りょうさかさんと

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【9月入学】「学年の区切り」による問題を整理する


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どうも、りょうさかさんです。

今回は、9月入学の際の「学年の区切り」についてです。

色々な問題を整理して考えやすくしたいと思います。 

9月入学のポイントは学年の区切り

以前の記事で9月入学のメリット・デメリットをまとめました。 

この記事のコメント欄でご指摘がありましたが「学年の区切り」によってその年度の生徒数が大きく変わります。

上記事を書いた頃もこの記事の執筆時点(2020年5月21日)でも、「学年の区切り」について明確な方針は示されていません。

ニュース報道された案や苅谷剛彦先生の研究チームが対象とした案を整理するとは以下の4つになります。

  1. 2021年度の新入生のみ「9月入学の際に9月1日生まれまで」を対象
  2. 2021年度~26年度まで「1学年の誕生日区切り」を1ヵ月ずらしていく
  3. 現行の「4月2日~翌年4月1日生まれまで」の区切り
  4. 4月~8月までを「小学ゼロ年生」とし、その年の9月から1年生とする

この4点について課題を整理していきましょう。

9月1日生まれ区切りが無茶な理由

まず、「1.2021年度の新入生のみ「9月入学の際に9月1日生まれまで」を対象」についてです。

この「9月1日生まれ案」の問題は、新入生増、待機児童増、人・モノ・金が必要になることです。

苅谷剛彦先生(オックスフォード大学教授)の研究チームによると「9月入学の際に9月1日生まれまで」の場合…

研究チームの推計では、この場合、新入生は例年より42万5千人増え、1・4倍になる。14年4月2日生まれから15年4月1日生まれの児童は保育所に5カ月長くいることになるため、初年度、地方財政支出は2640億円、教員は2万8100人が追加で必要になり、保育所は新たに26万5千人、学童保育は16万7千人の待機児童が生まれる。

(引用)9月入学で教員2.8万人不足の推計 待機児童も急増 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル

新入生は42万5千人増の1.4倍。 

「9月1日生まれまでにすると新入生1.4倍」がどれくらいの規模なのかピンとこない方もいると思います。

日本では生まれた子どものほとんどが小学校に入学をするので、出生数を参考に見てみましょう。

平成27年(2015年)の出生数が、100万5千人。

初年度に該当する2014年もほぼ同数だと考えると…。

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(引用)平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況|厚生労働省

1.4倍は、昭和60年レベル(140万人)になります。

学校は、徐々に減る子どもたちの人数に合わせて教室を減らし、統廃合を行い教師の数を減らしてきました。

それが9月1日生まれ適用にするだけで一気に30年も昔の人数に戻ってしまうわけです。

しかも初年度だけ。

この1年にかけた人・モノ・金が無駄になってしまいます。

これが「1.2021年度の新入生のみ「9月入学の際に9月1日生まれまで」を対象」の大きな問題点の一つです。

「「誕生日区切り」1ヵ月ずらし」のスライド案について

次に、「2.2021年度~26年度まで「1学年の誕生日区切り」を1ヵ月ずらしていく」について見ていきましょう。

文字で読んでも正直ピンとこないですよね…。

これについては朝日新聞デジタルの図がわかりやすいので引用させていただきます。

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(引用)9月入学、文科省が2案例示 新小1対象範囲、課題多く [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル

つまり「誕生日の区切り」が毎年スライドする案です。

毎年1ヵ月ずつスライドし、2026年度の新入生から「9月2日生まれ~翌年9月1日生まれまで」が対象になります。

この案のメリットは、上記1案と違い初年度だけ生徒数が1.4倍になるという事態を防げる点です。

これにより学校スペース・教員数などが足りないことの負担が軽減されます。

一方で、保護者からしたら「自分の子どもがどうなのかわかりにくい」というシンプルかつディープな問題が生じます。

9月入学を4月2日生まれ区切りにするなら

なお文部科学省は、現行の学年の区切り(4月2日生まれから翌年4月1日生まれまで)を変えずに、新学年を9月1日から始める案も検討しています。

それが「3、現行の「4月2日~翌年4月1日生まれまで」の区切り」です。

この区切りについて朝日新聞では「小学校の開始が遅い児童で7歳5カ月からとなる」「待機児童が増える」と指摘しています。

児童全体の教育が5カ月後ろ倒しになり、小学校の開始が遅い児童で7歳5カ月からとなる。欧米は6歳が主流で、韓国や中国も6歳。日本の児童はそれよりさらに1年以上遅れることになる。推計では、学校教育の支出や教員、学童保育の待機児童の大きな増加は見られないものの、保育所の待機児童26万5千人は初年度だけでなく毎年生まれ続ける。

(引用)9月入学で教員2.8万人不足の推計 待機児童も急増(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

「待機児童問題」については過去に話題にもなったので、「開始年齢」について取り上げますね。

日本以外の小学校の「開始年齢」は?

開始が遅い児童の年齢が7歳5ヵ月になることは、そんなに諸外国と違うのでしょうか?

上記事の「小学校の開始が遅い児童で7歳5カ月」「1年以上遅れる」という文言のせいで「7歳入学」みたいな印象を受けてしまう人もいると思いますが、そうではありません。

仮に「現行の区切り」のまま9月入学を実施すると小学校入学は、6歳5ヵ月~7歳5ヵ月の児童が対象になります。

つまり9月入学を現行の区切りで実施すると「6歳5ヵ月入学制度」になるということです。

ほぼ半年ズレるということです。

では、「6歳5ヵ月入学」が他国とどれだけズレることになるのでしょうか?

以下は「教育再生実行会議(平成25年11月26日)」の資料から引用です。

アメリカ…5歳(8州)、6歳(25州)、7歳(15州)、8歳(2州)

・4歳・・・北アイルランド
(注)1989年に5歳から4歳に引き下げ
・5歳・・・イングランド、スコットランド、ウエールズ、オランダ、キプロス、マルタ
・6歳・・・オーストリア、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、ノルウェー、スペイン、ポルトガル、スイス、トルコ、ハンガリー、ルーマニアなど
・7歳・・・ブルガリア、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド(2014年から6歳に引き下げ)、セルビア、スウェーデン、フィンランド

(引用)学校制度(学制)-諸外国との比較(二宮 皓/平成25年11月26日)(「アメリカ」部分のみ引用者によって補足を行っている)

この上の仕様をアメリカとヨーロッパを単純に合計すると…(()内は国と州数の合計)

4歳(1)、5歳(14)、6歳(39)、7歳(22)、8歳(2)という数字になります。

こうしてみると6歳が主流であることに違いありませんが、7歳も決して大きく外れた数値ではないということもわかると思います。

そう考えると少なくとも諸外国と比べて「5ヵ月のズレ」が大きなマイナスであるとは言えないことがわかると思います。

話が少しそれてしまいますが、そもそもこういった違いは、各国の「教育観」による部分も大きいです。

アメリカの一部、ドイツ、フランス、韓国は5歳からの「早期入学」制度がありますし、「飛び級」「留年制度」のある国もあります。

(参考)参考図表5 各国の義務教育制度の概要:文部科学省

ちなみに留年率はというと…

  • フランス 留年率:初等17.8%、前期中等23.5%
  • ドイツ 留年率:初等9.2%、前期中等14.2%。
  • フィンランド 留年率:初等2.4%、前期中等0.5%。

(参考)学校制度(学制)-諸外国との比較(二宮 皓/平成25年11月26日)

こういった状況に加えて、大学受験での浪人などを考慮すると大人になってからの1、2歳の差を気にする必要はなさそうです。

(なお上記諸外国の小学校(初等教育)は、国によって「実施年数」も違えば、「学制」も違います。(「学制」とは、小学校、中学校、高校の区切りのことです。))

小学ゼロ年生は文科省が面倒を見るという覚悟

最後に「4.4月~8月までを「小学ゼロ年生」とし、その年の9月から1年生になる」についてです。

これは「学年区切り」とは違う軸の話ですが、直接関係する部分なので取り上げたいと思います。

小学ゼロ年生とは何なのか?

FNNニュースの図がわかりやすかったので引用させてもらいます。

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(引用)【独自】小学ゼロ年生の新案判明 小学校は6.5年(フジテレビ系(FNN)) - Yahoo!ニュース

シンプルに言うと「4月~8月まで文科省が面倒を見る」ということです。

1~3のどの案でも共通して課題となるのは幼稚園・保育園の卒園後から小学校入学までの期間をどうするのか? という点です。 

卒園時期を変えれば良いのですが、幼稚園と保育園では所管も根拠法令も違います。

  • 幼稚園は所管が、文部科学省。根拠法令は、学校教育法。
  • 保育園は所管が、厚生労働省。根拠法令は、児童福祉法。

9月入学だけであれば文部科学省だけですが、保育園の卒業時期まで影響するとなると厚生労働省まで入ってくることになります。

そこで「ゼロ年生」という枠組みを作ることで「文部科学省」だけで解決できるような枠組みを作ったのではないでしょうか。

もちろんこの案にも課題があります。

この案の実施には、「ゼロ年生」のための教員確保の費用として、毎年度3,000億円程度が見込まれるほか、教育課程や教科書などを至急検討する必要があり、課題も多いとされている。

(引用) 【独自】小学ゼロ年生の新案判明 小学校は6.5年(フジテレビ系(FNN)) - Yahoo!ニュース

先生方の人数はもちろん、学校スペースの問題もありますし、「何を教えるのか」というカリキュラム・教科書・教材の問題もあります。 

9月入学「学年の区切り」による問題を整理のまとめ

9月入学の「学年の区切り」についての問題を整理しました。 

  1. 「9月1日生まれ案」はわかりやすいが、新入生増、待機児童増と課題が多く、人・モノ・金が必要。
  2. 「スライド案」は、「9月1日生まれ案」より負担が少ないが、わかりにくい。
  3. 「現行の区切り案」は、諸外国に5ヵ月遅れる。
  4. 「小学ゼロ年生」は、9月までを学校がみるというもの。教育内容・教材に課題あり。

9月入学について色々な案が報道されています。

これは世論の流れを知るための「観測気球」的意味合いがあると思います。

 

現状維持が良いのか、9月入学が良いのか。

9月入学であれば、どのような落としドロコが一番良いのか。

 

今回の記事が、あなたにとって考える際の参考になれば幸いです。

それでは、また。 

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