どうも陵坂です。定期購読している産経新聞(2018年1月25日)の「時評 論壇」を読みました。見出しは「「コミュ力」重視入試と階層分化」というもの。書かれたのは文化部の磨井慎吾さんと言う方。「教育」においては大学のAO入試について取り上げています。ではどんな内容なのか。
簡単に要約
というか文意が変わらないように最低限引用しますね。
(略)入試の多様化により、受験生の人物を多面的・総合的に評価する方向に舵を切るとしているのだが、それは明治以来のペーパーテスト一発勝負という入試制度が担ってきた「フェアネス」を毀損してしまうのではないか(中略)アドミッション・オフィス(AO)入試や推薦入試が拡大していくことで大学入試においても就職活動的なコミュニケーション能力」がますます重視されることになる。(中略)「コミュ力」をみる入試が拡大していけば、おそらく裕福で教育水準の高い親のいる”文化資本”に恵まれた家庭で育った子女が現状よりますます有利になるのだろう。それは社会的階層の上下文化と固定化を促進するのではないか。
ちょっと長くなってしまいましたが、如何でしょうか。この後はトランプ政権を支持する階層のことを紹介しています。
中間層である白人労働者階級がトランプを支持した。白人労働者階級を日本人中高年男性正社員と置き換えて考えると、日本の今後を示唆するところは…。というような文章です。トランプ大統領の誕生しかり、自民党の大勝しかり、マスコミが望まない結果が出た時にあれこれ文句言うのを散見しますが、それは選挙で投票した有権者を冒涜し、民主主義を否定することだと思うのですが如何でしょうか。と、このブログではこれ以上政治的なお話しは致しません。
AO入試はコミュ力入試なのか
そもそもAO入試はコミュ力を見る入試なのでしょうか。確かにAO入試をする大学は増加傾向にあります。
また残念ながらAO入試を大学側は定員の穴埋めの1つ、生徒は楽に大学へ行ける切符のように捉えているケースは否定できない部分もあります。しかし、以前の記事でも書きましたがAO入試・推薦入試については変化が起きつつあります。
以前の記事では東大、京大、お茶の水女子など紹介しました。他にも慶応義塾大学のAO入試も骨太の内容です。
AO入試:総合政策学部・環境情報学部:慶應義塾大学 学部入学案内(入学センター)
またWikipediaで紹介されている参考文献でもあるようにAO入試合格者の方が優秀だという説もあります。
バカな大学がコミュ力的AO入試をしている
実は身も蓋もなく書いてしまうと以下の4点になってしまいます。
・AO入試をコミュ力的入試に活用している大学もあれば、そうでない大学もある。
・そうでない大学のAO入試は本番入試以上に骨太な能力を求められているケースもある。
・AO入試をコミュ力的入試に活用する大学は学生集めに必死だ。
・そうでない大学は偏差値・人気ともに高いケースが多く、優秀な学生集めに必死だ。
凄く身も蓋もないので関係各所に忖度が必要な新聞紙面では書けないことなのかもしれません。もはやAO入試と一括りにして語ることが出来る状態ではないんです。
逆に言えば、AO入試をコミュ力的入試にしている大学は、バカな大学と言えるかもしれません。
でも当たり前の話ですが学生の質を保ちたければ、大学側が教育・環境・実績をしっかりと作り、それを学生にアピールすると同時に水準に満たない生徒を合格させなきゃいいだけです。国際教養大学なんて2004年に出来たので新しい大学の部類に入ると思うけど凄くその辺上手くやっていますよね。
そういう努力をしないで経営の観点から合格しやすくしておいて入って来た学生にバカだなんて学生に失礼過ぎでしょ。いやなら合格させなきゃいいじゃん。大学は学生を選抜する側でしょ。何を言っているんだか。
コミュ力は文化資本がある方が高いのか?
もう1点気になるにのは、コミュ力は文化資本に影響するものなのでしょうか。以前から再三紹介している「学力の経済学」(中室牧子)において、子どもの「学力」の因果関係で重要なものは「遺伝」と「家庭環境」と言われています。
一方で、このコミュ力は教育用語に置き換えれば「非認知能力」と呼ばれるものが近しいといえるかもしれません。非認知能力について詳しくはこちらをどうぞ。
この「非認知能力」を伸ばす方法としては幼児期の「しつけ」と学生時代の部活動、課外活動、生徒会や社会貢献活動だと言われています。(「学力の経済学」より)
つまりペーパーテストの方が文化資本の影響が高く、コミュ力はむしろ文化資本から少し離れたフィールドの話だと考える方が自然だと思います。産経新聞の主張は全く逆の可能性もあるわけです。
もし産経新聞さんは「社会的階層の固定化を懸念する」という主張を一貫するのであればぜひ、幼児教育無償化の後押しをしてください。非認知能力には幼児期の教育も有効であることがエビデンスでありますからね。(「ペリー就学前プロジェクト」のこと)
ほな、さいなら。