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【書評】リーディングスキルテストの価値(2)「AI VS 教科書が読めない子どもたち」を読んで

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前回に続いて「AI VS  教科書が読めない子どもたち」についての書評記事です。

前の記事ではリーディングスキルテストに関しての批判についての紹介や陵坂がモヤっとしたり、残念だなと感じたことを書きました。

今回は本書を元に感じたこと、考えたことが中心の内容になります。 

前回の記事はこちら 

www.ryosaka.com

リーディングスキルテストの圧倒的な調査数

まず「よくここまでの調査をしたな」というのが率直な感想です。教育に関する研究はいくつもありますし、文部科学省、大学、企業などもアンケートなどを行います。

ただ校内研究や自治体の研究(数校レベル)では研究規模に制限のある為、そもそもの母集団の偏りがあります。また卒業後の変化などを踏まえた長期間の調査は日本国内ではほとんどありません。

文部科学省をはじめとした企業などのアンケートでは、相関関係はあっても因果関係は判明しないことがほとんどです。

いわゆる「スマホの使用時間が長いほど、学力が下がる傾向がある」的な結果を示すのが精一杯というものが多いです。

これの何が問題か。

この例で言えばもしかすると「スマホを使わないように指示できない親子関係」の方が学力低下の原因なのかもしれませんし「単純に勉強時間が少ないだけ」なのかもしれません。もちろん、やっぱり「スマホが原因」ということだってあります。

もちろん相関関係自体は研究を進める上で重要な要因ではありますが、因果関係の方がより重要だということです。

その点、新井氏はリーディングスキルテストについての調査について丁寧に精査されています。

ご期待に添えなくて申し訳ないのですが、今のところ、「こうすれば読解力は上がる」とか「このせいで読解力が下がる」と言えるような因子は発見されなかったのです。(No.2752より引用)

この続きには「読解力のない生徒が本当にアンケートの意味を答えられているのか」と疑問を持ち、アンケートで明らかにすることは諦めています。なかなか衝撃な結論ですよね。

また負の相関についてはこのように述べられています。

就学補助率が高い学校ほど読解能力値の平均が低いことがわかったのです。つまり、貧困は読解能力値にマイナスの影響を与えています。(No.2799より引用)

これについては以前紹介した「学力の経済学」でも海外の事例ですが似た内容が述べられています。「学力の経済学」では「親の所得と学力」についての内容が述べられています。

これは私の考えですが「学力が高い人は読解力もある」というより「読解力がある人は学力も高くなる」という方が自然と繋がると感じます。 

「学力」の経済学

「学力」の経済学

 

読解力ピンチは今に始まったものなのか?

このリーディングスキルテストによる「文章が読めているのか?」「教科書が読みているのか?」という問題提起は大切なことだと思います。

一方で、このリーディングスキルテストの「報道のされ方」について「ちゃんと伝わっているのかな?」という心配があります。

別にどの新聞でも良いのですが、例えば日経新聞においてどう報道されているのか見てみましょう。

(参考)中高生の読解力ピンチ 主語・述語の関係、理解不足 :日本経済新聞

「中高生の読解力ピンチ」というこの見出しに注目してください。

この見出しだけを読んで「ああ、今の中高生は私たち(読者である大人)が中高生だった頃より読解力がないんだな」と思ってしまう人が結構いるんじゃないでしょうか。

しかし、リーディングスキルテストでわかるのは調査を受けた今の中校生の読解力についてだけです。

決して過去と比べて低いということは言えません。

「過去からずっと中高生の読解力はピンチと言える程度の能力しかなかった」という可能性も十分あるからです。 

(追記)新井紀子氏のツイッターでも同様のことが述べられていました。

思考と表現を支えるもの

じゃあ、これは読み手の読解力の問題でしょうか? 

「ピンチ」という言葉は、通常の状態から危険な状態になったこと意味します。

つまり「ピンチ」という言葉を使うことで「以前は通常の状態だったのに」というニュアンスを含んでしまいます。

ピンチという言葉のチョイスは控えめに言って適切とは言い難いと思います。

もしリーディングスキルテストに「中高生の読解力ピンチ」という文章が問題文にあったとしたら悪問と指摘される部類に入るでしょう。

「新聞社の文章力がピンチ」と揶揄することは簡単です。しかし、読者側も新聞社がキャッチーな表現を使うことを前提に読むべきだと思います。

繰り返しになりますが、リーディングスキルテストではあくまで現在の読解力しかわかりません。そして、今後は社会人など調査の範囲を広げていくようです。

その結果、判明するのはもしかすると「大人もそれほど読解力が高くない」という事実かもしれません。数年後には「日本人の読解力ピンチ」という見出しで新聞各紙が報道しているかも。

読解力や文章力は「思考と表現」を支える大切な力だと考えています。どんな素晴らしい考えだって伝わらなければ一人で完結してしまいます。

自戒の念を込めて、読むこと・書くことを改めて大事にしたいと思いました。

だってAI以前に、他人に勝てないもの。

ほな、さいなら。 

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

 

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