前回に続いて今回も算数の話題。前回、少し触れた「かけ算の式の順序」についてです。
これには色々な意見がありますが、陵坂なりに自分の考えを述べたいと思います。
結論から言えば大事なのは理解できるけど×にするほどじゃないというもの。
そして、それにこだわるくらいなら「もっと違うところに力と時間を使った方が有意義だと思うよ」というスタンスです。
かけ算の式の順序問題とは
掛け算は「2×7=7×2」ように式の順序を入れ替えても答えが同じになります。
問題文から式を作る際に、この順序に正しい順序があるとするか、どの順序でも正解にするかという問題のことを「かけ算の順序問題」と言います。
Wikipediaの式の順序問題のページがとてもわかりやすいのでそちらから引用すると…
日本の学校教育では、小学校2年生の算数でかけ算の導入が行なわれる。小学校2年生の算数教科書では、
1つぶんの数 × いくつ分 = ぜんぶの数
として、かけ算の導入がなされる。
具体例をだすと…
(問)1冊100円のノートを6冊買いました。合計何円ですか。
この問題に対して以下のような解き方をしたとしましょう。
(答1) 100×6=600 答え600円
(答2) 6×100=600 答え600円
どちらも答えは同じ600円ですが、(答2)の方は、教科書の「1つぶんの数 × いくつ分 = ぜんぶの数」という考えからすると間違った式です。
この場合に(答1)だけを正解にするのか、(答1)と(答2)の両方を正解にするのか、というのを問題にしているんですね。
間違い派の意見「式の意味理解」
私の知る間違い派の意見ですが「文章を読み取って式化していない」というものです。
前述のようにかけ算の導入の際には約束事として(1つぶんの数×いくつ分)という考えを学習します。
主張する主旨は理解できますよね。
答えだけでなく、式の意味を理解することは確かに大切です。
特に中学・高校で学ぶ公式(V=RI、Q=VIt、E = mc2)などはそれぞれの記号の意味を理解する必要があります。これってかけ算の「約束事」と同じで「式の意味」を理解することに通じます。
テストのためだけなら公式だけを覚えて、使い方を機械的に身に付けるだけでも十分かもしれません。
しかし、難しい問題や課題研究をするのであれば基本的な式の意味を理解することが大切です。なぜならその先に進むことができないからです。
そういったスタンスから「式の意味を理解すること」は大切で、その導入となるかけ算で大事にしたいという気持ちは理解できます。
×にすべきかどうかは別のお話し
ただ「式の意味を理解すること」は重要ですが、テストの回答で×にすべきかどうかは別のお話しです。
問題文に数字が出てきた順番通りに式を作って解答した場合、本当に問題文や式の意味を理解しているのか教員側が測ることができないから×にするわけです。
「AI VS 教科書の読めない子どもたち」にも紹介がありますが、問題文の中の数値をなんとなく使って計算していると見とれる子どもがとても多いと言われています。
そんな状況の中、一定の基準を用いて子ども達の理解を測りたい意図なんでしょう。
でも×にしなくて良い、というのが陵坂の考え。
なぜなら…
式の意味理解を測るのに不適切
本当に式の意味理解を出来ているかどうか測るのであれば、ペーパーテストの文章問題を用いない方が正確だからです。
例えば、かけ算の文章問題の5問中2問しか「順序」について正解できなかった児童を想定しましょう。(問題のレベルは全て同じとする)
この児童は「かけ算の順序」や「式の意味」を理解していると言えるでしょうか? 半分以上間違えているから理解は乏しい可能性は高いと考えられます。
いいでしょう、順序を間違えた3問を×にしましょう。
では、正解した2問は〇にしますか?
この児童は式の意味を理解していないんですよ?
運良く「順序」と「答え」があっていたら〇にするんですか?
運悪く「順序」を間違えたら「答え」があっていても×にするんですか?
これが正確な児童の理解を測る方法とは、とても思えないんですよね。
かけ算の順序は問題文から数字を適切に導き出していれば2分の1の確率で正解し、間違います。だって2×3、3×2の2パターンだけでしょ。
つまりテキトーに数字を選んでも50%は正解するわけです。
もちろんテストとして全体の理解を測る上で「答え」があっているものを〇にするのは当然です。ただ×にする派の人はここから「順序」の理解を測ろうとしているんでしょ? だったら「答え」の正解の正誤に関わらず「順序」が間違っていたら×だし、正しかったら〇にした方が良いじゃないと思うわけです。
でも、そんなの現実的じゃない。先生方できないでしょ?
これが×にするほどじゃない理由です。
どうやって確認するのか
もし式の意味理解を確かめるのであれば日ごろの授業で確認する方が効率的だと思います。
授業中にノートを見て回る、児童の発言から評価する。
どちらも先生方が普段の授業でしていることです。
もし紙に書いて集約するのなら授業後半のワークシートで児童に文章問題を作らせのはどうでしょうか。もちろん何も制約をしないと「100円のリンゴを5個買いました」的文章題を作るだけ。
ちゃんとルールを作ります。
まず(1つぶんの数 × いくつ分 = ぜんぶの数)という大前提を意識させます。
次に、これから友だち同士で問題を出し合う「ゲーム」をすると提案。「友達に解かれないように工夫して問題を作ってね」と指示します。
「3×7」「8×2」など数字を指定した方が書きやすいでしょうし、モデルとなる文章をパーツにして例示するのも良いかもしれません。
大事なのは(1つぶんの数 × いくつ分 = ぜんぶの数)を意識させて、自分自身で使ってみることです。その為には問題文を作る作業が一番だと思うんですよね。
小学校2年生でも出来るんじゃないかな。
ほな、さいなら。
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