RYOSAKASANTO

教育業界にいる陵坂さんが教育・子育て・DWEなどについて書くブログ

【書評】空飛ぶタイヤ、その圧倒的面白さとは?


正月休みに「空飛ぶタイヤ」(著・池井戸潤)を読みました。

池井戸潤ファンでもページが多い!と敬遠しがちな本作ですが、10数時間で読了できるのでぜひ、ご一読ください。個人的には池井戸本のベスト・オブ・ベストです。

ストーリー

走行中のトレーラーから外れたタイヤによって一人の女性が亡くなった。事故の引き金となったトレーラーを所有している赤松運送の社長、赤松徳郎が主人公。

トレーラーの製造をしたホープ自動車の調査による原因は、「整備不良」。

警察による家宅捜査。大口取引先の離反。銀行の貸し剥がし。被害者遺族による制裁的慰謝料の請求。子どもへのいじめ。

ホープ自動車社内の権力闘争、銀行の思惑が絡み合う中、本当に事故の原因は「整備不良」だったのか赤松は調査に乗り出す。

物語終盤まで赤松は追い詰められますが、最後は、ご存知「痛快の池井戸本」です。オセロの駒が黒から白へ一気に反転していくように大逆転劇が起こります。

被害者遺族との和解では、涙腺崩壊間違いなし。ラストは、うっすら笑みを浮かべちゃうような読後感に包まれますよ。

元ネタは三菱リコール隠し

本書「空飛ぶタイヤ」は、2004年に実際におきた「三菱ふそう」のリコール隠し・横浜母子3人死傷事故を元に書かれています。この頃の報道は、とても大きかったことを覚えています。

残念なのは、現実と物語は違う点です。

事故を起こした運送会社は、廃業されたようです。(ネット情報ですが…)

また被害者遺族が三菱自動車工業へ起こした民事裁判では、クソみたいな弁護士に巻き込まれています。

なお、この事故で死亡した女性の遺族である母親が、約1億6550万円の損害賠償を三菱自工に請求する訴訟を起こした民事訴訟では、2007年(平成19年)9月、三菱自工に550万円の損害賠償支払いを最高裁判所が命じ、確定判決となった。このとき、原告の訴訟代理人を担当した青木勝治弁護士は、損害賠償金を代理人である自分の銀行口座に振り込ませ、遅延損害金を含めた約670万円を預かった。しかし、訴訟当初の約1億6,550万円の請求額を基に、弁護士報酬額を約2,110万円と算定し、「自分が預かっている約670万円と相殺する」と通知して、原告に対して損害賠償金を一切渡さなかった。

(引用) 三菱リコール隠し - Wikipedia

なんで被害者遺族の裁判でこんなこと出来んの? 

wikiによると横浜弁護士会が弁護士業務停止6か月の懲戒処分をしたようなんですが、被害者のことを思うと悲しくてなりません。

この弁護士さんも2011年にお亡くなりになられました。

感想

現実の事故が下敷きにあるということもあり、池井戸潤さんの怒りが行間から噴き出しているんですよね。

また赤松だけではなく、ホープ自動車の沢田、ホープ銀行の井崎がサブ主人公として物語を推進していくのがとっても面白いんですよね。

沢田の事故すら利用しようとする社内政治、権力闘争。

井崎の銀行員としてのプライドと系列企業、上司の圧力のせめぎ合い。

そして、一つの事故を赤松の視点からだけではなく、加害者企業の視点(沢田)、銀行の視点(井崎)で描かれている点です。

これによって事故が立体的に描かれることになるわけです。もちろんその中心にいるのが残された被害者遺族の方です。

物語後半、「この出来事を忘れないことが最も大事だ」という主旨の台詞がある人物から発せられるのですが、これこそ池井戸潤が本書を持って伝えたかったことなんだと感じました。

未読の方はぜひ。もし小説が長そうと敬遠されるのなら映画版、WOWOWのドラマ版があるので、まずそちらから見てみてはいかがでしょうか。

映画版は、長瀬智也さん、ディーンフジオカさん、高橋一生さんらが演じています。

ドラマ版は仲村トオルさん、田辺誠一さん、萩原聖人さんらが演じています。

抽象化

「空飛ぶタイヤ」を読んで感じたことや面白さを抽象化したいと思います。

ファクト:三菱リコール隠しを元に、経済小説として成立している。

抽象化:現実とフィクションの境目を行ったり来たりしながら最終的にはエンタメとして結末を安心して楽しめる。読者の正義感、道徳心に共感しやすい。似たような状況、葛藤を見聞き・体感するので自分を投影しやすい。

転用:一つの物事や主張を複数の側面から描くことで物事が立体的に見える。ブログであれば1つのことを1つの視点から書くのではなく、別の視点から描く。例えば、小学校英語教科であれば児童保護者の視点、教育業界の視点、文科省の視点から書く。

この辺りいずれ調べて書いていきたいと思います。では、また。