りょうさかさんと

教育業界にいる陵坂さんが教育・子育て・DWEなどについて書くブログ

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学校の統廃合が進まない理由の1つは「政治家」


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どうも陵坂です。先日の産経新聞に以下のような記事が載りました。

「適正規模」満たない公立中5割超 進まぬ統廃合、小学校も4割超 - 産経ニュース

今回はそのことについて少し解説していきましょう。結論から書くとその1つの理由は「政治家」さんです。

(Photo by Joakim Honkasalo on Unsplash

ニュースの内容

とてもシンプルにニュースの内容を言うと…

「公立中学校の適正学級数12~18を半分の学校が下回っているよ」ということです。

適正学級数とは全学年の合計ですから中学校なら1学年につき4~6クラス、小学校なら1学年につき2~3クラスが適正だろうということです。

この数字は文科省が定めています。

「ある程度の人数がクラスにいる方が学習効果が高い」「いじめに限らず人間関係を学ぶためにもクラス替えの出来る人数のいる方が良い」などの理由があります。(この理由は今回の本題とは違うので参考程度で。)

1学年2クラスって1学年何人いたら良いのか

感覚的にも「ある程度の人数の子どもがいる方が良いよね」と思われると思います。一方で「少子化だから仕方ないのかな?」とも考えてしまった方もいると思います。

そもそも1学年2クラスって何人いたら成立するんでしょうか?

答えは、41人です。

実は「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」によって1クラス当たりの上限人数が40人と定められています。

なので、40人なら1クラス。

41人なら「20人」と「21人」の2クラス。81人なら「27人」×3の3クラス編成となるわけです。そして、121人なら「30人」×3と「31人」の4クラス編成となります。

つまり小学校なら1学年41人、中学校なら1学年121人が文科省の定める適正をクリアできる最低人数なわけです。

小学校2~3校の児童が中学校に進むので一見簡単にクリアできそうに見えます。しかし、私立中学校という選択肢もあるわけでそうは簡単にいかないんです。

東京都の地価の高い地域(港区や中央区や目黒区などなどの一部)の小学生の40%~50以上が私立中学校に行くと言われています。

どうして統廃合は進まないのか

このような状況で、しかも日本は少子化全開。「子どもたちの学び」も問題ですが、同時に税金もかかることを考えると統廃合を考えざるを得ないのが現状です。

それにも関わらず、統廃合が進まないのはどうしてなのでしょうか?

上記の産経新聞では以下のように述べらています。

小中学校で統廃合が進まないのは地元の反対が大きいことが主な理由だ。国も自治体などに統廃合や、近隣の学校と連携することなどを求めているが、学校の設置や運営は地方自治体に権限が与えられており、思うように進まない現状があるという。

この地域の反対っていうのは「自分の卒業した学校がなくなってしまう」という気持ちからなのかなーとかなんとなく想像ができますよね。

また学校には制服、文房具、教科書、宿泊行事の貸し布団など様々なマネーが動きます。いわゆる既得権益です。それがなくなるとなったら地域から反発があるのも想像出来ますよね。

心情的にも金銭的にも地域は、学校の統廃合に否定的になるのは当然の流れだと言えるでしょう。

でも、国(文科省)の方針もあるわけです。ポイントとなるのは上記引用文の「…地方自治体に権限が与えられており…」の部分です。

これ政治が絡む問題なんです。

といっても何か政治家が悪いとか、癒着しているとか、そういうことではありません。

政治家が理由とはどういうことか

東京都を例にしましょう。

東京都から誕生する政治家は大きく分けると「区議・市議」「都議」「区長・市長」「知事」「国会議員(衆参)」の4パターンがあります。

この中で特に「区議・市議」「都議」「区長・市長」の多くは、自分が育った地元から出馬し、選挙を戦ったのちに議員となりますよね。(「知事」「国会議員」もそういうケースがありますが、政局的な要素が強いでしょ。実際、小池百合子知事は兵庫県芦屋市出身だし)

これ、どういうことかというと「区議・市議」「都議」「区長・市長」は、地元の人達に支えられて選挙戦を戦うわけです。この地元の人たちってその議員の同級生・保護者だったり、その議員が大人になるまで携わってきた人達なんです。

そして、その議員も必ず小学校、中学校を卒業しています。

議員が公立小・中学校の卒業生であれば支持者の多くも同窓生ということです。

流れとしてはこうです。

行政が区全体、市全体のバランスを見て、統廃合をしようと計画を立てます。廃校になる学校の地域の人達は、心情的・金銭的理由から反対します。その地域の人達が頼るのが地元の議員さん。

すっごい大雑把に書くとこういう感じ。

そこで政治家たちは、支持者からこう言われるわけです。

「お前、自分の母校すら守れなくて地区の行政を動かせんのかよ?」

これを言われて母校を統廃合でなくしちゃったらどうでしょう。その政治家は、次の選挙で支持を得て、投票してもらえると思いますか? 

「サルは木から落ちてもサルだが、政治家は選挙で落ちればただの人」みたいな言葉を聞いたことがあると思います。自分が当選している間だけは統廃合をストップして、自分のあとの政治家がすれば良い。そう考えるのが普通の政治家です。

子どもたちのこと、税金の使い道、地区の住みやすさ、学校再編成を考えればした方が良いってわかっていても選挙が怖くて政治家がストップする。これが統廃合問題の一つの理由。

じゃあ、政治家が悪いのか?

なんか政治家が悪いように受け取った方もいるかもしれません。

では、これって政治家が悪いのでしょうか? 

統廃合自体も必ずすべき、絶対にしてはいけないという話ではありません。文科省の方針があるものの厳密に言えばケース・バイ・ケースの案件でしょう。

また文中にも書きましたが、政治家個人の思惑がなければ、区民・市民の声を反映して動いているだけとも言えます。行政の至らない点、察知できない点を拾い上げて、行政に働きかけるのも政治家の仕事の一つです。

政治家が悪いのか、それを後押ししたそこに住む人達が悪いのか。これは一概には言えないということです

ただ1つ言えることがあります。統廃合の反対には尽力する、けれど学校のエアコン設置は否定する。そんな政治家が仮にいたとしたら、注意が必要です。

理由によっては「自分の政治生命」は大事でも「子どもの命」は大事ではないってことですからね。

もしあなたの地元で母校の統廃合が起きたらどう思いますか? ぜひ考えてみて下さい。では、また。 

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