである程度大丈夫なんじゃないの? と思う方もいるかもしれません。
その東大が大学受験を少しずつ変えてきているのです。
そのことは今後、触れるとして、もし読まれているのが親御さんで小・中学生のお子さんにがいれば今回のようなレポートを書く練習をさせることおススメします。
どんなコンクールがあるのか
ブログで発表しても良いと思いますが、実際にコンクールも出すのがベスト。
ゴールが明確な方が良いですし、コンクールなら過去の受賞作を参考にできます。
例えば今回のテーマに近い内容について「コンクール」「自由研究」というキーワードで少し調べだけで簡単にヒットします。
- 公益財団法人統計情報研究開発センター「統計グラフ全国コンクール」
- 東京都総務局統計部「東京都統計グラフコンクール」
- 一般財団法人 理数教育研究所「算数・数学の自由研究」
- 名古屋大学社会連携課「日本数学コンクール・日本ジュニア数学コンクール
他にも同様のコンクールは沢山あるはずです。
現役の学生さんや児童・生徒の親御さんは、通っている学校の先生に相談してください。
普通の先生なら喜んで協力し、指導orアドバイスをしてくれます。
だって、先生方としては子ども達にこういうチャレンジをして欲しくて日々授業をされているわけですから。
熱心な先生がいる学校だと夏休みの宿題として課すところもあります。
誰だって最初から上手に書けません。
少しずつ頑張りましょう。それでは、また