りょうさかさんと

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【書評】「自分でできる子に育つほめ方叱り方」


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どうも、りょうさかさんです。

今回は「自分でできる子に育つほめ方叱り方」(島村華子/ディスカヴァートゥエンティワン)という本についてです。 

モンテッソーリ教育、レッジョ・エミリア教育の研究者である島村華子さんの本をご紹介します。

ポイントが簡潔でメチャクチャわかりやすいのでオススメです!

「ほめる」「しかる」その前に

「ほめる」「しかる」については以前の記事でも書いていますが、今回も新しい発見がありました。

本書からわたしが特に参考になった部分をご紹介しますね。 

その具体的な内容に入る前に、押さえておきたい大前提となる考え方があります。

本書内ではこのように書かれています。

モンテッソーリ教育、レッジョ・エミリア教育ともに、子ども一人ひとりを生まれながらに能力をもちあわせたパワフルな学習者であるだけでなく、権利をもった一市民としてみなします。

(引用)「自分でできる子に育つほめ方叱り方」(島村華子/ディスカヴァートゥエンティワン)p.6

子どもとは「権利をもった市民であり学習者」ということです。

この意識をもつことで「親の価値観や期待を押し付けたりしない」「愛情の駆け引きを利用しない」か日々親自身が問い直すことができると示唆しています。

NGな接し方

親がしてはいけないNGな接し方として「条件付きの接し方(条件付き子育て)」があります。

「条件付きの接し方(条件付き子育て)」とは、子どもの行動の善しあしによって褒美や罰を使いながら愛情の注ぎ加減を調整することです。

本書の中では「愛情の駆け引きで相手をコントロールする」と表現されています。

「いやいや、してないよ」と思ってしまいますが、案外していませんか?

お菓子が欲しいとスーパーで泣きわめいて座り込んだ子どもに対して「じゃあ、置いていくよ」と言って少し距離を取ろう、みたいな。

わたしもやってしまったこと、やってしまうことがあります…

これも「条件付きの接し方(条件付き子育て)」の一つです。

また「条件付きの接し方(条件付き子育て)」にはデメリットがあります。

  1. 短期的にしか教育効果がない
  2. 条件付きの自己肯定感しかもてなくなる
  3. 親子関係が悪くなる
  4. 世代を超えて引き継がれる

(引用)「自分でできる子に育つほめ方叱り方」(島村華子/ディスカヴァートゥエンティワン)p.24

わたしは「世代を超えて引き継がれる」が一番グサっときました。

というのも、わたし自身がそうだからです。

書籍などで子どもへの接し方を勉強していても、ついにカッとした時に思いつく発言や選択肢って自分が子どもの時にされたことなんですよね。

そして、今のわたしの子どもへの接し方が、子どもが将来親になった時に影響を与えてしまうというのはとても恐ろしいです。

研究が進んで「やっぱり違った」という可能性もゼロではないですが、現時点で出来るだけ自分なりの最善を尽くしたいと思います。

では、子どもにどのように接すれば良いのか?

本書では「無条件子育て」を提唱しています

「無条件子育て」とは

「無条件子育て 」とは、子どもの要求を無条件に受け入れるという意味でありません。

本書で掲げられる「無条件子育て」には5つの原則があります。

  1. ほめ方と叱り方に気をつける
  2. 「子どもに対するイメージ(見方)」を見直す
  3. 子どもにとって良きリーダーでいる
  4. 子どもへの要求を考え直してみる
  5. 子育てへの長期的なゴールをもつ

(引用)「自分でできる子に育つほめ方叱り方」(島村華子/ディスカヴァートゥエンティワン)p.29

特に「4子どもへの要求を考え直してみる」は、大切な視点だと感じました。

言ってみれば当たり前のことですが年齢によって出来ること、期待できることも違いますよね。

しかし、初めての子育てであれば、どの程度出来るのか? どの程度期待して良いのか? ということがわかりませんよね。

子どもの立つ、歩く、走るという動作であれば目で見て親も把握できます。

一方で、子どもの思考や感情についてどこまで理解できるのか、期待してよいのかという部分は、目で見えないし、子どもの言葉からも読み取りにくいものです。

本書では、0歳から17歳までの発達段階の特徴がまとめられたページがあります。

このページを見ると、身体的な特徴から言語、心理的な特徴がまとめられています。

参考になるので気になる方はぜひ、本書をご覧くださいね。

子どもとぶつかる7つの習慣

本書には、ほめる、しかる以外にも子どもとの関係の気付き方や話の聞き方が掲載されています。

その中で選択理論心理学に基づく「子どもとぶつかる7つの習慣」というのも紹介されています。

以下、項目だけを引用しますね。

  1. 批判する
  2. 責める
  3. 文句を言う
  4. 脅す
  5. 罰する
  6. 目先の褒美で行動をコントロールする
  7. がみがみ小言を言う

(引用)「自分でできる子に育つほめ方叱り方」(島村華子/ディスカヴァートゥエンティワン)p.149-151

これもついついしがちですよね…

わたしの場合は、つい「だから言ったのに」「何度も言ったよ」「あなたはいつもそう」と「批判」の言葉が出てしまうことがあります。

しかもこういった言葉を子どもが覚えてしまうんですよ。

こういう言葉使いは、他人には当然ですが、子ども・家族にも言うべき言葉ではありませんよね。

それなのに出てしまうというのは、わたしは子どもや家族という関係に甘えてしまっているんだと思います。(あくまでわたし自身の自己分析ですが)

子どもとの関係づくりのためにも、子どもの規範となるためにも意識して気を付けていきたいと思います。

子どもとつながる7つの習慣

じゃあ、どうすれば良いのかというと「子どもとつながる7つの習慣」が紹介されています。

こちらも項目だけ引用しますね。

  1. 応援する
  2. 励ます
  3. 傾聴する
  4. 信頼する
  5. 尊重する
  6. 違いを話し合う
  7. 受け入れる

(引用)「自分でできる子に育つほめ方叱り方」(島村華子/ディスカヴァートゥエンティワン)p.154-156

どれもとても真っ当な項目ばかりですよね。

でも「頭でわかっているけど実際の子育てでそこまで余裕がないよ」という風に思ったかもしれません。

少なくともわたしはそう思いましたw

本書では具体的な「あるある」場面でのNG回答例と模範回答例が掲載したり、「こんな時にどうすればいい?Q&A」コーナーが用意されています。

ヒントが用意されているので、わたしはとっても参考になりましたよ。

グサッときた2つのエビデンス

最後に「自分でできる子に育つほめ方叱り方」で特に印象に残った2つのエビデンスを紹介したいと思います。

一つは「好き放題させて、全く叱らない子育て」についての悪影響です。

放置型の「消極・受け身タイプの子育て」は、子どもの共感力(人の気持ちに寄り添える力)が低下し、結果的に反社会的行動(他者への攻撃的な行動)につながる可能性が高くなります。

日本の例でいうと、特に父親がこの消極・受け身アプローチをとった場合、子どもの精神衛生に悪影響(うつや不安症など)があることが明らかになっています。

(引用)「自分でできる子に育つほめ方叱り方」(島村華子/ディスカヴァートゥエンティワン)p.167

つまり全く叱らないのもダメだということです。

子どもがどこまで理解可能かといった成長の背景を知った上で、これまで書いてきたような考え方で言葉をかける必要があるということです。

もう一つは「両親と過ごす時間より質が大事」という部分です。

3~11歳の子ども達が両親と過ごす時間の長さは子どもの行動、感情の発達、学習力に大きな影響がない一方、一緒に過ごす時間が短くとも質の高いアクティビティ(会話のやりとりをする、本を一緒に読む、スポーツや工作をするなど)を一緒にした場合、子どもたちの社会性や自己肯定感、さらに忍耐力がより高くなることがわかっています。

(引用)「自分でできる子に育つほめ方叱り方」(島村華子/ディスカヴァートゥエンティワン)p.190

これは出張族や共働き世帯には、嬉しい情報ですよね。

平日は寝る前に短時間でも読み聞かせをし、休日は家族でうんと遊ぶ。

共働きが当たり前になっているご時世、こういうご家族って多いと思うんです。

そのやり方がエビデンス上、良い影響があると示されているのはとても勇気づけられることだと思います。

わたしも子どもと質の高いアクティビティを心がけたいと思います。

本書「自分でできる子に育つほめ方叱り方」に興味を持たれた方は、ぜひ読んでみてくださいね。

それでは、また。