りょうさかさんと

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【大学入試】英語の民間試験導入で資格検定会社は大儲け?


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どうも陵坂です。2020年の大学受験の英語から民間試験を導入することになります。来年(2018年)に高校入学をする現中3年生から4技能の試験が前提となった大学受験が始まるわけです。英語が苦手な陵坂としては高校生じゃなくて良かったとホッとします。

センター試験後継テストの英語、完全民間移行は24年度:朝日新聞デジタル

大学入試センター試験に代わり、2020年度から始まる「大学入学共通テスト」の実施方針が10日、まとまった。(中略) 英語はコミュニケーション能力を重視し、「読む・聞く」の2技能だけを測っていた試験を廃止し、4技能を測るため英検やTOEICなどの民間試験を使うことになる。

まず今の試験制度がどうなのか。試験の特徴はどういうものでどういう課題があるのか。そういったものに触れながらどうして資格検定会社が儲かるのか考察してみます。結論だけを知りたい方は目次から飛ばしてください。

現在のセンター入試はほとんど1技能(Reading)

文科省の方針としてはもっと英語が話せる人材が欲しいし、英語が苦手な層の人たちにもっと頑張ってもらいたいわけです。その為に4技能である「読む」「聞く」「書く」「話す」の育成がしたい。

でも結局、大学入試の英語っておおよそ9割「読む」1割「聞く」って感じですよね。

大学入試に外部試験を 導入する現実的方法 - 文部科学省

読解・和訳・文法・語彙だけで8割以上。リスニングは2%以下。…

2013年度大学入学試験の設問数に基づく調査提供:ベネッセ

文科省の資料でもこのようにリスニングすら2%以下という扱いです。この後段にセンター試験に至っては1技能だと指摘があります。 

今どれくらい民間の英語資格・検定試験が使われているのか?

結構有名私立大学さんたちは使っているイメージがあるんですが、実際の数字はどうなのか平成28年3月に発表された下記の資料に掲載されていました。

民間の英語資格・検定試験の大学入学者選抜における活用

〇回答のあった国公私立大学の43.0%が民間の英語資格・検定試験を活用している。

〇導入の内訳については、推薦が29.2%、AO入試が24.2%となっている一方、一般入試では6.3%程度の導入にとどまっている

一般で6.3%ってかなり少ないわけです。まだまだこれからという状況です。

高校の授業をどう変えるのか

高校生からすると勉強するのは英語だけじゃないし、遊びも部活も青春もあるわけですよ。

いくら英語の先生が熱心でも全生徒に「話す」「書く」を徹底指導できるわけじゃないし、生徒だって「入試に必要なことやらせてくれよ」ってなりますよね。

その為の入試改革なんですね。入試を変えることが出来れば必要な技能が変わる。そうすることで「高校の授業」が変わる、というわけです。

でも大学の入試は聖域

つまり入試が変われば全てが変わる。でも文科省が変更できる範囲は限定的です。

大学入試に外部試験を 導入する現実的方法 - 文部科学省

入学者を選抜する権利は、大学の自治権として聖域化している。したがって、国が強制的にテストを変更するには、法律を定める等の困難なプロセスが伴う。現状では文科省にできることは指導と予算措置にとどまる。

そうなるとセンター試験が一番手をつけやすい、となりますよね。 

どう民間の試験を導入するのか

文科省による「大学入学共通テスト実施方針(案)」によると以下のように書かれています。

資格・検定試験のうち、試験内容・実施体制等が入学者選抜に活用する上で必要な水準及び要件を満たしているものをセンターが認定し(以下、認定を受けた資格・検定試験を「認定試験」という。)、その試験結果及びCEFRの段階別成績表示を要請のあった大学に提供する。

どの民間試験になるのかは、具体的にはまだ確定していません。(2017年12月現在)

英検、GTEC、TOEIC、TOEFL、TEAPあたりが高校の学校現場でも生徒に受けさせていることが多いと思います。進学校によってはこの中から2種類くらい受けさせていますよね。

既に多くの私学ではこの外部試験を入試に活用しています。例えば立教大学。WEBページ上でスコア換算について説明されています。

CEFRって何?

CEFR(セファール)とは「ヨーロッパ言語共通参照枠」(Common European Framework of Reference for Languages)のことです。

(参考)ヨーロッパ言語共通参照枠 - Wikipedia

ヨーロッパって日本とは違って陸続きで国が隣接していて、当然国を越えて就職して仕事することも多いわけです。でも言語が違う。その時に言語についてどの程度使うことが出来るかの指標として作られたんです。今ではそれが言語力を測る国際標準になっています。

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(引用)各試験団体のデータによるCEFRとの対照表 大学入学者選抜改革について(文部科学省 平成29年7月13日)

A1なら「学習を始めたばかりの者・初学者」みたいな感じでA1⇒A2⇒B1と上がっていき、C2「母語話者と遜色のない熟練者」となります。NHKの英語講座もこのCEFR指標を基に体系的に作られているそうです。

eigoryoku.nhk-book.co.jp

民間試験が導入されることで何が変わるのか。

これから高校生になる方がどうかわるのか。まず入試の活用されるスケジュールを見てみましょう。

センターは、受検者の負担、高等学校教育への影響等を考慮し、高校3年の4月~12月の間の2回までの試験結果を各大学に送付することとする。「大学入学共通テスト実施方針(案)」

つまり高校3年生で2回受けることが出来るわけです。受験のためなら皆2回ともキッチリ受けるでしょ。民間の検定を受けない受験生も沢山いると思うんですが、この為だけに2回は確実に受験生の大半が受けるわけです。おー、儲かりそう。

いや、ちょっと待てよ!

生徒さん、保護者、高校の先生の立場になってみましょう。高校3年生でいきなりぶっつけ本場で外部試験受けさせますか?(2回受けられるとはいえ) 

たぶん遅くとも高校2年生で1回か2回受けますよね。大学入試やセンター試験の模試ならもっと受けているはず。進学校ならまず高校1年生でしょっぱな受けて、今の自分の実力を把握させるんじゃないかな。

つまりめっちゃ受けるわけ。

具体的な市場規模も計算してみたので、知りたい方はこちらをどうぞ。 

www.ryosaka.com

というわけで、この民間試験に選ばれた業者の英語資格・検定試験は一気に受験者数が伸びると思います。じゃあ、選ばれやすいのはどこなのか。

入試を行う立場から考えるとTOEICのように同一のテストを全員が受けて、点数で差をつける方が楽ですよね。いわゆるスコアタイプの試験が使いやすいわけです。

生徒も成長を自覚しやすいし、生徒間の比較もしやすい。そうなると不利になるのが「級」毎に試験内容を変えていた「日本英語検定協会(英検)」さんです。

実はこれに関連して英検さんも対応しています。

弊協会としましては、こうした我が国の動向を受け、大学入試や高校入試に向けて4技能スコアが獲得できる実施形式を導入すべく検討しております。今後の対応についての英検協会の見解 | 協会について | 公益財団法人 日本英語検定協会

というわけで、今後もこの英語資格・検定試験業界と文科省の同行を見守りたいものです。

<追記>民間試験の認定が公開されたので記事にしました。

www.ryosaka.com

ちなみに英語の資格検定試験の最近の流れはCBTです。

そちらについてはこちらをどうぞ。 

www.ryosaka.com

ほな、さいなら。

2018年度版 英検2級 過去6回全問題集 (旺文社英検書)

2018年度版 英検2級 過去6回全問題集 (旺文社英検書)