どうも、りょうさかさんです。
今回は「部下を育ててはいけない」(田端信太郎・SBクリエイティブ)の書評です。
インパクトのあるタイトルですが「上司とはそもそも何をすべきなのか」を問いかける内容になっています。
「部下を育ててはいけない」とは
「部下を育ててはいけない」は、著者である田端さん自身が「部下時代に体験した出来事」と「管理職時代に体験した出来事」を基に構成されています。
どんな内容か? というと本書内の「25の上司力改革」の一部を見てもらうとイメージしやすいと思います。
本書の目次から一部を抜粋させていただくと…
- 上司力改革2 手柄をほめる→悪いことだけ報告させる
- 上司力改革8 やる気をださせる→ムードをつくる
- 上司力改革16 細かく指示を出す→放任してしまう
- 上司力改革18 経費を節約する→正々堂々と経費を使う
- 上司力改革21 友好関係を保つ→激論を戦わせる
「→」の次が田端さんの主張となっているわけです。
例えば「正々堂々と経費を使う」というと「役得を活用せよ」みたいに受け取ってしまう人がいるかもしれませんが、意味は逆です。
「経費を上回るだけのパフォーマンスを上げて利益を出せ」というのが田端さんの主張です。
そして、冒頭に書いた「上司とはそもそも何をすべきか」という考えの答えは「会社にいかに利益をもたらすか」ということです。
いかに利益をもたらすか
「いかに利益をもたらすか」という考えが根底にあるので
- 仲良しこよしである必要はないけれど、良いムードがあった方が良い
- 徹底的に管理して部下のモチベーションを下げて自分の時間も消費するよりも、信頼してある程度任せた方が部下のモチベーションは下がりづらいし、自分の時間を他に活かせる
というような考え方になっています。
確かに「新入社員でもないのに毎日の活動報告を電話で1時間もさせる」とか、「テレワーク中の業務を監視する」みたいなことは上司は安心できるでしょうが、部下を信頼していないことが伝わってしまいます。
「信頼関係なんてなくてもサラリーマンなら言われたことをやれ!」と思ってしまう前時代的な方はお帰りいただき、「確かにそうかもな」と思った方は一度、本書を読んでみてはいかがでしょうか?
部下を育ててはいけないのか?
さて、タイトルの「部下を育ててはいけない」という問いかけは賛否両論あるでしょう。
わたし自身、田端さんの主張については理解できるし賛同する部分が多いのですが、最初読んだ時に違和感を覚えました。
田端さんの主張を簡単に言えば「部下全員を育てようとするのではなく、やる気のある部下を選別して育てろ」ということです。
本文ではこのように書かれています。
リーダーが限りある時間を使って「育てる」とすれば、指示待ち型の人間ではなく、主体的に学ぼうという姿勢を持った人間だけを選別して育てる方が、はるかに効率的だ。
(「部下を育ててはいけない」(田端信太郎・SBクリエイティブ)Kindle版No.234)
ここでわたしが思い出したのがイチローさんの言葉です。
イチローの「モチベーション管理法」完全同意すぎて首もげそう。 pic.twitter.com/u4tjt0HWqd
— 西村マサヤ (@masayaquality) April 6, 2021
イチロー選手ですら「自分のモチベーションを上げることはできない」と言っているのに他人のモチベーションを上げたり、さらに言えば「主体的に学ばせよう」とマインドチェンジしようとするのは、かなりハードであることがわかります。
田端さんの主張は至極ごもっともと感じるのですが、わたしが違和感を覚えた正体は視点の違いです。
短期か長期か
「会社」「経営者」という一つ上の視点で見た時、社内には「一流」と呼ばれる人間よりも「二流、三流」と呼ばれる人間の方が大多数になります。
そして、「その大多数の底上げなくして、会社全体の生産性を上げることはできない」という主張が出てくるのが「生産性」(伊賀泰代・ダイヤモンド社)です。
「生産性」の一部を引用するとこのように書かれています。
組織の中に「まったく成長しない人たち」を多数抱え、彼らの成長を諦めてしまったら、組織全体に与える悪影響は計り知れません。反対に、そういう人たちの生産性をほんの少しでも上げることができれば、長期的には組織全体の生産性は大きく向上します。
(引用)「生産性」(伊賀泰代・ダイヤモンド社)p.130
仕事をする際には「一つ上の視点で考える」ということがあります。
平社員なら課長の視点で考える、課長なら部長の視点、部長なら役員の視点…という感じになります。
「生産性」(伊賀泰代)で述べられる主張は、上位の視点(会社全体を俯瞰した視点)だと言えるでしょう。
一方で、「部下を育ててはいけない」(田端信太郎)で述べられる主張は、現場の生の視点だと言えるでしょう。
「理想」と「現実」とも言い換えられるかもしれません。
そして、この違いの中には「時間間隔の違い」も隠されています。
つまり「短期」「長期」という時間の尺度の違いです。
視点が上にいけばいくほど、理想を思い浮かべるほど時間軸は「長期視点」になります。
一方、本書「部下を育ててはいけない」では「より生に近い短期的な視点」になっています。
誤解のないように書いておきますが、上位の視点、現場視点、短期、長期に優劣はありません。
わたしが「自身が持っている育成の考え方」が長期目線になっていることに無自覚だったということです。
だから最初読んだ時に納得できるけれど、何か違和感を覚えたんです。
これから「部下を育ててはいけない」を読まれる方は、まず自分自身の「育成観」みたいなものを整理してから読むとより面白いと思いますよ。
「部下を育ててはいけない」のまとめ
最後に「部下を育ててはいけない」を簡単にまとめておきたいと思います。
- 「25の上司改革」で構成されている
- 考えの柱は「いかに利益を上げるか」
- 現場目線ですぐに取り入れられる内容
気になった方はぜひ読んでみて下さいね。
それでは、また。
田端さんの著書については過去に「これからの会社員の教科書」「ブランド人になれ」などについて書いてきました。
書評は書いていませんが「これからのお金の教科書」も読みましたよ。