りょうさかさんと

教育業界にいる陵坂さんが教育・子育て・DWEなどについて書くブログ

りょうさかさんと

新指導要領の肝は座学からの脱却!


陵坂です。あなたは自分が教育で「何世代」か覚えていますか?

指導要領の変遷

平成32年(2020年)から始まる新指導要領。「ゆとり教育で学力が下がった」と言われて10年が経ちました。ここで簡単な流れの振り返りをしたいと思います。ちなみに「学力が下がった」という言説にも賛否あります。

日本「ゆとり教育で学力低下」…PISA調査結果 | Joongang Ilbo | 中央日報

(パっと調べたら中央日報がヒットしたので引用)

これを受けて「脱ゆとり教育宣言」を文部科学省が行い、指導要領が変わりました。

「「脱ゆとり教育」行方は」(毎日新聞2016年8月24日)

その後のタイトルが、学習指導要領「生きる力」:文部科学省

別にサバイバル能力を高めることでも、バトルロワイヤルで勝ち残る力を身に付ける為でもありません。

まあ、ど真ん中ストレートなネーミングに突っ込むのは今更過ぎて野暮ですね。すごく簡単に言えば「いじめ問題」から「働くこと」まで包括した「生きる力」を育もうというわけです。 

そして、小学校では平成32年から、中学校では平成33年から新学習指導要領が始まります。新学習指導要領については既に色々言われています。

成立の過程で「アクティブ・ラーニング」だったのが「主体的・対話的で深い学び」と日本語になりました。わかりそうでやっぱりよくわからないこの言葉。一方で、新学習指導要領の主旨自体は業界では非常にわかりやすく捉えられています。

大きな主旨は「大学入試改革」と「高校の授業改革」

「高大接続改革の進捗状況について」(平成29年5月16日)文部科学省

このブログは教員の方向けではなく保護者の方など一般の方を想定しているので、シンプルな言葉で表現すると「座学・講義形式からの脱却」を目指しているわけです。

「ん?」と思われる方もいるのではないでしょうか。

先生が延々と説明する授業を聞きながら、睡魔と戦いつつ、黒板を写して、とにかくまず覚えろ、みたいな授業を経験した方も多いのではないでしょうか。

でも今、小学校の授業は変化しました。昔のように先生が、教科書を基に講義するだけじゃないんですね。例えば、算数なら

「前の授業で長方形の面積の出し方を求めたけど、みんな次はどんな図形を出してみたい?」みたいな投げ掛けをして、それに反応した児童が「もっと角が多い図形が知りたい」「ええ、三角形の方がいいよ!」と意見を言い合う。

そういうやり取りを経て、「じゃあ、今日は三角形の求め方を考えてみようか」と授業を進めていきます。

凄いですよね。

先生は授業の筋書きは当然用意しているものの、授業の流れは児童の発言に委ねる参加型の授業になっています。もちろん全ての授業がこうではないでしょうが、授業を受ける子ども達の立場になると自分たちが知りたいことを追求している感じがしますよね。

ベテランの先生になると(この例で言えば)事前の予定で三角形だと決めていても、児童の言葉次第では別の多角形に変えちゃうそうな。そういう組み立てをしながら指導要領の範囲内を最終的にキッチリ指導します。

私が、ある教員の方と話した時に「同じ授業は二つとない、カッコつけた言い方をしたら音楽のライブと一緒だよ」と言っていました。

繰り返しになりますが、学んだことを整理したり、問題演習の時間をとったりするので全ての授業がこうではないと思います。講義・座学といった「教え込み」の時間は相対的に減りつつあります。

どうしてそういうスタイルになったか

それは、その方が学習効率が良いからです。

お勤めの方は、会社で外部研修を受けると参加型やゲーム型の研修が増えてきていると感じているのではないでしょうか。

ラーニングピラミッドと言う学習効果の定着率のことです。詳しい解説はこちらをどうぞ。

allabout.co.jp

要約すると「座って話を聞くより、自分で経験した方が身に付く」ってことです。

そんなに差があるのなら全部これですればいいじゃん、と思うんですが問題にぶち当たります。このタイプの授業って小学校⇒中学校⇒高校と進むほどしにくいんです。

理由はいくつかあります。まずは児童・生徒側に起因する難しさとして発達段階の違いがあります。小学生と違って中学生・高校生は自ら手を挙げたり、発言したりしにくいんですね。思春期もありますし。

次に先生側に起因する難しさとしては受験が待っていることです。膨大な量の指導範囲を教科だけではなく、学校行事と調整しながらやりきる必要があります。そうなると一定の座学・詰め込みの場面は取らざるを得ません。 

私が個人的に大きな要因として考えているのは「抽象度」が高くなるという要素です。児童・生徒が話し合い、議論しながら進めていくのには、目に見えたり、具体的なものの方が話し合いはしやすいと思います。

しかも小学校よりも中学校よりも高校の方が受験への意識が高くなるので先生としても授業のスタイルを変えにくいわけです。「ほんなら入試のスタイル含めて変えたらあ」という文部科学省の一撃が新学習指導要領大学入試改革なわけです。