どうも、りょうさかさんです。
35人学級への変更が報道されました。
どうして文部科学省は「35人学級」にしたいのか?
その狙いを考えてみましょう。
- 35人学級とは
- 35人学級の狙い
- 狙い1:教員を増やす
- 狙い2:児童の学力向上
- 狙い3:ICT活用の拡大
- 狙い4:文部科学省の予算確保
- 狙い5:学校の統廃合を回避する
- 文部科学省「35人学級」に隠れた5つの狙いのまとめ
35人学級とは
35人学級とは文字通り、小学校のクラスの定員を40人から35人に引き下げるということです。
35人学級についてはリセマムさんの記事がわかりやすいので引用します。
公立小学校の学級編成について、萩生田文部科学大臣は2020年12月17日、2021年度から5年かけて35人に引き下げると発表した。約1万4,000人の教職員定数の改善を図り、次期通常国会に向けて必要な法整備をするという。(中略)
なお、現在の義務標準法(公立義務教育諸学校の学級編制および教職員定数の標準に関する法律)では、1クラスの上限は小学1年生のみ35人、小学2年生~中学3年生は40人とされている。
(引用)小学校、今後5年で35人学級へ…通常国会で法整備 | リセマム
図については産経新聞がわかりやすいので引用させていただきます。
(引用)小学校、全学年で35人学級に 令和7年度までに 中学校は今後検討 - 産経ニュース
つまり「小学校2年生以降も5年かけて35人学級にして、教員の数を増やすよ」ということです。
35人学級の狙い
わたしは優秀な官僚が考える政策とは、一石二鳥どころではなく、一石で四鳥、五鳥も狙うものだと思っています。
では、「35人学級の狙い」とは何でしょうか?
以下のものが考えられます。
- 教員を増やす。
- 児童の学力向上。
- ICT活用の拡大。
- 文部科学省の予算確保。
- 学校の統廃合を回避する。
では、ひとつずつ見ていきましょう。
狙い1:教員を増やす
35人学級にするということは当然、校内の学級数が増えるわけで、その分だけ教員が必要になるわけです。
教員数、特に公立小学校の教員数は、実は微妙なバランスに置かれていました。
というのも、少子高齢化のために子どもは減り続けていますよね。
こちらは厚生労働省の人口動態統計の資料です。
(引用)https://www.cao.go.jp/shoushi/shoushika/meeting/kokufuku/k_1/pdf/ref1.pdf
ずーーーーーっと右肩下がりですね。
ちなみに2020年12月15日の報道によると2020年の出生数は、83万人に程度に減少する可能性があるとのことです。
(参考)予想より10年早い? 新型コロナで日本の「少子化」が急激に加速している衝撃の事実(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース
2021年に小学校1年生になる2015年の出生数は100万5,677人(内閣府HPより)ですから、この5年で1年間に生まれてくる赤ちゃんの数が17万人減ったということです。
日本という国を考えた時にこの出生数の減少は非常にヤバイことなんですが、それは一旦横においておいて、子どもが減り続けているということは長期的に見れば教員数は、そんなにいらないんです。
一方で困っているのは教員の求人倍率の低下です。
文科省によると令和元年の小学校教員の採用倍率は2.8倍です(文科省資料より)。
この倍率を見ると「教員の質の低下」が叫ばれるのもわかりますよね。
採用する立場に立てば、3人に1人から選ぶわけです。
そりゃ、教師に向いてない人、犯罪をするような変な奴だって混ざりますよ。
つまり文部科学省としては出生数を考えれば教員数はあまり増やせないけど、応募数は増やしたいという意図があったわけです。
応募数を増やし、教員の質を上げるためには教員の労働環境が、ブラック・オブ・ブラックだと知れ渡った現状を変えなければなりません。
そのためには逆説的ですが教員数を増やして、一人一人の負担を軽くすることが必要です。(もちろん行政、管理職の意識改革など様々な課題も解決する必要があります)
別の側面として、教員を増やすと簡単に言っても、お金の問題がありますよね。
子どもが減り続けるのに、教員数を増やすという真逆のことをするためには、他省庁と政治家、国民を納得させるための大義名分がいるわけです。
それがこの「35人学級」だというわけです。
狙い2:児童の学力向上
狙い1は、あくまで文部科学省中心の視点でした。
では、保護者、児童にとってのメリットはなんでしょうか?
良くあげられるのは、少人数学習による学力の向上です。
少人数学習によって全国学力テストの順位で上位にいるのが秋田県です。
興味のある方はこちらをどうぞ⇒すごいな、秋田!秋田の学力向上施策を秋田県教育庁に伺いました:学校授業のスパイス - 次世代教育推進機構
子ども一人一人が先生に手厚く見てもらえるようになるは、保護者としても安心ですよね。
狙い3:ICT活用の拡大
文部科学省の概算要求の記事でも書きましたが、今後の教育はデジタル化の波が避けられません。
子ども達自身が使いこなすためにも、先生が見守るためにも学級の人数が少ない方が目が届きやすいですよね。
しかもICTを活用するのであれば、隣の教室、隣の学校とも交流が容易になるわけですから、教室あたりの人数は少なくても構わないわけです。
こういった使い方の想定も文科省は既にしています。
詳しくは以前まとめたのでこちらをどうぞ。
狙い4:文部科学省の予算確保
狙い1と狙い3の両方に通じるのは、予算確保という狙いです。
予算がなければ、どれだけ崇高な理想であっても現実にすることができませんよね。
教員の人数確保は5年計画ですし、前述のICTの環境も継続的な整備が必要です。
35人学級にするよ! と萩生田文部科学大臣が宣言したのは「教育に金をまわせよ」というメッセージなんですね。
狙い5:学校の統廃合を回避する
これまでとは、少し毛色の違う話をしますね。
35人学級にすることが学校の維持存続に関わるという話です。
一学年あたりのクラス数が減って1学年1クラスになってしまうと効率性などの観点から近い学校と統廃合した方が良いんじゃないか? って話になってしまいます。
行政的には、統廃合した方が長期目線では校舎の維持管理費が減少するし、教員の人件費がかからなくなるのでメリットがありますよね。
一方でその学校の地域としては、母校がなくなるという心情面の問題、学校との取引がなくなるという経済面の問題など色々な問題があります。
統廃合の一つの要素となっているのが「公立学校の適正学級数」という指標です。
この適正学級数を満たしていない小学校が44%もあります。(平成29年時点)
文科省の学校基本調査によると、平成29年、全国に1万9538校(休校を除く)ある公立小学校の44%に当たる8606校が、9394校(同)ある公立中学校の51・1%に当たる4806校が、適正規模の下限である12学級に満たない学級数だった。
(引用)「適正規模」満たない公立中5割超 進まぬ統廃合、小学校も4割超 - 産経ニュース
これまでの40人学級の場合、一学年の人数が40人以下だと1クラスでした。
41人の場合は、20人と21人の2クラスに分けていたんです。
既に35人以下の学級が9割ほどあるのは、こういう仕組みなんです。
その一方、少子化や過疎化などの影響によって、2019年度の段階で、小学校の学級の9割が既に35人以下となっていた(中学校は4分の1)という現実もあります。独自財源などの工夫で、他の学年でも40人を下回る学級編成を実施している都道府県なども少なくありません。「35人学級」の効果は36人以上の学級を多く抱える大都市圏の一部学校など、限定的なものにとどまります。
(引用)公立小学校「35人学級」へ、手放しで喜べるのか | オトナンサー - (2)
それが35人学級の場合、1学年の人数が36人いれば2クラスに編成できるんです。
そうすると適正学級数が改善されて統廃合されにくくなるんです。
統廃合についてはこちらの記事もどうぞ⇒
文部科学省としてはともかく35人学級になって「助かった」と思っている政治家はいると思いますよ。
文部科学省「35人学級」に隠れた5つの狙いのまとめ
最後に振り返っておきましょう。
- 教員を増やす。
- 児童の学力向上。
- ICT活用の拡大。
- 文部科学省の予算確保。
- 学校の統廃合を回避する。
色々な思惑のある35人学級制度。
現状、小学校の学級の9割が35人以下だと考えるとどこまで「児童の学力向上」に影響があるかわかりません。
ただ教員の人数が増えることによって、先生方の負担が減り、教育の質が向上するということはありそうですね。
それでは、また。