りょうさかさんと

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【書評】「世界に通用する一流の育て方」のツッコミどころと2つのポイント


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どうも、りょうさかさんです。

今回は「世界に通用する一流の育て方」(廣津留 真理/SBクリエイティブ)についての書評です。

いわゆる「子育て体験本」です。

ツッコミどころは満載でAmazonレビューなんかも賛否がわかれています。

わたしが本書を面白がったツッコミどころと参考になる点をご紹介です。

「世界に通用する一流の育て方」とは

「世界に通用する一流の育て方」の内容は、全10章なんですが、簡単にまとめると…

  • 0歳から家庭学習
  • 小学校~高校時代の勉強法
  • 英語学習メソッド
  • 娘がハーバード大に行って学んだこと

この4点になります。

わたしが共感したのは「教育観」です。

また参考になったのは「家庭学習」「英語学習メソッド」です。

「世界に通用する一流の育て方」の教育観

「世界に通用する一流の育て方」の教育観については本書ではこのように語られます。

私にとっての子育ては「娘が明るく楽しい未来を実現してくれるためのお手伝い」でした。

(引用)「世界に通用する一流の育て方」(廣津留 真理/SBクリエイティブ)NO.166より

キレイな表現をすると確かにこの通りなんでしょう。

でも、わたしが本書から感じた教育観は、「過去の情報を参考にするが、人生のレールにおいては過去のモデルを考えずに踏襲しない」というものです。

本書の中で出てくる家庭学習自体は、突飛ではありませんし、英語学習法もただの体験談ではなく、いくつかの英語指導法をベースにしていることが読み取れます。

つまり、子どもの学習自体には過去の情報、知見を大いに取り入れた指導をしているんです。

この部分は読者も参考になるんですよね。

「世界に通用する一流の育て方」がツッコまれる理由①

一方で、本文内には「幼稚園、学校、塾に勉強を外注している」「模試も宿題も無視」といった趣旨の言葉があります。

子どもの将来については「私は幼い頃から大学受験をゴールとした家庭教育をしていなかった」(No.1364より引用)と語ります。

いわゆる「丸暗記学習で良い高校、一流大学を卒業して一流企業に就職すれば一生安泰」(NO.843より意訳)というステレオタイプ的な思考に全く左右されません。

こういった教育観について、わたしもほとんど同じなので共感するのですが、面白いのはコレが一部の読者にひっかかり、ツッコミポイントになっている点です。

その理由は、「日本の教育観はオカシイんじゃないか」「良い大学を目指す教育がどうなのか」という教育観が背景にありながら、本書のウリが「塾なしで現役ハーバード大学入学」だからです。 

矛盾というよりも旧来の価値観でめっちゃマウントしてくるわけですw

「世界に通用する一流の育て方」がツッコまれる理由②

繰り返しになりますが、本書の教育方法は参考になる部分も多数あります。

参考になる部分は後段で紹介しますが、参考にしづらい部分もあります。

例えば英語教育の場合…

  • お母さんが英語の翻訳や英語教室をしているから、0歳から英語教育
  • 独自教材を作って英語を指導
  • 週末はネイティブスピーカーを呼んでホームパーティ

この部分を読んで 「よし! 明日からすぐ実践だ!」ってなる方、なかなかいないと思います。

このエピソードが、なぜツッコミポイントとして読者を刺激するかというと「文化資本の再生産」という現実を身も蓋もなく叩きつけているからです。

「文化資本」とは、簡単にいえば「学歴」「教養」などのことです。

文化資本(英語: cultural capital、フランス語: le capital culturel)とは、社会学における学術用語(概念)の一つであり、金銭によるもの以外の、学歴や文化的素養といった個人的資産を指す。

(引用)文化資本 - Wikipedia

両親の学歴や収入、文化的素養などが子どもにも転換し、子どもも高い文化資本を得ることを「文化資本の再生産」と言います。

すごく簡単に言えば「東大生の親は、東大出身が多い」みたいなことですね。

こういう本を読む読者って自分が苦労したからこそ、子どもにはより良い教育をしてあげたいと考えて読むはずです。

なのに「そんなあなたにはそもそも難しいですよ」と突き付けているんですよね。

これはキツイ。

だから読者からツッコミを食らうわけです。

これ以外にもツッコミポイントはあるんですが「たぶん著者はなぜツッコまれているのかわかっていないんじゃないかな」と思うくらい歯切れのよい書きっぷりです。

こういったところを面白がれる方は、楽しめると思いますよ。

「世界に通用する一流の育て方」の2つの参考

さて、色々ツッコミまくりの本書ですが、もちろん参考になるポイントもあります。

わたしが特に気に入ったポイントは2点

  1. To Doリストを活用する
  2. 子どもに勉強の価値を教える

To Doリストを活用する

本書では、小学生になったら「To Doリスト」を活用して子どもが自分でやるべきことを自分で把握できるようにすべきだとしています。

自分がすべきことを自分で「見える化」することで主体的に取り組むことができるようになります。

私立が参考にする公立として話題の千代田区立麹町中学校でも、手帳指導しています。

その狙いも同様に「見える化」と「主体性」です。

小学生に手帳は難しくても、「To Doリスト」なら出来そうですよね。

付箋型の「To Doリスト」を使って、日記に貼ることを教えてみよう。

そんなことを思いつきました。

子どもに勉強の価値を教える

本書では、ハーバード大学生が親に教えてもらった4つのことを紹介しています。

それが以下の4点です。

  1. 学ぶ価値
  2. 学びを愛すること
  3. 学ぶ習慣
  4. 学びを生涯愛すること

(本書No.791より引用)

どれも社会人になってからも大切なことです。

本書では、これをどのように教えるかという方法論は書かれていません。

ただ、少なくとも親が「学びを愛していない」と子どもに伝えることはできないと思います。

読書すらしない親に「勉強しなさい」って言われても響かないですよね…。

わたしも学び続けながら、どうやって伝えたら良いのか、子どもと接しながら考えていこうと思います。

「世界に通用する一流の育て方」のツッコミどころと2つのポイント

「世界に通用する一流の育て方」について、わたしが面白がったツッコミどころと参考になる点をご紹介しました。

色々書きましたが、本書の「英語指導法」は、いくつかの既存の指導法をもとにアレンジが加えられたものでとても説得力があります。

著者の英語指導について詳しく知りたい方は下記書籍の方が良いと思います。

気になる方は見てみてくださいね。

「世界に通用する一流の育て方」の全体の感想としては酷評するほどではありませんが、図書館レンタルで良い本だと思います。

それでは、また。