りょうさかさんと

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【書評】自意識過剰で打たれ弱い貴方へ「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」


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どうも、りょうさかさんです。

今回は「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」(若林正恭/文藝春秋)についての感想です。

「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」とは

「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」はオードリー若林さんの旅行記です。

キューバ、モンゴル、アイスランドへ一人旅のことが書かれています。

キューバは2016年夏、2017年年末にアイスランドへの行ったと読み取れるので、おそらくモンゴルへ行ったのは2016年の秋~2017年の秋の間でしょうか。

わたしは「エッセイとは著者の体験や思考、思想、人となりを追体験して楽しむもの」だと思っています。

つまりエッセイとは「どんな人が書いたのか」という重要な要素だと捉えているということです。。

ラジオのリスナーや彼のエッセイを読んだことがある人は、若林さんの内省的な人となりを既に知っているでしょう。

知らない方のために若林さんがどんな人なのか若林さんの自評を引用するとこんな言葉になります。

"自意識過剰でプライドが高く、協調性もない。少数派のくせに一人で立つ勇気を持たず、出る杭のくせに打たれ弱くて、口が悪いのにナイーブで、それなのに多数派に賛同できない" そういう自らの欠落にずっと生き辛い思いをさせられてきた。

(引用)表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬p.331より

こんな彼が旅行を通して、何を経験し何を考えたのか。

それを追体験するのが本書の醍醐味になります。

わたしが印象に残った部分

若林さんが訪れるキューバは、わたしが行ってみたい国の一つです。

そのキューバの到着した翌日の朝、若林さんがホテルの屋上から朝日が上がるのを眺め、その光景に爆笑するシーンがあります。

しばらくすると、街は太陽の光を浴びて色を伴ってきた。人の声や、車の音、人間が活動する音が徐々に耳にはいってきた。

ぼくは笑っていた。「笑み」というレベルではなくて、口を押さえてほとんど爆笑していた。これはどんな笑いなんだろう。誰かの顔色をうかがった感情じゃない。お金につながる気持ちじゃない。自分の脳細胞がこの景色を自由に、正直に感じている。

(引用)表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬p.61-62より

わたしはこの描写が大好きです。

売れない芸人時代から他者と比較され、持たざるものの苦悩がなんなのか、人はスペックや勝敗で比べ続けられなければならないのか。

そういった色んなモヤモヤは形や姿をかえてわたしたちの周りにもあるもの。

若林さんの笑いと共に、読者も一緒に解き放たれるような気分がするからです。

それから広がるキューバ旅行の日々、キューバ人との出来事や最愛の父親との死別との向かい合い方、その文章が心に優しく響きます。

モンゴル、アイスランド旅行を通した若林さんの経験や笑えるエピソードもあり、読後感が暖かく心地よいエッセイでした。  

もしあなたに少しでも共感するところがあれば、ぜひ読んでみてください。

それでは、また。