陵坂と考察と

教育関係会社員が教育を中心に考えたこと、思ったことを書きます。

MENU

「さよなら、おっさん」が象徴する「失われた平成」

スポンサーリンク

スポンサーリンク

f:id:ryosaka:20180902072515j:plain

どうも陵坂です。「死ぬこと以外かすり傷」を読んでいて思い出すことがありました。

少し前ですが「NewsPicks」の電車中づり広告で「さよなら、おっさん」という見出しを使って物議を醸しました。

キャッチコピーは話題になることが目的ですから、物議を醸しだした時点で成功です。「悪名は無名に優る」をまさに体現しているわけです。

今回は、このキャッチコピーから考えたことを書いていきます。結論から書くと20年以上前からこの主張はされ続けているが、何も変わっていないということです。

 (Photo by Warren Wong on Unsplash)

「おっさん」の定義

まず「さよなら、おっさん」で述べられているおっさんとは何をさすのでしょうか。

NewsPicks編集部副編集長のコメントを引用させていただきましょう。

NewsPicksでは、古い価値観に凝り固まって新しい価値観に適応できない、 過去の成功体験に執着し既得権益をふりかざす、序列意識が強くて自己保身的、よそ者や序列が下の人間に対して非礼など、一言で言えば「新しいことを学ばない(アップデートしていない)」存在を“おっさん”と定義しました。

(引用)「おっさん社会」が日本を滅ぼす

つまり「性別に関係なく、過去の経験や慣習、価値観に縛られている人」です。

こういう「人」はすぐに思い浮かびますよね。身近な会社にもいれば、テレビで問題になった日大関係者の皆様、相撲協会、ボクシング協会の会長、今だと体操協会でしょうか。企業のデータ改竄や隠ぺいの報道もそうだしセクハラ事務次官、タクシーに一緒に同乗したらオッケーでしょと主張した国会議員さまも全員同じですよね。

「まだこんなアホなことしてんの?」と思ってしまう人達は間違いなく存在します。

ただこの広告への批判もあります。 

さよなら、おっさん批判

批判として、例えば対立構造を煽るプロパガンダ自体がいけないという指摘はごもっともだし、おっさんを一括りにすべきではないみたいな批判もあります。

確かに前段で書いたような例は、ほとんどおっさんかおじいちゃんです。いわゆる老害と言われる人達です。

ただ当たり前ですが、おっさん、おじいちゃんにも優秀で老害どころか未だに先駆者としてチャレンジし続ける方もいるわけです。

じゃあ、「さよならおっさん、おばさん」だったら良かったのでしょうか? 

おばさんだとジェンダー系の方から叩かれるかも知れないし、おっさんたちの心にはあまり刺さらなかったのかもしれません。

20年以上前は「おばさん」だった。

実は今回の「NewsPicks」の主張は別に真新しいものではありません。今回の「おっさん」は村上龍さんが定義した「おばさん」の条件とほとんど同じだからです。

村上龍さんの小説「昭和歌謡大全集」はおばさんと青年たちが殺し合うという無茶苦茶だけど滅茶苦茶に面白い小説です。松田龍平、安藤政信、池内博之、岸本加代子といった名役者たちが演じ、映画化もされました。

その小説の中でこんなセリフがあります。

「おばさん達は、難しく言うと、進化するのを止めた生きものなんだ、若い女はもちろんのこと、若い男も中年の男も、子供だって、進化しようという意志をなくすとその瞬間におばさんになってしまうんだ、それは恐ろしいことだよ、誰も気付いていないが、恐ろしいことだ」

(幻冬舎版文庫本 p.220より)

村上龍さんは「進化するのをやめた生き物」、「NewsPicks」は「新しいことを学ばない存在」を「おばさん」「おっさん」と定義しています。

性別は違いますが、ほとんど同じ主張なわけです。

性別の違いや小説とWEBサービスの広告という媒体の違いに時代背景が象徴されているようもに感じます。ただ、この時代背景の考察は本題ではありません。

またこのような直接的なメッセージ以外でなければ小説、映画などでよく取り上げられるテーマでもあります。

例えばドラマ「半沢直樹」なんかも「進化しない上司との闘い」「アップデートしない銀行組織」との闘いだと読み取ることもできます。 

失われた平成

バブル崩壊以降の日本経済を「失われた20年」だと言います。

村上龍さんの「昭和歌謡大全集」の単行本発売は1994年(平成6年)です。「昭和歌謡大全集」の映画化は2003年(平成15年)。今回の「NewsPicks」は2018年(平成30年)ですから24年前から約10年ごとに主張されるテーマなわけです。

おそらくこの前から似たような主張はあったんではないでしょうか。

つまり「失われた20年」と同様に平成の間ずーーーーっと「進化しろ」「アップデートしろ」「老害になるな」と言われ続けていて、それでも未だにバブルの成功体験から抜け出ることの出来ない人達が老害と化しているわけです。

(残念ながら村上龍さんの主張を受けた若い世代が、今、「NewsPicks」に「アップデートしろ」と主張される世代になっているとも見ることができますし、たかだ1メディアの力の限界とも言えるでしょう。)

この10年後もたぶん誰かが、違ったメディアで同じ主張をしているのか。その時はもしかするとこの「NewsPicks」の主張に賛同していた人が叩かれる立場になっているのかもしれません。 

まとめ

「水は低きに流れ、人の心もまた低きに流れる」

これは「攻殻機動隊S.A.C2ndGIG」(2004年)というアニメのクゼという登場人物の台詞です。

人間は「楽に楽に」と最適化しようとする生物です。それ自体は悪いことではなく、文明の発達に寄与してきました。しかし、一方で変化を嫌うということでもあります。

わたしだってそうです。

10年後がどうなるのか、世界がどうなっているのか誰もわかりません。また世界に働きかけるのは容易ではありません。

そんなことより、まず自分です。

「変化しないのは死体だけ」

そう言ってカルロス・ゴーンは日産を生まれ変わらせました。

自分しか気付かないような「ちょっとした成長」を毎日毎日、丁寧に大事にするように生きていきたいもんですね。

昭和歌謡大全集は映画版も滅茶苦茶面白いのでオススメです。

じゃあ、また。