学校には教員免許を持たなくても授業をすることのできる人がいます。色々なパターンがありますが、もっとも多い例はALT(Assistant Language Teacher)です。
ALTは字面の通りあくまでアシスタントであり、ほとんど教員免許を持っていません。
2020年の小学校の英語教科化では、ALTの先生の重要度はさらに増していくのは必至です。なぜなら日本人の学級担任が英語に堪能だとは限らないからです。
ALTの先生に頼るのは正しいことです。そういう記事を以前書きました。
しかし、だからと言って丸投げして授業から逃げないでくださいね、というのが今回の主張です。
(Photo by NeONBRAND on Unsplash)
免許をもっているALTの数
主張の前に状況の整理をしましょう。
以前も紹介しましたが全国にALTの先生は約18,000人ほど存在します。(平成28年データ)。
実は教員免許を持っていなくても教育委員会が相応しいと判断すると特別免許状というものが発行できます。
平成27年度の数については以下の資料を見て下さい。
これを見るとまずALT18,000人中、約100名しか免許を持っていません。もう%とか計算する気もおきないくらいわずかです。
しかも校種は中学校、高校のみ。小学校は堂々たる0という数字です。この平成27年度から仮に数字が増えていたとしても劇的に増加しているとは考えにくい状況です。
一方で、今の多くの小学校教員は「英語」の力を問われずに教員免許を取得しているのが実体です。そこで、例えば東京都では小学校英語のコースを作りました。行政としては今後の状況に対応すべく採用試験を変えているわけです。
それでも毎年の合格者は30名。東京都全体の教員の割合から見れば微々たるものです。また英語コースで教員免許を持った先生が、実戦経験を経て、一人前になるのには教員になってから2~3年待つことになります。
ALTに頼るのは良いけれど任せきりにしないで
このような状況で、当たり前のことですが小学校の先生は1教科だけを教えるわけではありません。
国語、算数、理科、社会、生活科、道徳、音楽、体育、図工、総合の時間…
これだけの教科の指導を抱えた状況でALTの先生に英語力という部分で頼るのは仕方ありませんし、むしろ頼るべきだと言えるでしょう。
ただたまに聞くのが、ALTの先生が授業をしている間、担任が教室の後ろでノートなどの点検をしているケースです。
わたしはこのケースを聞くと教員免許ってなんだろう? と疑問に思うんです。
この疑問には2つの側面があります。
母語なら外国人に教えることが出来るのか?
教員免許を持たないALTの方が児童に英語を教えるということは、言い換えればその辺の日本人が、海外の子どもに日本語を教えることと同じ意味です。
これでしっかり日本語を教えることができるでしょうか?
家庭教師の経験があったり、外国語教育の指導経験があればできるかもしれません。それでも、では専門の訓練を受けてきた人と同じ授業ができるか? というと違うと思います。
また家庭教師や指導の経験がない方には、そもそも難しすぎると思うと思います。
これはALTの方も同様です。18,000人のALTの方が語学教育を専門にしてきた方ばかりではありません。
もちろんALTの方も「研修」を受けています。ALTになりたいと思った方は、派遣会社に登録し、そこで「研修」を受けます。
しかし、わたしの知る限り「研修」と言ってもe-ラーニングタイプの講義を聞くことであったり、期間が1週間程度だったりです。
到底、これで授業が出来るようになるとは思えません。だからALTの授業は「英語を使った遊び」に逃げがちという部分があると思います。(補足ですが「遊び」自体は否定していません。そればかりで良いとは思わないということです)
100歩譲って、仮にこの研修である程度の授業ができるようになるとしましょう。そこで次にモヤモヤと疑問が出てくるのは授業が出来れば良いのか? ということです。
授業が出来れば良いのか
教員は授業が出来れば良いだけなのでしょうか?
授業を出来る方は教員だけではありません。
一番すぐに思い浮かぶのは塾講師の方ですよね。林修先生を例に出すまでもなく、授業名人と呼ばれる方は数多く存在します。そんな彼らは教員免許を持っている必要はありません。(持っている方もいると思いますが)
小学校の先生は英語が出来ないから、ALTに丸投げも止む無しとお考えの方もいるかもしれません。
では、算数が苦手だから、理科が苦手だから、こうやって外部の方に全部丸投げしても良いのでしょうか。
極端なことを言えば、ALTに授業の丸投げが許されるのならスタディサプリに代表される動画授業に授業を丸投げしても許されるのではないでしょうか。
(*この動画授業の是非については、また別の話。)
教員免許って何なのか
教員免許は更新が必要です。先生方は多忙な中、時間を捻出して更新のための研修などを受けています。
一方で、(ほんの一部の方だと思いたいですが)教員免許を持たない方に外国語の授業などでは明け渡してしまいます。
教員免許って何なんでしょうか?
わたしはこういうエピソードを聞くたびにいつも考えてしまいます。まだ明確な答えは出せていません。教員の方も、そうでない方も一度考えてみては如何でしょうか。
では、また。
(念のため補足)わたしはALTの否定するわけではなく、活用していくべきだというスタンスです。またALTは業務委託契約の関係上、教員から直接指示やお願いが出来ないケースもあることを知っています。おそらくALTに授業を丸投げしているケースは2020年の小学校英語の教科化に向けてドンドン減っていくでしょう。文科省は担任が主導で授業をしなさいと方針を出しています。