りょうさかさんと

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「大学が入試を変えれば良い」という意見は甘い


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産経新聞の英語民間試験見送りの社説検証を読みました。

(参考)【社説検証】英語民間試験見送り 産経「会話力重視の再考を」(1/2ページ) - 産経ニュース

基本的にどの新聞社も切り口の違いはアレ、それほどおかしなことを言っていません。

むしろ正論すぎてつまらんとも言えるでしょうw

この社説に限らずわたしが個人で観測する範囲でよく見る意見は、

大学それぞれが入試を変えれば良い

という意見です。

これに関して思うところがあるので記事にしておきましょう。

大学それぞれが入試を変えれば良いという意見

「大学それぞれが入試を変えれば良い」という意見はそれこそ前述の記事で産経新聞が訴えていることです。

産経は「言葉尻を捉え受験生不在で批判する泥仕合は避けたい」とした上で、「身の丈」発言よりも制度そのものの問題点を論じ、民間試験の来年度からの実施見送りと制度の見直しを主張した。民間試験導入は「読む・書く」に加え「聞く・話す」の能力を育んでもらおうという趣旨だ。「いくら勉強しても英会話力が身につかない日本の英語教育を変える狙いがある。だが、民間試験を導入するだけで英語が身につくと考えるのは早計だ。英語力を問うなら各大学の個別試験で工夫し、入学後の教育を充実させればいい」と指摘した。

(引用)【社説検証】英語民間試験見送り 産経「会話力重視の再考を」(1/2ページ) - 産経ニュース

「英語力を問うなら各大学の個別試験で工夫し、入学後の教育を充実させればいい」という意見は一見正しそうですが、現実味がありません。

なぜか?

それは大学の入試に文部科学省が口出しできないからです。

2次試験は各大学が決めるもの

基本的に2次試験は、それぞれの大学が入学してほしい学生像に合わせて作成しています。

なので大学入学選抜改革の資料でも、文部科学省としてはガイドラインを出して推進するくらいしかできません。

【大学入学者選抜の基本的な考え方】
大学がどのような選抜でどのような入学者を受け入れるかについては、各大学・学部等の入学者受入方針に基づき実施するものであり、各大学においては、入学志願者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に判定するため、様々な取組みを実施。
文部科学省としても、大学入学者選抜を実施する上でのガイドラインとして、大学入学者選抜実施要項を毎年度、大学に通知し、入学者受入方針の明確化や選抜方法の多様化、評価尺度の多元化を推進。

(引用)(3)大学入学選抜改革に関する資料‐文部科学省2016年6月2日

英語力を問う試験にしろ!!みたいなことは言えないわけです。

これを踏まえると産経新聞は、文科省に出来ないことをしろ!と言っていることがお分かりいただけると思います。

文科省が出来ることことは各大学に対して「こんな学生に来てほしい」とアドミッションポリシーを明示するように促し、多種多様な選抜を導入するように促すくらいなんです。

だからセンターや共通テストがある

一方で多種多様な選抜(AO・推薦など)を推進する中で、文部科学省としては大学を目指す高校生に一定の学力があることを担保する必要があります。

それがこれまでのセンター試験であり、これから導入される大学入学共通テストだったんです。

とびっきりシンプル&雑な言い方をすると

  • 大学側は、好きな入試を作ってください
  • 大学側は、多様な選抜をしてね、文科省からのお願いよ
  • その代わり指導要領が求める学力の測定は、センターや共通テストを活用してね

という位置づけがあるわけです。

タイトルでは「甘い」と厳しい言葉をつけましたが、この位置づけを踏まえると一般の方が「大学が入試を変えれば良い」というのは本質的な意見だともいえます。

ただ現実的には文科省の権限でどうこうできません。

そして、それを新聞の社説で「それぞれの大学が入試を変えろ」というのはとってもイージーだと思います。

文科省の出来る範囲くらい理解してから批判すべきじゃないでしょうか。

それでは、また。