文科省から発表された大学入学共通テストの民間英語試験の利用についてのお話。
個人的な感想はまだこんなことも決まってなかったの? って感じですが不祥事続きの文科省ですから仕方ないのかもしれません。
民間の英語4技能試験の結果の提供について(平成30年8月10日):文部科学省
詳しい内容はリンク先を見ていただくとして、結論から言うと条件によっては2年生の成績を利用できますよ、という方針です。
今回はこの背景について考えてみたいと思います。
提示された3つの疑問
どんな場合に高2の成績を活用できるのでしょうか。実際の本文を見てみましょう。
・受検に極めて不便な地域にお住まいであるなど負担の軽減が必要な家庭の受験生で、高校2年の時点で十分な成績(すなわち、文部科学省が公表しているCEFR対照表のB2以上に該当する結果)を得た人
・病気で長期間入院しているなど受検の機会が得られない人
これらの例外は、条件に当てはまる限られた場合を想定しているものであり、大学入試のために英語4技能試験を受検することを高校2年の時点で促すものでは全くありません。
(引用)民間の英語4技能試験の結果の提供について(平成30年8月10日):文部科学省
これに対して以下の2点の疑問が出てきます。
・どうしてCEFRB2レベルという基準なのか?
・受験に極めて不便な地域(離島、へき地)を例外措置とする理由は?
わたしは文科省の関係者ではないので、明確な答えを持っているわけでありません。
ただこのような推測が出来るのではないか、ということを書いてみたいと思います。
B2レベルという基準
どうしてB2じゃないといけないのでしょうか。B1ではいけないのでしょうか。
なんか某議員さんみたいな発問ですが、とっても自然な疑問ですよね?
(ちなみにCEFRのB2レベルとは英検準1級レベル、B1は2級レベル)
それを考える前に全国の高校生の英語力について振り返りましょう。こちらについては以前のこの記事でも取り上げました。
高校生の半数が私立中学校入試の英語を解けない? - 陵坂と考察と
現在の高校生の卒業時の英語力について英検準2級程度~2級以上は高校生の50%程度となっています。
当然3級以下も50%ということになるのですが、では、準1級以上の割合はどうかというとかなり少ないと思います。詳細な数字は不明ですが…。
次に英語力という観点から英検を見てましょう。英検さんのサイトによると以下のようなことがわかります。
英 検2級 高校卒業時
英検準1級 大学中級程度
(参考)各級の目安 | 英検 | 公益財団法人 日本英語検定協会
つまり、この基準を満たす生徒って高校2年生時点で大学中級レベルの英語力があるってこと。
もう試験よくね?
そう文科省が言ってあげたくなる気持ちもわかるような(笑)
とはいえ、現在の情報では大学入学共通テストの民間試験をどの程度加点するかは大学次第というアバウトなもの。
1度しか受けないという判断は受験生本人は不利にはなりますが、他の受験生の有利にはなりにくいわけですから、まあ、いいじゃないの、というところなんでしょうか。
一方でこのように提示した情報から、2級の生徒は一定数いることと「高校卒業時程度」の英語力を特別扱いすべきなのかという問題があるのだと思います。
つまり人数とレベル的な問題で受験生間で不公平になる可能性が高いという判断なんでしょう。
受験に極めて不便な地域(離島、へき地)
この問題の1番の要因は、お金を誰に渡すべきか? という部分ではないでしょうか。
まず民間試験の種類が多く、金額もバラバラです。またどの程度の範囲を負担すべきなのかの線引きも難しいです。へき地・離島なら交通費・宿泊費はどうすべきなのか。
例えば、東京都新島の場合、往復2万円近くの費用がかかります。
民間英語検定の料金はというと現在の価格だとしてもケンブリッジの27000円から英検の8400円まで受験金額の幅があります。(この金額も上昇する可能性が示唆されています)
学校の補助金? 生徒への個別?
この金額をどのように手当すべきなんでしょうか。へき地・離島の場合は進学希望する生徒全員が対象となるわけですから学校への補助金とすべきなんでしょうか?
効率だけを考えれば補助金としてお金を渡し、修学旅行・郊外学習のスケジュールの中で1日外部試験を入れることで節約しつつ活用していただくのが良いような気がします。
しかし、文科省から各高校の行事に口を挟むとそれはそれで問題になりますし、学校側が勝手にやってバレたら補助金の不正利用になる可能性があります。
また行政や学校が民間英語試験のどの社を受けるか指定するのも問題になります。じゃあ、生徒それぞれが自由に受験するのかとなると学校への補助金は現実的ではないような気がします。
へき地・離島など生徒に個別に支払うべきなのでしょうか。
これは性善説に立たないといけないかもしれませんが、不正利用を危惧しなければなりません。事前支払いならケンブリッジ受けるって決めて、実は英検を受験させて差額をポケットにいれるなんて発想が出ないとも限りません。
領収書精算の事後給付にするとわざわざ高い民間試験を受けるかもしれないし、と悩みの種はつきませんよね。(税金ですからね)
そうなると1回は自腹で受けてもらって「大学中級程度に成績が良ければ免除よ」という考え方の方が馴染みやすいといる理由があるのかもしれません。
吉岡里帆さん主演のドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」も毎週見ていますが、なかなかお金を渡すって難しいんでしょうね。こればっかりは浅い推測の域を出ないです。
大阪市の塾代バウチャー事業などを考えると受検に極めて不便な地域への金銭的補助については国よりも地方自治体が取り組む方が現実的だと思います。
ただ文科省がそれを言える立場ではないでしょうし、小・中学校にエアコンすら配置できていない地方自治体には期待できないでしょうね。じゃあ、また。