RYOSAKASANTO

教育業界にいる陵坂さんが教育・子育て・DWEなどについて書くブログ

TOEICの大学入学共通テスト辞退の流れは続く


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2019年7月2日、TOEICが英語民間試験を辞退しました。

おそらくこの流れは続くと予想します。

2つの辞退理由

まず、実際のプレス資料や報道を確認してください。ご存知の方はスルー推奨。

TOEIC Testsは4技能を測定できる試験ではございますが、TOEIC L&RとTOEIC S&Wが別々に実施される形態となっております。本システムへの社会的な要請が明らかになるにつれ、それらに対応するためには、受験申込から、実施運営、結果提供に至る処理が当初想定していたものよりかなり複雑なものになることが判明してまいりました。このため、現時点において、協定書締結に向けた大学入試センターとの協議が完了しておらず、当協会として本システム運用開始において責任をもって各種対応を進めていくことが困難であると判断いたしました。

(引用)「大学入試英語成績提供システム」へのTOEIC Tests参加申込 取り下げのお知らせ|プレスリリース一覧|IIBCについて|IIBC

NHKの報道では…

試験は来年4月から始まる予定ですが、このうち「国際ビジネスコミュニケーション協会」が実施する「TOEIC」が、参加を取り下げることを2日発表しました。
取り下げの理由として、事業者は実施に向けた協議を進めるうち、会場の設置や社会的弱者への受験料の配慮など運営の形態が想定よりも複雑で責任を持って対応することが困難になったとしています。

(引用)共通テスト TOEIC参加辞退|NHK 首都圏のニュース

時事ドットコムでは…

同協会によると、TOEICのテストでは、リスニングとリーディング、スピーキングとライティングの試験を2日間で行い、パソコンも使用している。一方、大学入試センターはこれらを1日で実施するよう求めているほか、経済的・社会的な弱者への受験料引き下げの検討や、テスト会場を全国に設けることなどを要望している。

(引用)TOEICが参加取り下げ=共通テストの英語民間試験:時事ドットコム

これらの報道資料からポイントとなる部分は以下の2点でしょうか。

・受験申込から、実施運営、結果提供に至る流れが大変だと想定される。

・会場の設置や受験料の引き下げなどの要望が大学入試センターからあった。

シンプルに言えば「全国に受験会場を用意できる目途がない。『一日で試験を終えて、すぐ結果を出せ。その上、受験料を下げろ』と言われた」ということが要因でしょう。

英検、GTECと比較

前提として現在の状況を確認しておきましょう。

現在、TOEICの受験会場は、全国の至るところ、またどこの高校生でも受験しやすい場所にあるかというとそうではありません。

また受験料も「TOEIC® Listening & Reading Test」は、5,725円 (税込)。「TOEIC® Speaking & Writing Tests」は、10,260円(税込)となっています。

4技能を全てTOEICで使用とすれば、15,985円になります。

比較するために他社の受験料金を見てみましょう。

「英検」なら5,800円~9,800円。(級などによって変わります)

「GTEC」なら6,700円~9,720円。(CBTその他で変わります)

どちらも1万円以下の受験料です。

(参考)2020年度「大学入試英語成績提供システム」利用型 英検®の実施概要|公益財団法人 日本英語検定協会

GTEC【大学入試英語成績提供システム】試験体制・検定料

報道の中には「大学入試センターとの協議」「要望」という文言があることから、もしかすると受験料についても具体的に1万円以下にするようTOEICへ要請があったのかもしれません。

仮に「全国で受験できるようにしろ」「30%以上の値下げしろよ!」と言われていたとすれば、民間であるTOEICとしては設備投資&値下げ要求ですから頭の痛いところです。

また仮に値下げまではせずに済んだとしても、英検・GTECと比較してわざわざ高いTOEICの方を受験してくれる高校生がどれだけいるのかという問題があります。

半数の大学入試でTOEICが使われているものの

TOEICは、既に約半数の大学入試で使われています。

大学入試に既に使われているケースが427校あります。日本大学数は768ですから、56%の大学で使用されている計算になります。

(参考)TOEIC Tests 入学試験・単位認定における活用状況|TOEIC Listening & Reading Test 公式データ・資料|【公式】TOEIC Program|IIBC

一方で、これらの大学はTOEICと同様に英検やGTEC等の活用もされています。

おそらくTOEIC側からすると今回の英語民間試験導入は、こういう大学での利用と同じような形を想定していたのではないでしょうか。

では、どうして今回の大学入学共通テストと大学入試の利用で齟齬が出てしまったのか。

それは、任意と必要の違いです。

任意と必要の違い

これまでの大学入試での活用は、それぞれの大学が独自の基準かつ任意に活用していました。一方で大学入学共通テストでは、必要に迫られた高校生たちが受験するため、会場・料金が公正公平なのか問われてしまいます。

センター試験の利用者数は、毎年50万人ほどです。後継となる大学入学共通テストも同様でしょう。

一方、TOEICの高校生の受験者数は、2017年度のデータによると31,306人(L&R)です。

(参考)2017年度TOEICプログラム、受験者数・平均スコアまとめ…IIBCレポート | リセマム

大学入学共通テストに認められた民間試験は7つあります。大学入学共通テストの受験者の1割がTOEICを利用しただけで5万人。

つまり受験者数が、一気に約1.7倍になるかもしれないわけです。

儲かってウハウハ!! と言う前に設備投資の金額を借り入れできるのか、来年度まで準備できるのか、本当に1割も受験生が流れてくれるのか、という葛藤のせめぎ合いだったのでしょう。その上、受験料を下げろと言われていたわけです。

TOEICの立場からすると「認定してから会場や料金のこと言うなよ」「資格認定の段階で、会場や価格を理由に落とせよ!」というのが本音なんじゃないでしょうか。 

TOEICの続く民間試験は現れる

おそらくこの流れは続くと予想します。

だって、具体的にどことは言わないけど、TOEICより会場が少なくて、受験料が高い検定試験は他にもあるよね…。

TOEICの英語民間試験辞退に対しては、受験生を混乱させるなどの批判も見聞きしました。確かにTOEICの利用を考えていた高校生にとっては残念だと思います。

しかし、高校生の多くには、それほど影響がなかったのも事実でしょう。というのも先ほどのように受験者数の問題です。

前述のようにTOEIC(L&R)の受験者数は3.1万人です。(S&Wだと更に減ります)

この数字は高1~3の合計人数です。仮に高校3年生の人数が1万人だとすれば、センター試験受験者数50万人から計算すると全体の2%です。

一方、GTECの高校生の受験者数は、73万人。

高校生だけの数字は明かしていませんが、英検の中・高生の受験者数は、296.4万人

(参考)GTEC‐資格・検定試験に関する基礎資料(平成27年4月3日)

受験の状況 | 英検 | 公益財団法人 日本英語検定協会

圧倒的な差です。

これは、そもそもTOEICは高校生がメインターゲットではないからです。

またTOEICの勉強をしている生徒が英検を一切受験しないというケースも少なそうです。英検・GTECは学校で受験させられるケースも多いですが、TOEICをそこまで打ち出している高校ってありませんからね。

さて、今回書いたように会場・料金・日程の問題を抱えている検定会社はTOEICだけではありません。

TOEICと同じように高校生がメインターゲットではない民間試験会社も同じ理由で辞退するのではないでしょうか? あくまで個人的な予想です。それでは、また。