りょうさかさんと

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小学校教科担任制の狙いは、理科と英語のため


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2019年4月17日、中央教育審議会の総会についての内容が報道されました。

小・中の義務教育では「小学校の教科担任制の推進と教員免許制度の見直し」「習熟度別指導の充実」。高校では「普通科の改革(コース分け)」「文系・理系科目を横断した教育」が挙げられています。

また全般としては「いじめ・児童虐待」「ICT環境の充実」が挙げられています。

(参考)中教審、教科担任制など議論へ 小中高教育の総合策諮問 :日本経済新聞

今回は「小学校の教科担任制」について。この諮問の背景は「英語と理科」のためだと考えています。

教科担任制とは

教科担任制とは、1人の教師が一つの教科(科目)を担当し複数の学級、学年を指導する形のことを言います。

つまり中学校、高校で行われているような形で指導しようね、ということです。

今回の諮問では、小学校5・6年生での導入が議論されることになります。

(参考)新しい時代の初等中等教育の在り方について(諮問)2019年4月17日(文部科学省)

兵庫県、仙台市、品川区の小中一貫校や福島県いわき市の一部、三重県松阪市の一部など、既に取り組まれている学校もあります。

(以下 該当自治体や学校などのWEBサイトや資料です)

平成24年度兵庫型教科担任制について

小学校高学年教科担任制事業|仙台市

5・6年生の教科担任制|品川区

「平成29年度『学びのスタンダード』推進事業」の推進地域の取組

教科担任制‐平成27年度松阪市立天白小学校

現在の教科担任制の実施状況

では、現在全国の小学校においてどれだけの教科担任制が実施されているのか。文科省の資料を見てみましょう。

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今回、話題となっている高学年のうち6年生の割合を見てみると

「音楽(56.5%)」「理科(47.8%)」「家庭(35.7%)」「書写(26.8%)」「図画工作(21.0%)」「外国語活動(英語)(19.3%)」「社会(15.5%)」…と並んでいます。

「音楽」「家庭」「図画工作」において専科の先生がいることはご自身の経験からもなじみ深いと思います。実は、二番目に多いのが「理科」なんです。

どうして理科の専科が多いのか

理科の専科が多いことの理由は、大きくわけて3つの大変な要素があるからです。

  1. 授業準備が大変
  2. 安全配慮が大変
  3. 理科が苦手な先生が多い

まず「授業準備が大変」という点についてです。授業をする前には、前日に実験器具などの準備を生徒数or班の数の用意をしないといけません。

その際には予備実験をして、実験が上手くいくか、注意点などを事前に確認します。いざ授業となると安全配慮が大変です。授業後は、実験に使った薬品を適切に処理する為、正しい知識が必要になります。

そもそも理科が苦手という先生も多くいます。どうして理科が苦手な先生が多いのか、理由は様々です。単純に虫が苦手だったり、実験が苦手だったり。

文系の先生の場合、高校時代がその分野を勉強した最後の時期になります。その上、取得する免許の種類によっては、大学時代に理科を履修していないケースもありますよね。

先日の「ブラックホールの撮影」に代表されるように理科の話題は、常に情報が更新されていきます。そういう部分も指導の苦手意識に繋がっているのかもしれません。

先生の理科が苦手な理由については、科学技術振興機構理科教育支援センターの「理科を教える小学校教員の養成に関する調査報告書‐平成23年3月」が参考になります。ただ長くなりすぎてしまうので今回は割愛です。

まとめると、理科は「専門的知識・技術」が求められる上に事前・事後の作業が多いことがわかると思います。その解決策として自治体によっては理科支援員を導入したり、校内で理科専科の先生を設定して対応しているわけです。 

外国語専科の前に「国語の専門性」について

理科に限らず、国語も社会も算数も教科の専門性はとっても大事です。

外国語(英語)の話をする前に、専科教員が最も少ない「国語(3.5%)」の専門性について少しご紹介しましょう。これはわたしが実際にお聞きした話です。

国語の教科書には宮沢賢治の「やまなし」や「雪渡り」といった作品が掲載されています。「やまなし」の授業をする前に先生方は、教材研究として作品自体を読み込むなどの準備をします。

それに加えて、教科書に掲載されていない宮沢賢治の他の作品も読み込み、作者の一生や考え方も勉強します。また学校の図書館に、どれだけ宮沢賢治の本があるのか確認し、時には学級文庫に宮沢賢治の本や絵本、写真集を置くといったことをされるわけです。

教科書の題材によっては社会、理科、英語とも関連させて、相互の授業を構成します。とてつもない職人芸ですよね。

どうして国語のケースを紹介したかという理由があります。それは専科が最も少ない「国語」においても、高い専門性が求められていることを知ってもらいたかったからです。

英語ができる先生が足りない

では、母語である「国語」でこれだけの専門性を発揮する先生が授業をしている状況で外国語(英語)の専門性とはなんでしょうか。

英語力、語彙、発音、授業構成、異文化理解、小中高の英語学習の系統性などなど色々な要素が思い浮かびます。

しかし、英語には大きな問題があります。大学時代の免許取得時に学習していない点です。(これから教員になる方は違いますし、中学校の英語免許を取られた方は別です)

これに対応するためにALTの先生や、特別免許状(教員免許がなくても担当する教科の専門的知識・経験・技術技能が高い方を教員とする制度)をもった先生の力を借りているケースがあります。

ただALTの先生も特別免許状の先生にも共通するのは、教員免許を持っていない点です。つまり英語は喋ることができるけれど、教えることについては「別」だということです。

先ほど、日本人の母語である「国語」についての専門性を紹介しました。教員免許を持っていない日本人が皆、同じことが出来ることでしょうか?

英語だって同じですよね。授業の内容は違うとはいえ、ALT、特別免許状の先生が全員出来るとは限りません。一方で、多くの先生は「授業」は出来るけど「英語」は出来ないわけです。

そのギャップを埋める方法がいくつかあります。その中の一つが今回取り上げた教科担任制です。

授業も英語も両方できる先生に複数クラスを指導してもらう。

そして、実際に既にそういう学校があるというのが現状です。

小学校教科担任制の狙いは、理科と英語

2020年から新しい指導要領、新しい教科書での授業がスタートします。

小学校外国語(英語)の授業は、専科がいない限り基本的に担任が全て指導することになります。一方で、理科の授業の課題、働き方改革もあります。

これらを解決する一つのツールとして「小学校高学年での教科担任制」が諮問されたのではないか、とわたしは推測しているわけです。

それでは、また。 

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