どうも、りょうさかさんです。
ようやく「スマホが学力を破壊する」(著・川島隆太)を読み終わりました。
この本の帯には「スマホをやめるだけで偏差値が10上がります」と書いてあります。
10上がります! 大事なことなので2度言いました。
断言ですよ。
断言。
力強いですね。
一方、スマホを使って成績を上げる方法が書いてある漫画があります。
みなさんご存知の「ドラゴン桜2」(三田紀房)です。
スマホ不要 VS スマホ活用
この真逆の主張をする両者を我々、大人はどう受け止めて子どもの教育に携わると良いのでしょうか。今回はそんなお話。
「スマホが学力を破壊する」の内容
まず折角読んだので「スマホが学力を破壊する」の内容について紹介します。
全部で11章構成の内容ですが、タイトルと帯の内容に関わる話は1章~7章です。
章ごとの内容を要約するとこんな感じ。
1章 スマホを使うだけで成績が下がる!?
川島教授の調査と文科省のデータとの比較が行われます。
2章 睡眠不足が成績低下の原因か
スマホが本当に原因かを検証すべく、睡眠不足、家庭学習との関係などを調査します。
3章 スマホが先か、学力が先か
学力の低い生徒ほどスマホを良く使用するのか、それともスマホを使うことで学力が下がるのか調査します。
4章 LINE等インスタントメッセンジャーの影響
3章でスマホに原因があるとし、海外の研究などを引き合いに紹介します。ここでスマホを捨てれば偏差値が10上がると主張します。
5章 テレビやゲームの影響
6章 どれだけの生徒がスマホ等を長時間使用しているのか
スマホの使用時間と家庭学習その他の関係について述べます。
7章 勉強中のスマホ使用の実体
スマホをすると学力が下がる原因は「ながら勉強」によって勉強が身に付かないためだった。
壮大な研究の結論が「ながら勉強はダメだよ」というところに落ち着くのはなかなか衝撃的です。
そんなこと言われんでも知っとるわ!
と言いたくなりますが、真実は小説よりも奇なりという言葉もあるように答えは案外シンプルなのかもしれません。
本当にスマホをやめれば学力が上がるのか?
では、実際に本書に用いられているデータを見てみましょう。
経緯として、第一章の時点でスマホと学力の相関関係を確実だと考えた川島教授は因果関係を明らかにすべく数年がかりの追跡調査を行います。
対象は仙台市の平成27年に小学校5年生から中学校1年生だった1万4367名について3年間の追跡調査を行います。
留意点としては仙台市内の学生に限定される点です。仙台市内の学生の特徴は、都内23区在の学生と同じだとは言い難いですし、また全国の平均的学生とも言えないでしょう。
但し、研究できる範囲としては、日本国内の教育の研究ではかなり大規模だと考えて良いと思います。
では、これらを踏まえていただいて、その結果がこちらです。
あれ?
最大でも偏差値1しか変わってないよ。
ちなみにこのあとに以下のような文章が来ます。
面白いことに、平成27年度にスマホ等を使っていなかった生徒の中で、その後も全く使わなかった生徒だけに注目し、平成27年度時点(追跡調査開始時)での平均偏差値を計算したところ52.4でした。しかし、平成28年度以降、どこかのタイミングでスマホ等を使い出してしまった生徒だけを抽出し、平成27年度時点での平均偏差値を調べると50.4。平均よりも上ですが、スマホ等を3年間使わなかった生徒よりも若干低いこともわかりました。
(引用 No.497より)
この部分だけ比較して偏差値への影響は「2」です。
あれ? 帯に「スマホをやめるだけで10上がります」って断定してるじゃん。
実は、帯の「10上がります」はこの部分ではなくLINEの使用時間に関しての記述でこのような文章で出てきます。
平成29年度の最新のデータで、4教科の平均偏差値を計算してみたところ、LINE等を全く使わない群が50.8だったのに対し、1時間未満の群は50.2でまだ平均より少し上、1~2時間の群は47.7、2~3時間の群は45.1、3~4時間の群は43.0、そして4時間以上の群は40.6となっていました。なんと偏差値で10以上も差がついてしまっています。
(引用 No.697より)
つまり正確にはスマホではなくLINEを4時間もすると偏差値10も差がつくよってことなんです。(4時間もすればLINEじゃなくても成績下がりそうですが、そのことも本書内で触れられています。)
本書ではこの引用文のあとにLINEの使用・中止での成績の変化をデータで示しています。
つまり帯で謳っている「やめる」「やめない」の根拠の部分です。
それでは見てみましょう。
やっぱり「1」しか上がってない!!!!
結論
- スマホをやめれば偏差値は1上がる
- LINEをやめれば偏差値は1上がる
帯には「スマホやめるだけで偏差値10あがります」(しつこい)って書いてありますが、これは厳密には誤りでょう。
帯は編集の方が書かれるので川島教授の責任ではないのでしょうが、集英社の方、ちゃんとデータを見て帯を書いてあげてくださいね。
この帯を見て購入したわたしとしては騙された気分です。
さて、スマホ不要 VS スマホ活用 ですが、まず不要派のエビデンスがわかりました。
では、対するスマホ活用派の「ドラゴン桜2」はどんなことを言っているのでしょうか。
ドラゴン桜2のスマホ活用法
2巻ではSDS法、PREP法をもとにアウトプットすることで記憶を定着化させます。
そして…
(引用)ドラゴン桜2「2巻」/三田紀房・講談社
ツィッターをやれ!
ユーチューバーになれ!
英語を日常的に使うためのツールとして出てきます。
習慣化、日常化に落とし込むためのシステムとしてツィッター、ユーチューバー。
あなたはどう感じましたか?
スマホを捨てて偏差値が1上がるくらいなら、スマホを使いこなしてインプット・アウトプットに取り組む方が建設的だとわたしは思います。
留意点として綿密な取材をされているとはいえ「ドラゴン桜2」は漫画です。
川島教授のエビデンスと同列で語ることが適切なのかどうかという疑問を忘れてはいけません。
科学的な裏付けについて作中で明かされない限り、厳密には「効果はわからない」としか言えません。(実際の効果があったとしても)
道具には時として功罪の両面を持ちます。
包丁だって道端で振り回せば犯罪ですが、キッチンで使いこなせば人を喜ばすことができます。
まずスマホをどう使いこなしていくか考えることから家族で話し合ってみると良いのではないでしょうか。
それでは、また。