完全にMリーグロスです。Mリーグの第一シーズンが3月末に終わりました。
知らない方に説明すると「Mリーグ」とは麻雀のチーム対抗によるプロリーグのことです。Jリーグがサッカーなら、それの麻雀版ですね。
麻雀は現在、冬季オリンピックの室内競技として国際オリンピック委員会にも申請中。将棋やチェスなどと同じ頭脳スポーツとしての位置付けなので、アウトローな競技から少しずつ変わりつつあります。
そんなMリーグにも出ているトッププロの一人、多井隆晴さんの「多井熱」についての書評です。
びっくりしたのは「負けを魅せよう」と考える視点です。
本書の内容
この本はトッププロの麻雀本ですが、いわゆる戦術書ではありません。
多井さんが麻雀プロとして考えていること、特に「いかにお客さんにお金を支払ってもらえる人間になるか」ということが書かれています。
例えば…
・テレビ映りを考えて化粧道具を持ち歩く
・ファンが何を求めているか常に意識する
・内部評価を気にしない
などなど。
なかなか麻雀に興味のない方が手に取りやすい本ではないかもしれませんが、色々な考えに触れることが出来る本になっていますよ。
印象に残ったところ
印象に残った節に「負けをプロデュースする」というところがあります。
麻雀は4人でする競技なので、たった1人が勝者になり、それ以外の3人が敗者になります。確率で言えば、4回やれば3回は敗者になるわけです。
つまり、麻雀という競技は、どんなトッププロでも長い目で見れば勝者であるより敗者である回数の方が多い競技だと言えます。
頭でわかっていても敗者となった瞬間はとっても悔しいはずです。でも、プロであるならお客さん(視聴者)のためにそんな自分をどう見てもらうかまで意識する、ということが書かれていて驚きました。
負けた時のことまで考えてプレイしている競技ってプロスポーツでも、なかなか聞かないですよね。
麻雀のパフォーマンスとは
頭脳スポーツに分類される麻雀に現在、勝利パフォーマンスはありません。将棋と同じですね。
将棋で王手するたびにパフォーマンスをする棋士がいないのと同様に麻雀で上がる度にパフォーマンスをする選手はいません。
「熱闘! Mリーグ」というAmebaTVの番組でロバートの山本さんが「麻雀プロは勝った時に何かパフォーマンスとかしないんですか」という質問をしたことがありました。
最初聞いた時は何言ってんだよ? と思いましたが、今思い返すとエンターテイメントの世界を生き抜いてきた山本さんならではの指摘ですよね。
サッカーではゴール後にパフォーマンスがありますし、野球ならホームランを打った後にガッツポーズやパフォーマンスをすることがあります。
「麻雀格闘倶楽部」などの麻雀ゲームでは、上がった時に雷が落ちる演出があったり、麻雀漫画だとキャラクターの顔のアップと共に点数宣言をしたりします。
ただ現実の麻雀だと難しいのかもしれません。
頭脳スポーツということもあり身体の動きが少ない面、対戦者に敬意を払う面、そういったことが難しさの要因でしょうか。
Mリーグ2018ファイナルシーズンの最終日に解説の土田浩翔プロが「麻雀は、敗者が勝者を作る」と言っていました。
麻雀は運も左右する理不尽な競技です。
その理不尽に振り回されて、負けたプロの姿を見て、胸を締め付けられたファンはわたしだけではないはず。
天を仰ぐ姿。視線を落とす姿。唇を真一文字に結ぶ姿。
エンターテイメントは勝者だけでは成立しないことを「負けを魅せる」という言葉から改めて考えさせられました。それでは、また。
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