りょうさかさんと

教育業界にいる陵坂さんが教育・子育て・DWEなどについて書くブログ

りょうさかさんと

英語教育は、分の悪い賭け


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どうも、りょうさかさんです。

今回は「英語教育という分の悪い賭け」についてです。

英語教育不要派の意見

そもそもどうして日本人が「英語」を学ばなければならないのでしょうか?

英語教育不要派の意見としてポピュラーなのは以下の3つだと思います。

  1. 日本国内であれば、英語を喋ることができなくても不便はない。
  2. 英語力よりも「話す内容」や「論理的思考力」の方が大切。
  3. 「機械翻訳」の精度が上がれば英語力は不要になるかもしれない。

どれも「一利ある」と納得できる意見です。

幼児英語教育に関しては、例えば林修先生は「セミリンガル」(母語も外国語も中途半端なレベル)になる可能性を根拠に警鐘を鳴らしています。

また「機械翻訳」の精度が上がれば、これまで英語教育に費やしていたお金・時間が全て無駄になる可能性もあります。

英語教育必要派の意見

一方で、英語教育が必要だという意見には以下のものがあると思います。

  1. 日本の人口が急速に減少する状況で英語が話せないと不利になる。
  2. 「話す内容」「論理的思考力」のレベルが同じなら英語力が高い方が有利である。
  3. 「機械翻訳」の精度が英語の習得不要レベルまで上がるのがいつかわからない。

これも「一利ある」と感じられるのではないでしょうか。

上記の「英語が話せないと不利」「英語力が高い方が有利」とは、人生の選択肢のことです。

「国内の人口減少」についてはこちらの記事にも書きました。

2021年に0歳の子どもが社会に出る2040年~2050年の人口は1億1,000万人~1億200万人と予想されています。

2020年の総人口は1億2,536万人(総務省統計局より)です。

1,500万~2,000万人の人口が減るわけです。

しかも高齢化社会なので「消費」の大きい世代が減っています。

今まで以上に国内外の人と連携し、やりとりをしなければ生きていくことが難しくなると考えられます。

こういう状況で、もし機械翻訳が実用レベルに達していなければ「英語を話せない」ことは人生の選択肢を狭めてしまうと考えられます。

幼児英語教育の是非

では、「幼児英語教育の是非」は、どうなのでしょうか?

上段で紹介した林修先生が指摘する「セミリンガルへの危惧」については「英語を子どもに教えるな」(市川力/中公新書ラクレ)という書籍でも指摘されています。

「英語を子どもに教えるな」の書評はこちら⇒

「英語を子どもに教えるな」で取り上げられるセミリンガルの事例は、アメリカで育った日本人駐在員の子どもたちです。

一方で「十分に母語を使う環境にあるのなら、悪影響はほとんど心配がない」という主張が出てくるのが「外国語学習の科学」(白井恭弘/岩波書店)です。

「外国語学習の科学」の書評はこちら⇒ 

「外国語学習の科学」では、アメリカ人の赤ちゃんに中国語を1回25分を4週間にわたって計5時間、触れさせたケースが紹介されます。

研究ではたった5時間でも「台湾で中国語を習得している赤ちゃんと同じレベルの識別能力を示した」「英語の聞き取りにも悪影響がなかった」そうです。 

この2冊から考えられることは、子どもの置かれる「環境」です。

海外の日本人駐在員の子どもの場合、日本人の親と過ごす一日のわずかな時間しか母語に触れる機会がありません。

母語である日本語の時間をしっかり確保することを前提にすれば、幼児英語教育の是非というよりもバランスの問題なりそうです。

ただしどんなバランスが適切なのかについて明確にわからないことがネックです。

英語教育は分の悪い賭け

ここまで書いてきたことを総合して考えると英語学習は「分の悪い賭け」だと言えるでしょう。

英語学習にお金と時間を投資したとしても、機械翻訳の隆盛でその価値が激減するかもしれません。

逆に、英語学習にお金と時間を投資しなかった場合、もし機械翻訳が発達しなければ人生の選択肢が減ってしまいます。

幼児英語教育も同様に、セミリンガルのリスクを負ってまで英語学習をしたのに機械翻訳で価値が激減するかもしれませんし、幼児英語教育をしなかったせいで発音面で長い時間苦労するかもしれません。

以前紹介した「最新研究からわかる学習効率の高め方」(ふろむだ)でも同様の指摘をしています。(英語学習については4巻を参照ください)

英語学習をやる方に賭けても、やらない方に賭けても、ギャンブルに負けた時の損害は、半端なくきついね。(中略)

このギャンブルは、現時点で若い日本人は、強制参加なんだ。

(引用)「最新研究からわかる学習効率の高め方 4巻」p.170-171から引用

この英語学習という「分の悪い賭け」の恐ろしいところは、強制参加にも関わらずどの程度BETするかの自由度が大きく違うところです。

金銭的に余裕があり、夫婦両方、もしくは片方の時間が取りやすい場合は、幼児英語教育から取り組む選択肢を持つことができます。

家庭用英語教材だけではなく、英会話教室、インターナショナルスクールに通わせるなど選択肢も多岐にわたります。

一方、共働き世帯だと時間的な余裕が少ないので、幼少期の習い事は土日しかできませんし、家庭用英語教材を十分に活用することも難しくなりますよね。

もし金銭的な余裕が少なければ、家庭用の英語教材を購入する選択肢自体を持つことができません。

つまりご家庭の経済状況・環境によって取れる選択肢が大きく違う上に、賭けが外れた時のダメージも違うわけです。

この「分の悪い賭け」 をどうすれば良いのか、という明確な答えをわたしは持っていません。

それぞれの環境・価値観によってどの程度BETすべきなのか考えるしかないというのが正直な答えだと思います。

このブログがお金目当てであれば、どちらかにスタンスを取って反対側を徹底的に否定する方が良いと思うんですが、わたしはそこまで無責任になれません。

わたし個人の考えとしては、機械翻訳が実用化されるまでは出来る限り英語教育を行った方が良いという無難なものです。

そういった考えのもと娘に家庭用英語教材(「DWE」中古)をしたり、「ヤマハ英語教室」に通わせつつ、日本語で絵本の読み聞かせもしっかりやろうと心がけています。

英語教育ってどうなのよ? と思う方の考える材料に少しでもなれば幸いです。

それでは、また。

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