文部科学省のウェブサイトで見ることのできる小学校英語新教材の「We Can!」ですが、もう御覧になられたでしょうか。教員、業者、保護者とこれを見て色々と思うことは千差万別だと思います。またその職種やお立場だけでなく、英語が得意な人、苦手な人によっても受け取り方は変わると思います。
文科省のwebページには以前も紹介したように不特定多数が閲覧できるように許可なく転載しちゃダメだとはっきり書かれています。
なので画像を貼ることはご遠慮させていただきます。見たい方はこちらからどうぞ。
新学習指導要領に対応した小学校外国語教育新教材について:文部科学省
こちらのページでは3・4年生で使用される「Let’s Try!」の1・2と5・6年生で使う「We Can!」の1・2が公開されていてSAMPLEとスタンプが押されていますが見ることが出来ます。
小学校英語の全体図
まず教材に入る前に整理してみましょう。
2018年度からは移行措置が始まります。
◆小学校高学年
・新たに年間15単位時間を加え、50単位時間を確保し、外国語活動の内容に加えて、外国語科の内容を扱う。外国語科の内容については、中学校との接続の観点から必要最低限の内容と、それを活用して行う言語活動を中心に取り扱う。
◆小学校中学年
・新たに年間15単位時間を確保し、外国語活動を実施する。高学年との接続の観点から必要最低限の内容と、それを活用して行う言語活動を中心に取り扱う。
※年間総授業時数及び総合的な学習の時間の授業時数から15単位時間を超えない範囲内の授業時数を減じることができる。
2020年度からは3・4年生 年間35単位(週1コマ)、5・6年生 年間70単位 (週2コマ)で指導していきます。
「Let’s Try!」「We Can!」はそれぞれ35単位、70単位として製作されています。そのため教材の量、1ユニットあたりに使われる時間数も違います。「Let’s Try!」「We Can!」共にユニット9で構成されていますが、ページ数は倍くらい違うことも合わせて考慮してください。と言ってもこれはPDFで見るとアレ?って感じですが現物の教材が目の前にあれば注意する必要はないかもしれませんね。
移行措置期間中は、その中の一部のユニットをやれば良いことになっています。例えば「Let’s Try! 1」ならユニット1・4・6・8・9というような形です。こちらも文科省の資料の中で主な内容として提示されています。
文科省がアピールする「We Can!」のポイント
文科省自体が「We Can!」を作るときに意識したポイントはどこなんでしょうか。
○各ユニットでは「聞くこと」「話すこと」からスタートし、音声に十分慣れ親しんだ後に、「読むこと」「書くこと」の言語活動に取り組むという構成
○「聞くこと」「話すこと」を中心とした中学年における外国語活動の学習内容を繰り返し活用しつつ、広がりのある話題を設定(例)行ってみたい国や地域( “We Can! 1” Unit 6)、オリンピック・パラリンピック( “We Can! 2” Unit 6 )
○「読むこと」「書くこと」に対応したコーナー(‘Let’s Read and watch’ ‘Story Time’ )を設置
○中学校への接続を重視し、より豊かなコミュニケーションとなるよう、代名詞(三人称)、動名詞、過去形などを含む基本的な表現に繰り返し触れるよう工夫
色々書いてありますが「読み・書き」「オリンピック・パラリンピック教育」「小中の接続」という3本柱と読み解くのが素直な感じがします。その中でやはり気になるのは「読み・書き」の部分ですよね。
3~6年で徐々に「書く」を身に付ける構成
まず「Let’s Try! 1」の目次を見てましょう。学生や保護者の方はぜひこのポイントを覚えて欲しいのですが、教科書、参考書、問題集は表紙を開いてすぐのところや目次を見てください。それらの場所には書籍の使い方や考え方が書かれています。本によっては「本書の使い方」とタイトルまでつけてくれています。
電化製品に例えれば「説明書」と同じような意味をもつページです。書店さんで問題集などを買う時にも立ち読みしてぜひ確認するようにしてください。
さて、話がそれてしまいましたが「Let’s Try!」「We Can!」の目次には「この本で行うおもな活動」がまとめられています。
「Let’s Try! 1」(小3)では「聞いてみよう」「リズムに合わせて言ってみよう」「えいぞうを見て、考えてみよう」「英語で歌おう」「ゲームをしよう」「考えや気もちをつたえ合おう」と6つが掲載されています。
「Let’s Try! 2」(小4)も同様の6つが掲載されています。
「We Can! 1」(小5)になるとになるとこの6つに加えて1つ増えて7つになります。増えた活動は「最初の音を意識して言ってみよう」です。
「We Can! 2」(小6)になるとさらに1つ増えて合計8つになります。それが「文章を読んで、書いてみよう」という活動です。
小6から「読み書き」が「主な活動」になるわけで、まあ、指導要領通りなんですが、じゃあ、紙面はどうなっているかというと「Let’s Try! 1」から教科書内に書くスペースがかなり設けられています。
「Let’s Try! 1」で書くのは、ユニット1・2は「名前」。ユニット3で「あなた(友だち)の好きな漢字を書こう」というもの。その後も教材に書くスペースはありますが、〇や番号を書く場面が意図的に多く設けられていると思います。ユニット6でアルファベットを書いて仲間分けをしていきます。こういう感じで自然と書くという作業(この場合は紙面に)が徐々に増えていくようになっています。
「We Can! 2」まで進むとユニット1では「先生の名前をローマ字で書こう」と冒頭にあり、最後のユニット9では中学校との接続を意識した「映像を見て、中学校にどんな行事があるか、わかったことを書こう」というような形まで進んでいきます。
書くのは単語だけというケースもありますが、かなり書かせることがご理解いただけるのではないでしょうか。
ローマ字を習う時期
アルファベットと関連するのは国語で習うローマ字です。ローマ字の指導がどの時期にあるのかというとだいたい小学校3年生の9~10月です。
(東京書籍は3年生の9月、光村図書・三省堂は3年生の10月。それぞれ下記指導計画を参考。他の教科書会社は割愛します)
「新編 新しい国語」年間指導計画作成資料|平成27年度用 小学校|東京書籍
年間指導計画・評価計画資料 | 小学校 国語 | 光村図書出版
「Let’s Try! 1」のユニット1は名前なので当然アルファベットで書くことになると思うのですが少し繋がりに違和感を覚えます。好意的に解釈するのであれば……多くの学校が前倒しで小3からの英語を実施していますが、小1・2年生から実施している地域・学校もあります。そういった現状を踏まえてのことなのかもしれませんね。
またプロスポーツ選手のユニフォームに代表されるように日常生活において名前のローマ字表記はよく見かけます。もしかすると小3の時点で自分の名前程度は書ける素地が養われているのかもしれません。
もう一つ考えられるのは、小3では基本的にコミュニケーション活動なので書き込むのは日本語でも英語でも授業として支障が出るものではありません。だから学校の状況にお任せしますよ、ということなのかもしれません。
今回は小学校英語の新教材「Let’s Try!」「We Can!」の「書く」に焦点を当てて書いてみました。また違う切り口でこの新教材については書いてみたいと思います。
こちらも参考にどうぞ。
まずはローマ字から習得しましょうか。