今回は「行列」について。と言っても高校数学の行列ではなく、ラーメン屋などの前に並んでいる「待ち行列」の「行列」のことです。
行列って東京は多いですよね。
お店に入るのに並んだり、食事を食べるのに並んだり。ディズニーランドなんか並んでいる時間がかなりの割合を占めそうです。
行列はなくすべきなんでしょうか? 今回はそんな課題研究にまつわるお話。
(Photo by JOSHUA COLEMAN on Unsplash)
ある課題研究のテーマ
この疑問は、ある進学校の高校で行われた課題研究の作品発表から生まれたものです。
その課題研究は、地元のお店の有名な食品(仮に食パンとしましょう)の売上拡大から地域振興を目指したものでした。
その食パンを食べるためには毎日行列ができ、ネット通販は3ヵ月待ちという状況でした。
またその食パン(仮)には地域の資源を使われていました。
つまりそのお店の売上拡大はそのお店だけに留まらず地域の発展に繋がるということです。そして、そのお店に対して高校生ができる提案は何かということが課題研究のテーマでした。
高校生の提案内容は、地元のお店を機械化し、生産効率を上げることで売上拡大を目指すというもの。
高校生たちの研究(インタビュー)によるとそのお店は非常に手作業が占める割合が大きかったそうです。
生産数を増やし、売り逃がしを減らすというアイデアで、問題を正面から解決しようとする方法ですよね。
行列や待ち時間を解消すべきなのか
この結論自体にケチをつけるつもりはありません。高校生がグループで必死になって考えたことです。特に課題研究は結果よりもそれに取り組んだプロセスに学習内容が詰まっています。とはいえ、少し勿体無いとも思いました。
そこで、わたしは彼らに質問をしました。
「行列ってなくさなきゃいけないかな?」
「はい、待つ時間がない方が絶対にいいです!!」
「僕もお客ならそう思うよ。でも、お店にとってはどうだろう? 『注文から3ヵ月待ち』って、とってもインパクトのある宣伝文句に使えるとも考えられないかな?」
こう投げ掛けた時の彼らの反応は様々でした。
「いや、それでも待ち時間は解消されるべきです」
「あっ、思いつかなかった。確かにそうかも」
答えは一つではない
繰り返しになりますが、このお話は、高校生が間違っているとかわたしが正しいとかそういう話ではありません。(経費と実現性へのツッコミは誰かしてあげた方が良いと思いますが…)
学校教育では、答えがたった1つのものを導き出すことを訓練します。それはとても大切なことなんですが、現実社会は答えが一つだとは限りません。それを研究を通して学べるのが課題研究の大きなメリットです。
今回の場合なら、行列を解消すべきかどうか。解消する手段は、機械化が適切なのかどうか。例えば、機械化以外にも「店舗を増やす」「人を多く雇う」という選択肢もあるはずです。
もしかすると、ここまで出てきたアイディから少しずつ良いとこどりする方法だってあるかもしれません。
安価に機械化できる工程がないか見直し、既存の店舗以外の配達やイベントでの販売など露出機会を増やし、その為の人員増を行う。これはほんの一例ですが、やり方は様々あるでしょう。
また行列を解消せずに、それをセールスポイントとして宣伝・発信する方法だって考えられますよね。
例えば、お店にインタビューを行い、客層を調べます。実際に一日張り付いて調査しても良いでしょう。
そこからわかった客層に対して有効な宣伝方法、販売方法がないのかを調べ提案する。これも立派な課題研究です。
まとめ
通常の学校教育とは違い、答えは一つではなく無数にある状況から自分たちの答えを導きだす経験ができることが、課題研究に取り組むことの大きなメリットです。
もちろん教科教育でも、似たようなアプローチがゼロだというわけではありません。
しかし、課題研究では、論文やパワーポイント、ポスターセッションなど他人に伝えるように言語化・図式化といったアウトプットを行います。
このアウトプットって一番学ぶのは自分達だし、社会に出てから求められる能力ですよね。
また課題研究を通じて、同級生と協力しあいながら現実社会に関わろうとする学びを経験できるのと、できないのでは大きな差があるかもしれません。
一応、大学入試でもプラスになりますからね。詳しくはこちらをどうぞ。
保護者の方も中学生も高校の志望校選びの時期のはずですよね。進学実績から費用まで色々な観点で検討をされていると思います。今お持ちのその観点はどうぞ大事にしてください。
ただ、もし迷ったらこの課題研究、探求活動に取り組んでいるかどうかも調べてみると良いと思いますよ。高校時代に経験できるって素晴らしいことだと思いますから。では、また。