りょうさかさんと

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【書評】学歴社会の価値は?「親なら知っておきたい学歴の経済学」


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大学入試改革で揺れている昨今ですが、子どもの置かれている年齢で保護者の方の不安・心配度合いには、温度差があると思います。

今、高校生のお子さんがいる家庭なら目の前の入試が重要でしょうし、お子さんがまだ小学生以下であれば、まだまだ先の話という感じではないでしょうか。

ただ、あなたのお子さんが何歳であっても、おそらく同じイメージを共有しているのではないでしょうか。

 

それは、小学校 ⇒ 中学校 ⇒ 高校⇒ 大学 というルートが「普通」だと考えている点です

 

本当にそのルートが正しいの? 

そう投げ掛ける本書「親なら知っておきたい 学歴の経済学」について見ていきましょう。

「親なら知っておきたい 学歴の経済学」の内容 

本書「親なら知っておきたい 学歴の経済学」の著者は、西川純教授。

都立高校の教員を経て、上越教育大学教職大学院教授 博士(学校教育学)という経歴の方です。

「学歴の経済学」の前半は、「大学進学は割の良い投資か」どうかについて統計ベースで確認していきます。(本書は2016年発行のため、統計資料もその時点ものになっています)

本書の主張は、シンプルに言えば以下のようなものになります。

  • 大学進学は、トップとそれ以下で投資効果が違う。
  • 最初の就職の4割は、非正規雇用である。
  • 年功序列終身雇用は崩壊する。
  • AIなどの進歩によって代替される職業・技能がある。
  • 天才以外は、ローカルで助け合っていく方が良い。

内容について詳しく知りたい方は、ぜひ本書を読んでみて下さい。

だいたい2~3時間もあれば読めるような分量になっていますよ。

大卒の価値が低下する

わたしがこの本を読んで感じたのは、賛同する部分もあるが、疑わしい部分もあるという点です。

賛同する部分の大きな要素は、大学卒業という学歴がもつ価値の低下に関する部分です。

たびたび本ブログで紹介していますが「未来の年表」という人口推計を扱った書籍では、人口減少により「大学の淘汰が進む」という主旨のことが書かれています。 

既に、2016年度に入学定員割れをした私立大学のうち、44.5%は定員割れをしています。(「未来の年表」no.310より)

おそらく今後、大学は2パターンに分かれるでしょう。

1つ目は、その大学でしか出来ないような高度な講義や研究の提供を目指すパターンです。

2つ目は、なんとしても生徒を集めるために入試を簡単にするパターンです。

本書「学歴の経済学」でも同様の指摘がされています。

では、2つ目のパターンの簡単な大学を卒業した学歴は、企業の面接の際にどれだけ効力を発するでしょうか?

本書と違い、わたしは大卒の価値は残ると考えます

この部分の考え方が本書とわたしの違う点です。

本書では、それほど有効ではないという視点で語られています。

「さほど給料の高くない企業に就職し、奨学金の借金だけ背負うことになる」というのが主な理由です。

わたしの考えはというと「そんな大学であっても、大卒の経歴がなければ就職することが困難になる」というものです。

わたしの推測ですが学歴に意味を失うような状態になっても日本は、ある時期まで「学歴社会が残る」と考えています。

だって夏にネクタイを外すこと一つ、クールビズという掛け声がないとできない国民性ですよ。

おそらく「昔の大学生よりレベルが落ちたなー」と人事担当者が思う程度で、大卒の学歴がなければ中々面接すらしてもらえない会社が多数派を占めると思います。

もちろん一部の企業では採用面接の際に、大学名より大学時代に何を研究・勉強してきたのかを重要視するように変化しているのも事実です

それでも結局、大卒が前提ですよね。

これが、わたしが基本的には、大卒という学歴や大学名の威力は、なかなか消えないと考える理由です。

少なくとも今、中学生・高校生くらいの方は学歴があった方が得する可能性の方が高いと考えます。

あなたは、どう思いますか?

さいごに

本書の巻末には「AI時代の生き方」が書かれています。

新井紀子さんの「AI vs 教科書が読めない子どもたち」でも似たような内容が書かれていました。

「人同士の繋がり」「その人が持つ付加価値」の2点が重要であるという主旨です。

もしかするとAIが発達しても営業マンという職種はなくならないかもしれませんね。

気になった方は、ぜひ読んでみて下さい。それでは、また。