2020年から小学校英語が小学3年生から始まるまであと少し。正確には3・4年生は外国語活動、5・6年生は英語を正式に教科化します。
といってもほとんどの学校で3・4年生の外国語活動は既に前倒しで行われていますし、地区・学校によっては1・2年生の外国語活動は取り組まれています。では、現状何が問題で、2020年に向けて何が課題なのか整理をしてみましょう。
時間がない、時間が増える
これはどちらも学校側の事情ですが、一部の保護者の方にも影響がある話です。どうしてか。それは土日休みの週5日の授業時数では現状学校現場はパンパンのいっぱいです。
つまり、これ以上時間割りに入れる時間(場所)がないという課題。
一方で2020年からは3・4年生は35コマ=週1時間、5・6年生は70コマ=週2時間。実は現状の3倍の量です。めっちゃ時間が増えるわけです。詳しくはこちらをご参照ください。
既に3・4年生で取り組んでいる学校も、さすがに週1時間まで取り組めていない学校の方が多いはず。
こういう時に都合よく時間調整に使われてきたのが「道徳」と「総合的な学習の時間」の2つでした。(本当は削っちゃダメだけど、してた学校が多かった)どうしてこの2つが選ばれてきたかという「教科」ではないからです。
しかし、来年2018年から「道徳」は教科化されます。じゃあ「総合的な学習の時間」を削れば良いのか。これも今は出来ませんし、実際にする学校は少ないと思います。
だって「総合的な学習の時間」を削ってカリキュラムを作り直しても2020年にまたカリキュラムを作り直す必要があります。カリキュラムの作成って聞いただけでも大変そうな作業を2年ごとにするのは嫌だし、効率もよろしくない。
そこで出てくる方法がまずモジュール形式という短時間分割授業という取り入れ方です。例えば45分の授業を15分×3回に分割し、朝や昼食後の時間に入れる形式のことです。
詳しくはこちらを参照ください。
もう一つの方法が土曜授業の復活です。例えば月に2回土曜授業をするとか、そういう形を取る学校も出てくると思います。
土日仕事が多い職種の保護者の方は学校に行ってくれている方が安心で良いかもしれませんが、そうでない保護者の方にとっては少し残念ですよね。
教員のほとんどが英語の素人
当然ですが今、教員の方が教員免許を取る課程で英語の試験はありませんでした。だから教員の方の多くは英語を話すことが出来ません。
といっても中学校・高校の英語の教員免許を持っている方が小学校の教員になっているケースや学生時代に熱心に英語を勉強されていて現在小学校の先生をしているというケース、英語もできちゃう凄く優秀な先生というケースあります。
ですから全員が話せないわけではありません。また外国語活動が始まった時点から熱心に勉強されて、しっかり授業できる先生もいます。
ただそういった方は少数派なわけで、仮に校内に英語が堪能な先生が1人いたとしても自分の子どもがその先生の授業が受けることが出来るかどうかはわかりません。
「英語を話せない人が英語を教えなきゃいけない」
文科省のやつら、無茶なこと考えやがって、と思うのは保護者よりも現場の先生方が思っていることでしょう。
この新聞記事によると2019年度から単位取得が必要になります。こういう教職課程で単位取得した先生が実際に授業をするのはもう少し先の話ですし、その先生が良い経験を積んで一人前になるまではまだまだ時間がかかります。
こういう状況なわけで、保護者の方は漠然とした心配があるでしょうし、教員の方も英語の授業が出来るかどうか不安のはずです。そんな時に頼りになるのがALTの先生です。
ALTのほとんどが授業の素人
ALTとは「Assistant Language Teacher」の略。日本語で言えば「外国語指導助手」という意味になります。
ALTは英語を母国語ないし日常語として使う扱う人がなることができます。詳しくはこちらの募集要項をどうぞ。以下、部分引用です。
(4) 外国語指導助手又は国際交流員に応募する者は、大学の学士号取得者又は指定の来日日までに学士号取得見込みの者であること。(外国語指導助手に応募する者は、3年以上の初等学校若しくは中等学校の教員養成課程を修了した者又は指定の来日日までに同課程を修了見込みの者であることでも可。)応募要件 | JETプログラム
ALTの先生について良く言われるのは当たり外れがあるということ。読んでいただくとわかるように教育のプロじゃなきゃいけないという仕事ではないんです。
だって「指導助手」だよ。教員じゃなくて、助手。あくまでアシスタントなんです。当然経験を積んだALTの先生の中には教員免許を持つ日本人教員顔負けの授業力を持つ方もいますが、これにはやっぱり差があります。
残念ながら英語でゲームをするだけのALTさんもいるそうです。英語の授業でゲームをするのは活動が活発的になるメリットがあるから使い方によってはとっても効果的なので否定はしません。
しかし、勝敗に集中してゲーム中心になっちゃったり、そればっかりだとダメだよね、という陥りやすいポイントもあります。
ここで日本人教員がイニシアチブを取れれば大丈夫なんだけど、最悪のケースは教員に英語の自信がなくてそのままALTに授業をお任せしちゃうケースだとか。
アシスタントにメイン任しちゃダメだろ。
これだけ書くと小学校英語においては日本人教員もALTも非常に当たり外れがあるような感じに受け止めてしまいますよね。
ネイティブは目指せない
身も蓋もないことを言えば、そもそも小学校の英語の授業だけでは英語を話すことはできないわけで。何かの本で読んだんですが、ネイティブスピーカーのように話せるようになるには幼児期から5000~6000時間必要だと言われています。(諸説あるようです)
つまり時間も足りなければ、小学校ですら始めるのが遅いわけです。
だから、学校教育でネイティブスピーカーを目指すべきではありません。今の世界の流れは、英語でしっかり意思を伝えることが重要で、細かい発音やアクセントには寛容だと言われています。
確かにこれだけグローバル化した時代を生き抜くこれからの子ども達が英語で話す相手は、ネイティブばかりではないですよね。
むしろネイティブではない方々と英語で話すことになる比率の方が高いはずです。
繰り返しになりますが、私は小学校英語に「ネイティブを目指す英語教育」を期待すべきではないと考えますし、それを望むのはお門違いだと思っています。
ネイティブを目指すなら0歳時からお家でお金かけてやってください。巷には良い教材がありますし、英語教室もいっぱいあります。
「でもさ、ネイティブまで目指さないのはわかったけど英語を話せない先生に教えてもらいたくないんだよね」 そういう保護者の方の声が聞こえてきそうです。
英語は技能教科
そもそも英語は技能教科です。国・算・社・理と並んで受験に出てくるため誤解されがちですが、英語は教科書を丸暗記するタイプの教科ではなく、どちらかと言えば体育や音楽、技術家庭に近い教科です。だって教科書の長文丸暗記しても英語圏で会話できないでしょ。
体育の水泳を考えましょう。貴方はクロールって泳げますか。たぶん多くの方がイエスと答えるんじゃないかな。でも泳げる距離って25Mとか50Mの人が多いだろうし、タイムとか気にしませんよね。(部活でやってた人は別だと思いますが)
そして、たぶんオリンピック並みのクロールが泳げるようになることを小・中・高の体育の授業に望まないと思うんです。
英語もそれに近い認識を持ちましょう。
英語の素人、授業の素人であることを活かす
なので小学校段階おいては、日本人としてどう英語を使っていくのかという点を大事にして英語を身に付けていくことの方が大事だと考えます。小学校の先生は無理にネイティブぶらなくて良いし、発音も完璧じゃなくて良い。保護者もそれを期待しない。
むしろ英語ペラペラじゃないなりにALTと堂々とコミュニケーションしてる姿を見本として提供する方がよっぽど児童への教育的影響は良いと思います。
そもそも日本語ですら自分の意見が言えない人、NOと言えない日本人が多いわけだし。そこで先生が臆せずコミュニケーションして模範を見せる。
ALTを目指すより頑張って喋ってる先生の姿を目指す方が現実的でしょ。
そして、英語力以外に関しては、教員は授業のプロなんだから、こまかい英語の発音とか気にせず、授業の展開に集中して欲しい。
一方でALTの先生は児童にとって貴重かつ身近な「外国の方」。本場の発音を提供すると同時に「英語でコミュニケーションできた」「伝わって嬉しい」「一緒に遊べて楽しかった」という経験を児童たちに提供してあげて欲しい。
「でも教員は「英語の授業」の素人じゃねえか」という意見もあるかと思います。小学校の先生はほとんどの場合、担任が全ての授業を教えます。
これは中学にも高校にもないことです。つまり誰よりもクラスのことをわかっている教員は小学校の担任の先生なんです。学級経営なんて言葉もありますが、担任に先生にはこれをマネージメントする力がある。
この力と他教科で培った「授業を構成する力」があれば英語の授業もなんとかなると思うのは、期待しすぎでしょうか。
文科省もこちらの資料でALTの先生への役割として「生きた英語の提供。児童のコミュニケーション意欲や学習意欲の向上」を紹介していますからね。
と言っても英語が話せる教員の方が良いとは思いますが、まあ、こればっかりはね。またALTが全授業に入ってくれるとは限らないわけで。日本人教員一人で英語の授業どうするんだろうね。この場面で、ALTの先生に向けた手紙とか書くのかな?
文科省を悪く言っても、教員を悪く言っても目の前の自分の子どもの置かれた状況は変わりません。
それなら出来るだけ良い方向に進むのを期待しつつ、親として学校にどこまで求めて、どこから先を習い事などでフォローするのか考える方が賢明だと思います。
文部科学省批判して小学校の先生可哀想という記事にしたくなかったので、こんな感じで。良かったらこちらもどうぞ
文部科学省の小学校英語新教材についても記事にしました。